キミのおこした奇跡


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新しい日常の始まり


貢物製作


「じゃあ芳賀さんは、家庭科部とかけもちするんだね?」


工藤くんに教室から摘まみ出されてから、あっという間に放課後になった。
放課後になる頃にはクラスメートの視線がまた「生暖かいもの」に変わっていた…。
なぜ?


「はい、すみません…」
「いいよ、いいよ!うち基本自由参加だし!もう行った?」
「いえ、明日行こうかと」
「…確か家庭科部は週2じゃなかったかな?明日やってないかもしれないから今行ってみるといいよ」


弓道部の主将は優しい人で、いろいろと親身になってくれそうな人だ。
家庭科部が今日やってたらそのままそっちに出てくれって言われ、弓道場を後にした。


「ええ…っと、家庭科部は、ここ、かな?…失礼します」


ノックしてから入ると、中にはエプロンをつけた人たちがいた。
今日は活動日らしい。
良かった!


「はい、なんの用?」
「あ、あの家庭科部に入部希望なんですが…」
「ああ、あなたこの間来た転校生ね!入部希望者は大歓迎よ!」


顧問の先生らしい人に笑顔で言われた。
ほんとに今日来て良かった!


「今日早速一緒に作っていく?」
「え、でも…」
「今日はちょうど材料多目に用意してるし、エプロンは私のを貸すからどう?」
「じ、じゃあお言葉に甘えて…。今日は何を作るんですか?」
「今日はレモンパイを作るの」
「…えっ!?」
「作ったことある?」
「な、ないです。でもあれ時間かかるんじゃ…」
「昼休みにある程度下拵えしてあるから大丈夫よ」


まさかまさかの、家庭科部初料理がレモンパイ!
…これはあれ?
にゃんこに貢ぎなさいって神様のオボシメシ?


「じゃあ芳賀さん、このテーブルで作ってくれる?」
「はい」


昼休みに少し作っていただけあってレモンクリームを作るところから始まった。
先生の指導もありなかなかいい感じ。
あっという間に、じゃあ後は焼き上がるのを待つだけね、って状態になった。


「毎回レシピはどうやって決めるんですか?」
「月曜日の部活で話し合いで決めるの。それを水曜日に作るのよ」


なるほど。
話し合いで決めるならいろんなものに挑戦できそうだ。


「先生ー!焼けましたー!」
「熱いから気をつけてね!」


私が作ったヤツも、自分で言うのもなんだけど、かなり美味しそうに焼けていた。
これはすごい!


「芳賀さんは?あなたも持って帰る?」
「え?あ、はい」
「じゃあこれ使って」
「はい」


先生がレモンパイを持って帰れるような入れ物をくれた。
使い捨ての紙のヤツだから、使い終わったら捨てられるタイプ。
さすが家庭科部の先生、準備がいい。


「そう言えばなんで今日はレモンパイなんですか?」
「ああ、転校してきたばかりで芳賀さんは知らないのか」
「はい?」
「今ね、運動部で流行ってるんだって!練習後にレモンパイ食べるの」
「へー、そうなんですか?」


先輩らしい人が親切に教えてくれた。
そっか。
サッカー部だけじゃなく、運動部で流行ってんだ…。


「運動部の人たちと仲良い子もいるから作ってみたい、って意見が多かったんだよね」
「なるほど〜」
「芳賀さんも誰かにあげるの?」
「そう、ですね…」
「じゃあラッピングにこれ使って!」


家庭科部の先輩もいい人!
先生がくれた入れ物をラッピングできるようにと、今日来たばっかりの私にもラッピング袋をわけてくれた。
これでなかなかな見映えがする貢ぎ物になった気がする!
調理器具を片付け、レモンパイ片手にサッカー部の部室に向かった。

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bkm

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