Attack On Titan


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ゴロツキ純愛ラプソディ


1


「お前どうかしたのか?」


何時ものように訓練も終わって部屋に戻り、食堂でくすねてきた誰かの酒瓶を開けながら、先に部屋に戻りイスに座っていたリヴァイに尋ねた。


「何のことだ?」


その問いかけにリヴァイは立体起動を整備していた手を止め、俺を見てきた。


「んー…、上手く言えねぇけど、何かあったのかなぁ、と。」
「あ?」


リヴァイが俺たちに立体起動の扱いを教えた時、言った事。
コイツの整備は必ず自分の手で定期的に行うこと。
理由はいろいろあるだろうが、1番はもしもの時「あの時整備していれば」と後悔しないためなんだろう。


「言ってる意味がわかんねぇな。」


俺たちはなんだかんだで調査兵って立場になっちまったが、コイツは「ここの連中」を腹の底からは信用していない。
リヴァイ本人が言ったわけじゃないが、整備専門の兵士がいるにも関わらず、今だ自分で手入れをしているのを見てもそうなんだろうと思う。
そんなこと思いながら、ゴクリ、と、酒瓶を傾け喉を潤した。


「いやだからー、俺もよくわかんねぇし上手く言えねぇんだけど、…なぁんか最近のお前、考え事が増えてねぇか?」
「…」
「それもこの間の壁外から帰還してから!」


エルヴィンのクソ野郎のせいで、ロヴォフを脅して王都に住む権利を得るって言う俺の算段は見事に外れ、結局調査兵としてこき使われ始めた俺たち。
自分が認めた奴以外の下につくなんざ御免だが、それを取っ払っても「外」のあの…何ものにも囚われない自由な世界は、行ってみる価値はあるものだと思う。
例え何度生死の境をくぐる羽目になろうとも、な。
ドブ臭ぇ地下で生きるよりもずっと良い。
今じゃ俺も心底そう思っている。


「お前この間珍しく怪我しただろ?何かあったのか?」
「………」


前回の壁外遠征で、リヴァイは珍しく、背中に傷を負った。
本人は大丈夫だと言っていたが、煩く喚くイザベルに根負けし救護班のところに行ったら、思いの外深い傷でそのまま救護班の世話になったくらいの怪我だった。


「なんだ、ほんとに何かあったのかよ?」


元々無表情な奴だが、傷に加えかなりの熱まで出ていたらしいがそんなこと一切見せるそぶりもなく、医師に言わせるとその傷でよく動き回ってたなってレベルらしかった。
それはコイツらしいと思う反面、「俺たち」がいるから例え怪我しても休めねぇんだろうなコイツは、と思うと、呆れ半分、どこか誇らしくすら思えるから不思議だ。


「別に何もない。」
「いやいや何もなくねぇだろー?」
「…」
「なんだよ?何か困ってんなら力になるぜ?」


リヴァイは俺の言葉にそれまで整備していた立体起動に手を置き、無言でそれを見ていた。
基本俺たちのような入団間もない(部類に入る)兵士はだいたいが6人部屋からのスタートになる。
…が、エルヴィンのクソ野郎から熱烈なご招待を受け特別に入団してきた俺たちと同室になりたい輩なんて早々いるはずもなく…。
何かしら理由をつけられ入れ替わりが多かったこの部屋だが、気がつけば俺とリヴァイ、そしてフラゴン分隊長さんとこで一緒のサイラムの3人だけの部屋になった(分隊長さんは個室があるようだ)


「女がいた。」


そのサイラムは、同期の仲良しくんの部屋によく入り浸っていてここには寝に帰ってくるだけで、実質俺とリヴァイの部屋と化していた。


「女?どこに?」
「…」


俺が話を切り出した今も当然、2人きりの時だったわけで。
だからなのか、リヴァイは重い口を、だが確実に開けた。


「何度目が覚めても、女がいた。」
「は?」
「…」
「いや言ってる意味わかんねぇんだけど何の話だ?」
「……」


俺の問いかけに、一瞬の沈黙の後、リヴァイは大きく息を吸い込み話し始めた。


「…つまり?」


リヴァイの話を要約するとこう。
壁外で負傷した際、連れて行かれた救護班のテント。
思った以上の出血と、それが原因での発熱。
ベッドに強制的に寝かされたリヴァイは、やや意識を朦朧とさせながら(本人は至って普通だったと言い張っているが)幾度となくテントの中で目が覚めた。
その時に、何度目が覚めてもすぐに飛び込んできた顔があったそうだ。


「その子に惚れたってことか?」


心配そうに何度も何度も、リヴァイの顔を覗き込んでは、目が合ったリヴァイを見てホッとしたように笑ったそうだ。
リヴァイの熱が完全に下がり、意識もハッキリした頃には、その女はいなくなっていたそうだ。


「惚れた?誰がそんなこと言った?」


お前が今さっきそう言ったんだろう。
少なくともお前の話を聞いて俺はそうとしか取れなかったぞ。
そう言いそうなのをグッと堪えた。


「いや、そうなのかなぁ、と。」
「馬鹿かお前。何聞いてる。」


カチーン、と。
頭に来なかったと言えば嘘になる。


「あぁ、そうだな。悪かった。」
「…」
「見つかるといいな、その女。」
「…そうだな。」


それにこういうことは他人が首突っ込むとロクなことにならない。
だからこの時の俺はリヴァイのこの些細な変化を傍観しようと決め込んでいた。



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bkm

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