キミのおこした奇跡


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新しい日常の始まり


自分よりも、


「おはよ!工藤くん!」
「おーっす」


昨日はラーメンを食べた後、ご丁寧ににゃんこにマンションまで送ってもらった。
なんでも「俺やっぱ本屋行くから」とかで、送るというよりも行く道の途中、って感じだったけど。
別れ際明日も同じ時間な、と言い残し去っていったにゃんこの言葉通り、同じ時間にマンション前に立っていたら無事回収してもらえた。
ありがたいことだ。


「そうだ!昨日もらった本にレモンパイ載ってたよ!しかも簡単そうだった!」
「いらねーからな」
「…工藤くんに作ってあげるなんて誰も言ってないんだけど」


ちっ。うぬぼれ屋がっ!
むしろ下剤入れて作ってやろうかこのにゃんこめ。


「オメー、レモンパイなんか作ってねーで、きちんとしたメシ作れるようになれよ」
「きちんとしたメシ作れない人に言われたくないんですけど」
「ウルセェ」


でもほんと、毎朝トーストだけってのも味気ない。
やっぱりちゃんと料理覚えなきゃだよな・・・。


「ねぇ、うちって家庭科部とかある?」
「あ?あー…あるんじゃねーか?俺知らねぇけど。たまに部活中に校舎から良い匂いするし」
「…入ろうかな、家庭科部」
「弓道部はどうした?」
「かけもちで!」
「…オメーそんなに器用じゃなさそーだし、どっちかにした方がいいんじゃねーの?」
「失礼だな!弓道は絶対止めないし、家庭科部は死活問題だから…」
「かけもちねぇ…」
「それにどっちかだけだと、部活無い時早く家に帰っても1人で暇だしね!かけもちだったらどっちかが活動してるんじゃないかなぁって思って」
「…」


昨日、一昨日となんだかんだで工藤くんと一緒にご飯食べたけど、毎日ってわけにはいかないし。
そうなると夕方から翌朝まで1人無言で家の中で過ごさなければいけないとか…寂しすぎるっ!
いや、過ごそうと思えば過ごせるんだろうけど、レンタルショップのカードを作るにも、何よりネットを引くにも保護者の同意が必要な年なわけで。
唯一のお友達がテレビなわけだけど、見たい番組が無かったら悲しすぎる…。
そういう事態に毎日陥らないように、出来るだけ外で行動したいと思う私は寂しがりやなのかなぁ?


「家庭科部」
「うん?」
「作ったら食ってやるから持ってこい」
「…私が食べるんだけど」
「バーロォ、自分で作ったヤツを人に食べさせて評価されるから料理の腕も上がんだろ?」
「…とても親子丼に入れる玉ねぎをのれんのように繋げて切った人の台詞とは思えないよね」


あれ一瞬、切れない包丁でも使ったのかと思ったもん私。


「新一!あおい!おはよう!」
「蘭、おはよう!」
「おー」
「あおい、ケータイ買えた?」
「うん!買った買った!ほら見て!」
「…それ買ったの?」
「うん、なんで?」
「…ううん、なんでもない!後で番号交換しようね!」
「うん!」


蘭が私のケータイを見て一瞬おかしな顔をした。
けど、すぐ元に戻ったから気のせいかな?


「じゃー俺先に行く」
「うん、後でねー」


いつものように蘭が工藤くんを見送って、工藤くんはすたすた先に歩いていった。
後でと言わずに、今一緒に行けばいいのに。
同じ方向なんだし。
しかも2人は目的地も一緒のクラスメートなんだし。


「もしかして、」
「うん?」
「私2人の邪魔してる?」
「は?2人って?誰と誰?」
「蘭と工藤くん」
「…は?」
「私登下校の道なら覚えたし、もう1人で行けるから、明日からは工藤くんと」
「ち、ちょっと待って!あおい、なんの話ししてるの?」
「え?だから2人で登校したいんじゃないかなぁ、って話を」
「なんで?」
「え!?なんでって、工藤くんのこと好きなんじゃ」
「はっ!?私が新一を!?ナイナイ、ほんとに!」


でもそれは高2になっても同じこと言って否定してたし。


「確かに新一はカッコいいって思うときあるよ?」
「うん」
「…でも新一には悪いけど、」
「うん?」
「私自分よりも背の低い人は好きにならないと思う…」
「…」
「なんていうか…、新一は弟?にしか思えないんだけど…」


にゃんこ撃沈。
やっぱり工藤くん背高くなんなきゃ話進まないよ!


「牛乳飲ませればいいんだと思う?」
「なんで私に聞くの」
「…なんとなく」


まさか蘭が身長を気にして男に見えない発言をするなんて!
どうしたらあの155センチが170になるんだろう。
うーん…。


「それに、ね」
「うん?」
「新一、私のこと好きじゃないよ」
「え?」
「見ててわかるもん。幼馴染だし!」
「…いや、でもそれはさ、」
「そのケータイ」
「うん?」
「新一何か言わなかった?」
「え?これ?…自分が使ってるヤツだから使い方教えてやれるからこれにしろって言われたくらい?」
「そっか」
「…何?」
「大丈夫だよ!」
「…何が?」


蘭は鼻歌を歌いながら校門をくぐった。
…何が大丈夫?
頭にくえすちょんまーくを飛ばしながら今日も1日が始まる。

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bkm

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