■新出先生の健康講座
最近、
「俺アイスコーヒー、あ、いや…コーヒーフロートで」
工藤くんの味覚が変わってきた気がする…。
「コ、コーヒーフロート頼むの?」
「え?おー。あったらオメーも食うだろ?」
「え!?そりゃあ…あったら食べる、けど…」
私が飲んだら顔をしかめるくらい苦いコーヒーが好きだったのに、まさかのコーヒーフロート!
これだけじゃなく…、今までなら私がチョコ食べてると太るとかなんだ言ってたのに
「お、しみコーン!これ何気に美味ぇよな?」
率先して食べるようになった…。
な、なんかあったのかな?
推理で頭使うから甘いのが食べたくなったとか?
いやでもそれにしても回数が頻繁すぎる…。
甘いのは疲れを取るから?
え!?
そんなに疲れてるの!?
「なんか今日の夕飯えらい豪勢だな…」
「たまにはね!」
疲れを取るにはニンニクや玉ねぎ、それから梅干しや豚肉だって!
だからいろいろやってみよう!って思ったらかなりな品数になった。
けどこれで少しでも疲れが取れれば…!
「まぁ…」
「…」
「少しずつレパートリー増やせばいいんじゃねぇの?」
いろいろ手をつけすぎてどれも中途半端な味(いつもは違う!)になってしまい、私の疲労回復精力アップ料理は、この日だけであっさり終わった。
「味覚の変化、ですか?」
誰に相談していいのかわからない私は、
「そうなんです!何か病気でしょうか!?」
新出先生に相談してみることにした。
「一概には言えませんが…、その可能性もなくはないですよね」
やっぱり…!
工藤くん、事件で忙しいから何か病気なんだ…!
「な、なんの病気ですか?」
「…甘い物の過剰摂取となると疑われるのは糖尿病が有力ですかね?」
「とっ!?」
糖尿病!?
まだ高校生なのにっ!!
「心配ならきちんと受診してもらって」
「新出先生!」
「はい?」
「わ、私は何をすればっ!?」
「…だからその人を1度うちの医院に連れてきてもらって」
「食生活ですか!?日頃の食生活が原因ですか!?」
「…ほんとに糖尿病ならそうですね」
「私のせい!?」
そんなっ!
私がもっと気を使ってご飯作ってたら工藤くんもこんなに若いうちから糖尿病になることもなかったのにっ!!
「名前さん、とにかく1度その人をうちの医院に連れてき」
「ありがとうございました、新出先生!」
「…」
大変!!
工藤くんが糖尿病だなんてっ!!
ま、まずは病気について知ることが大事!!
どこでもwikipedia
糖尿病
かちかち、とケータイを操作して調べる。
…や、やっぱり食事療法が大事なんだ…!!
さらに検索を続ける。
〜糖尿病食事療法〜
・1日3食とる。
・主食はむしろ適量をとる。
・副食(魚・肉・豆腐・卵など)は1食に必ず1皿。
・野菜は毎食とる。
・牛乳・果物は決められた量をとる。
・油を使った料理は1日に2品までにする。
・嗜好品(アルコール・菓子)は毎日とらず、決められた量以下にする。
・こんにゃく、タケノコ、海藻、きのこ、寒天など、カロリーが少なく繊維の多い食品を選ぶ。
え?牛乳もダメ、ってことなの?
…そうか!!
工藤くん昔牛乳がぶ飲みしてたから糖尿病に…!!
あれ?
でもそう言われれば最近牛乳やヨーグルト、それにフルーツもよく食べてる気がする…。
…た、大変!!
工藤くんきっと気づいてないんだ!!
で、でもそうだよね、10代で糖尿病の可能性なんて考えないだろうし、いきなり糖尿病です、なんて言われたらショックが大きすぎる!
だからここはやっぱりひっそりと食事を変えていく必要が…!!
「…あれ?」
「うん?」
「昨日買った牛乳ねぇし」
「あ、アレ全部飲んだ」
「……はっ!?全部飲んだ!?まだ半分以上あっただろ!?」
「だ、だって喉かわいてたんだもん!」
「いや、オメー喉渇いてたなら水飲めば」
「それから!」
「うん?」
「これからは食材全部私が買いますっ!!工藤くんは私に内緒で余計な買い物しないでください!!」
「え?…余計、って俺は別に」
「しないでくださいっ!!」
「…なんかよくわかんねぇけど、そうしたいならお好きにどうぞ」
そうだよ!
私のせいで糖尿病になっちゃったんなら、私がきちんと看病しなきゃ…!!
「な、んか…」
「な、なに!?」
「いや…(最近ミョーに名前が作る夕飯がヘルシーになってきた気がする…)」
「ほ、ほら!食べて!」
「お?おぅ(まぁ、俺もそれは願ったりだしいっか)」
「食後にはオレンジもあるからね!」
「おー」
こうして工藤くんに内緒のまま、工藤家夕食ヘルシー化運動が始まった。
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bkm