■天使の街・Los Angeles!
「工藤くんスゴいよっ!空に浮いてるよっ!!」
「…恥ずかしいからオメー少し黙ってろ」
ロスに連れて行ってとお願いしてから、パスポート取ったりスーツケースとか旅行グッズ揃えたりで。
あっ!と言う間に終業式はやってきて。
優作さんと有希子さんは一足先に行ってるね、って先にロスに行ってしまったから、今日は工藤くんと2人で初めての海外旅行!
てゆうか初飛行機に私大興奮!
「ほら!雲だよ雲!雲の上にいるっ!!」
「…だから黙れって言ったよな?」
「ごめんにゃひゃい…」
テンションが雲どころか大気圏を突き抜けた私と、機内で寝るからいーんだと前日遅くまで推理小説を読んでたらしく、寝不足でテンション?ナニソレ?な工藤くん。
そりゃー工藤くんは飛行機慣れしてるかもしれないけどさっ!
「時差もあるし少し寝とけよ」
そう言ってシートを倒す工藤くん。
うん、時差あるから眠れる時に寝た方がいいのよって有希子さんも言ってた。
…けど。
「工藤くん、工藤くん」
「あん?」
「…興奮しすぎて眠れません」
「知らねーよっ!」
冷たいっ!
海外旅行初心者にもっと優しくしてくれてもいいじゃない!
にゃんこめっ!!
「…ぃ、おい!あおいっ!」
「ふぁ?」
「いつまで寝てんだよっ!とっくに着陸してんだろ!!」
「…ええっ!?」
日本の空から地上を見たら、どことなく空気が醤油な感じがした。
だからカリフォルニアの空から地上を見たら、きっとハンバーガーに違いない!
って思って楽しみにしてたのにっ!!
「なんで起こしてくれなかったの!?工藤くんのバカっ!!」
「…次からは蹴り飛ばして起こしてやるよ」
にゃんこならほんとに蹴り飛ばしそうで嫌だっ!
「キョロキョロしてっと置いてくぞ」
「や、やだ!!こんなところで捨てないでっ!!」
「ぐえっ」
「こんなところで捨てられたら私あっという間に身ぐるみ剥がされるっ!!」
「わ、わかった、わかったからっ!服引っ張るなっ!首が絞まるっ!!」
こんな右も左もどころか自分がどこか、下手したら自分が誰かも怪しくなるようなところで捨てられたらっ!!
「けほっ…。…ったく、ほらよ」
「え?」
「え?じゃねーよ、手出せ!いちいち首絞められたかねーんだよ!ほら、早く!」
そう言って工藤くんは左手を差し出した。
…これはあれ?手を繋ぐというサインですか?
…いやいやいやいや!
この間ついうっかり優作さんと手繋いじゃったけど、あれは優作さんだから良かったんであって、私の右手は黒羽くんのためにっ!
「ほら、行くぞ!」
「あ、ちょ、」
黒羽くんのための右手はずいぶんあっさりと消滅し、にゃんこに手を引かれて歩き出した。
「新ちゃん!あおいちゃん!こっちよ!」
入国審査の時に何か聞かれたらどうしようってドキドキだったけど、先に通ったにゃんこが私の方を指さし審査官に何か喋ってくれたお陰で何も聞かれずハバナイスデーな感じだった。
さすがだにゃんこ!
初めて心の底からにゃんこに感謝した気がする。
入国審査も通って、モタモタすんな!ってにゃんこに手を引かれウェルカムカリフォーニアのゲートを潜るとどこの有名人?て格好の有希子さんが立っていた。
「父さんは?」
「どうしても終わらせておきたい仕事があるからって、こっちに戻ってから部屋に引きこもりっぱなしよ!」
売れっ子って大変だ…。
だからお迎えは有希子さん1人で、有希子さん愛用シルバージャガーで工藤邸に向かった。
「あおいちゃん、行きたいところややりたいことある?」
「はい!私調べてきたんです!どうしても行きたいところが、ええっと、あ、そうそう!グローマンズ・チャイニーズシアターでジョニー・デップやブラット・ピットのサインや足型を見たいのと、あとディズニーやユニバーサルスタジオにも行きたいんですが、工藤くんが3つも4つも遊園地につきあってくれるとは思えないんで、あえてシックスフラッグス・マジック・マウンテンで絶叫したいと思いますっ!」
カバンに潜ませていた付箋だらけの地球の歩き方を見ながら言ったら、運転席の有希子さんがクスクス笑っていた。
「…オメーさぁ、」
「な、なに?」
「なんでその予習能力の半分でも勉強に回せねーんだよ…」
助手席に座る工藤くんが、顔を見なくても呆れてるのがわかった。
「…だってほんとに楽しみだったんだもん…」
「あら、いいじゃない!どうせだから行きたいところ全部行きましょう!」
「却下。俺テーマパークなんか行きたくねぇし!」
「あ!でもここに身長制限があるって書いてあるから工藤くん入れないったいな!!」
「新一止めなさい!」
「身長制限で入園できねぇなんてどんな遊園地だっ!!このバカよく見ろよっ!それ料金設定の話だろ!?だいたい俺がダメならオメーも入れるわけねーだろーがっ!!」
ギャーギャーと、騒がしいシルバージャガーがロスの街を駆け抜ける。
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bkm