好きな人

丸井くんに手を引かれるがまま来たのはテニス部の部室前


『丸井くん...?』


どうしたんだろう、すごく焦った顔をしていた

何か忘れ物でも取りにきたのかな?




「桜宮」

不意に呼ばれて少しびっくりする

「幸村くんのことが好きなのか?」











え、幸村くん?



『好きだよ』




幸村くんは好きだよ

嫌いなわけない



『屋上の花たちに優しく微笑む幸村くん、好きだよ』

「それは友だちとして...だよな?」


『うん』



私が好きなのは丸井くんなんだよ

気づいてないと思うけど





すると丸井くんは力が抜けたかのように蹲み込んだ



『丸井くん?!』


「あーカッコ悪りぃ...」


丸井くんはいつも通りカッコイイんだけど...


『どうかした?』

「なんでもねえよ、こっちの話」



どっちの話だ


だけどさっきよりかは穏やかな表情をしている



『私、丸井くんの笑ってる顔好きだな』

「俺も桜宮が笑った顔好きだぜ」


もうすぐ夏休み

丸井くんとはまる1ヶ月会えなくなる



寂しいな...


「あ、そうそう」

何かを思いついたのか丸井くんが私に



「関東大会、見に来いよ?」

『え...』



関東大会


「決勝だけでもいいからさ」


そんな大きな大会に私が行っていいのかな

しかも決勝だなんて


「実はもう予選は始まってんだよ」

『行けたら行くね』

「それ絶対行かねえフラグだろい...」



私、夏休みも丸井くんに会えるの...?


「まあ要するに俺が言いたいのはさ...


















夏休みも会おうぜ」



1番聞きたかった言葉かもしれない

『うん...夏休みも!』




丸井くんと一緒に教室に戻ると撫子ちゃんがいた


「まいちゃん大丈夫だった?」

『特に何もなかったよ』

「そう...(丸井くんが助けてくれたのね)」


にこやかに見つめてくる撫子ちゃん

可愛いなぁ...


「じゃあ私戻るから!またね!」







早いことで今日は終業式


クラスメイトのみんなとはしばらく会わなくなる


「まいちゃん!」

撫子ちゃんがクラスに遊びにきた


「仁王くんに関東大会の応援誘われたんだけどまいちゃんも行くでしょう?」

「当然だろぃ?俺が既に誘ってんだから」

「丸井くんには聞いてないわよ」


2人のやりとりが何だか面白くて

『うふふ』


すると2人がこちらを見る





「まいちゃんが笑った...」


どう反応をしたらいいのかな...?


「俺は既に桜宮が笑ったところ見てるから!」

「あらそう」



すると丸井くんは私の手を取って足早に何処かへ向かった


「まいちゃんまたね〜!」

『またねー!』




やはり丸井くんが向かう先はテニスコート


「打とうぜ」

『え!?』


球技大会が終わって以来一度もテニスボール及びラケットに触れてないんだけど...


『長いことテニスしてないんだけど...』

「一度あったことは思い出せないだけで忘れないって言うだろい?」


いや、それは某有名映画のおばあさんの名言だし

しかもそれ記憶の話だから...!


「きっと身体に染みついてるぜ、俺が教えたテニス」




丸井くんに教わったテニス


忘れたくない...



勇気をふりしぼってラケットを握る


「サーブは俺からな」


豪速球サーブ打ってくるのかなと若干焦りながらベースラインの後ろへ下がる


「そんな下がんなくていいって」


そう言った丸井くんはアンダーサーブで打ってくれた


優しいな、丸井くん


ゆっくり打たれたサーブはしばらくブランクがあった私にでも打ち返すことができた


けどネットを越えなかった


「打ち返せたじゃん!もう一球いくぜ!」

拾えるもののなかなかネットを越えてはくれなかった


こんなんじゃラリーはできない

丸井くんが思う楽しいテニスはできない



「なあ桜宮」

自分の実力の無さと丸井くんと楽しいラリーができなくて申し訳なかった

「顔あげろって」


ネット越しから聞こえてくる丸井くんの声

恐る恐る顔をあげる


「ラリーってのは“届け”って思わねえと続かねえんだよ」



それは丸井くんに満足させられるテニスをしようとばかり考えて焦っていた私に気づかせてくれる言葉だった


もう一度丸井くんがサーブを打ってくれる


丸井くんに...届け!



打ち返したボールは見事に丸井くんのコート内へ入った


「しっかり届いたぜ!」

楽しそうにテニスをしている丸井くんが今私とラリーをしている


嬉しいな


いつまでもずっと丸井くんとこうやってラリーをしていたいな...





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