Detective Conan


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カタルシス


67


「青子、快斗のことが本当に大好きなんだよ」


それは音にしてしまったら10秒にも満たない短い言葉だった。
でも青子にとっては、10年にも及ぶ想いの詰まった言葉だった。


「…」


快斗は口をだらしなく開けて、幾度となく、瞬きをした。


「…」


それは快斗にとっては意外なことだったんだろうか。
青子とそっくりな名前の心は欲しがったのに、青子の心には、気づこうともしなかった…。


「…あ、あー、俺、」


…今までずっと、そうだった。


「青子、」
「え?」
「…初めて快斗に出逢った日から、ずっと快斗のことが好きだったよ」


今までずっと…名前しか、見てこなかった快斗。


「快斗が誰を好きでも、青子は快斗が大好き」


快斗が名前のことを好きだったとしても。
それでも青子は…。


「…お、れ、さぁ、」


頭を掻きながら、快斗が呟くように言った。


「あの日逢ったのが名前だから名前を意識してた、ってのは、確かにあると思うけど、」
「…」
「でも実際あの日逢ったのはオメーでさ…。じゃあそういうの取っ払って俺は名前を好きなのか、って自問自答してたんだけど、」


青子を見ずに語られる言葉は、青子に届く前にどこか潤んだ空の青に、溶けて消えていってるのかもしれない。


「なんつーか、俺は結局こう…猪突猛進、てーの?あぁいう感じになってただけなんじゃねぇか、って思ってさ」


そう思うくらい「フられるんだ」と言う今のこの状況を不思議な気持ちで聞いていた。


「俺自身、まだはっきりわかってねぇような部分もあんだけど、俺もしかしたら名前じゃなくてオメーのこと好きになってきてるかもしれねぇんじゃねぇか、って思うんだけどどう思う?」
「………え?」


そう言葉にした快斗を驚いて見上げると、少し首を傾げながら青子に尋ねてきていた。


「いやだからー!…青子の方が名前より気が合うっていうか…」
「…」
「一緒にいて楽、って言うか、」


どこか赤い顔して言う快斗。


「いやでもそれがじゃあ好きってことか?って聞かれたら困るけど、でもひょっとしたら名前より青子のことを好きになってきてるんじゃねぇか、って思い初めてきてんだけどどう思う?」


その表情は、今までずっと名前に向けられていた表情で…。


「…し、」
「し?」
「知らないわよ、バ快斗っ!!自分で考えなさいよっ!!!」
「…はぁっ!?なんだよオメー言うに事欠いてバ快斗言うんじゃねぇアホ子!!!」
「なんですってっ!!?」


嬉しいのか、恥ずかしいのかわからない。
ただもしかしたら青子の終わらせようと思っていた想いは、さっきの快斗の言葉のように、空中に溶けていったのかもしれない。
そんな風に思った。

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