キミのおこした奇跡


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call my name please


call my name!


他人から名前で呼んでもらうって、思った以上に難しいんだって気づいた秋。
そー言われてみたら私、男の子から名前呼び捨てにされるなんて、向こうの世界での近所のマーくん(6歳)くらいであとはみんな芳賀って呼んでたもんな…。
でもこんなところで躓いてたら、黒羽くん本人に会った時に困る!!
なんとかして呼んでもらわないと!


「蘭は蘭です」
「またそれかよ!園子は園子でオメーはオメーだろ?」
「…工藤くん」
「あー?」
「人の話は最後まで聞きなさいって通信簿に書かれたでしょ!」
「書かれてねーよっ!」


だからほんとに、これからずっとあおいって呼べって言ってるんじゃないの!
1度でいい!
勝平、いやもうこの際黒羽ボイス!
そのボイスで「あおい」って呼ばれたいだけなのにっ!!


「うまくいかない…」
「はぁ?」


にゃんこは事件の推理とか言っておかしなところで頭を使うから、肝心なところで頭が回らないんだ!
そうだ、そうに違いない!


「工藤くんて、実は残念な思考回路してるんだね」
「初めっから残念な思考回路してるオメーにだけは言われたくねー台詞だな」
「いひゃいいひゃいいひゃい」


だってじゃあなんて言えばわかるのよ!
このバカにゃんこっ!!


「…蘭は蘭」


だいたいただ一瞬「あおい」って言われるためだけに、私がどんだけ時間使ってると思ってるの!!


「園子は園子」


なのになんで伝わらないかな!
バカにゃんこっ!!


「あおいはあおい」


ほんとに迷探偵よ!
このバカにゃんこっ!!


「って、ことだろ?」
「…え?」
「だから、蘭は蘭、園子は園子、あおいはあおい。ってことじゃねーのかよ?」


よ、呼んだ!!
にゃんこが「あおい」ってっ!!
でも


「おしいっ!みなみちゃんに言われたいわけじゃないんだっ!!」
「…はぁ?」
「ああ!でもせっかく言ってもらえたのに、そんな時に限ってなんでみなみちゃん!」
「…だから誰だよ、みなみちゃん」
「どうせならもっと引っ張ってほしかったかも!!」
「…俺さぁ、」
「なに!?」
「たまにオメーの日本語の意味が全く理解できなくなるのはなんでだろうな?」
「…さぁ?なんでだろうね?」


工藤くんが右手で頭を抱えこんでいる。
私の日本語がわからないとか失礼すぎる!
私が頭を抱えたい!
でもいいや!
工藤くんが謎解きしたから、これからは名前呼んでもらいたい時はこの謎かけでっ!


「まぁなんでもいーけど俺腹減ったから帰るぞ」
「あんまりよくないんだけど、でもいいってことにしてあげるよ!」
「そりゃどーも。…あ、あおいオメー今日の体育の時」
「転んでなんかいないよっ!」
「…あれやっぱりオメーかよ…」
「転んでなんかいないって!」
「転んだってより、バスケでドリブルに夢中になりすぎてディフェンスした相手に激突してふっ飛んでただろ」
「だから転んでなんかいない!」
「いやあおいオメー、自分から激突しにいったくせに勝手にふっ飛んでたら相手がカワイソーだろ」
「だいたいなんで工藤くんがそんな詳細知ってるの!サボりよくないっ!!」
「誰がサボりだ!授業中、先生に化学科準備室に忘れた資料取りに行けって言われたんだよっ!準備室の窓から体育館見えるだろーがっ!!」
「えー、なんで取りに行かされたのー?さては素行不良で痛い痛い痛い痛い!!」
「俺は日直だったんだっ!!オメーと一緒にすんじゃねーよ!」


いつものようにコメカミぐりぐり。
いつものように部活後の帰り道。
いつもと違うのは、私を呼ぶ呼び方。


「やっと!やっとよ!?やっとあおいって言った!!あんな回りくっどいなぞなぞだしてまで頑張った甲斐があったわっ!!」
「…園子また」
「みんなに教えてあげなきゃ!!」
「やっぱり…」


そしていつものように、翌日みんなが私に生暖かい視線を送る。

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bkm

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