■49
それはほんの些細なことだったと今にして思う。
「トリプル1つとダブル1つ!」
「…誰がトリプル食べるの?」
「もちろん俺!」
「快斗本当に好きだよね、チョコアイス」
苦笑いする名前にアイスを差し出した。
「…つめたーい!でも美味しー!」
ぺロッと舐めた後で、嬉しそうに笑う名前。
「だろだろ!?ここのアイスほんとに美味いんだって!」
「うん!…でもダブルはいいかなぁ?」
そう言って困ったように笑った名前。
その言動に一瞬、何かが揺さぶられた気がした。
「オメー、甘いのダメだっけ?」
「うん?んー…、ダメ、ってわけじゃないけど、アイスだけでこの量はなくてもいいかなぁ?って」
でも快斗がおごってくれたから食べるけどね!と笑う名前。
それは本当に些細なことだった。
だが…。
−ちょっと快斗!!なんで自分はトリプルなのに青子はダブルなのよ!?−
−人に奢ってもらうくせに贅沢言うんじゃねーよ!!−
−青子もトリプルがいいーー!!トーリープールーーー!!!−
名前ほど2人きりの思い出はないはずの青子の顔が浮かんだのは、事実だった。
.
bkm