あの子について
桜宮まいさんという女の子は暗くて何を考えているか分からない子、話しかけにくいという理由で入学当初から恐れられている子だった
俺はそんな噂は自分の目で見てから判断しようと思っていたから全く気に留めてもいなかった
ある日、テニス部へ入部届を出しに行った日
彼らと初め顔を合わせた日
一際目立つ赤色の髪
その男の子が俺に声をかけてくれた
「俺は丸井ブン太、シクヨロ！」
明るくてこういう子はクラスのムードメーカー的な存在になるんだろうとすぐにわかった
「俺は幸村精市、よろしく丸井くん」
丸井と話していくうちにその女の子の名前が出る
「アイツは勘違いされ易いんだよな〜本当はイイやつなんだけど」
どうやら彼は同じクラスらしく一度会ってみたい旨を伝えた
そして初めて君に会った
とても礼儀正しくて丸井は女の子を見る目があるなって思う
確かに大人しくて他の女の子に比べると印象は暗いけど話していくうちにすごく自己犠牲心が強い子だなって実感した
縁の下の力持ちとは彼女の人のようなことを言うんだろう
桜宮まい
暗くて陰気、何を考えているか分からない
その為クラスで浮いている
丸井と同じクラス
テストの順位は学年で10番以内
だが著しくコミュニケーション能力が低い
テニスは初心者にして球技大会で優勝する
これは丸井の指導力もあるが、彼女が丸井に対しての信頼も伺える
そして丸井は桜宮の長所に誰よりも早く気づいている
いいデータが取れた
最近丸井がやたらと元気だ
「真田〜！はよーっす！」
朝練でもこの調子
「コレ桜宮が俺の為に徹夜で作ってくれたんだぜ！」
と見せてくれたのは丸井専用テスト対策ノート
中を見てみるととてもわかりやすく要点がまとめられていた
「いいクラスメイトを持ったな」
「ほんとほんと！感謝しねーとな！」
またテニスの上達も早く、球技大会で優勝という成績を残したこともあり努力の人だと思った
そういう人間が丸井の周りにいて誇らしく思う
それは入学式の日
ブン太が待ち合わせの時間になっても来ねえから家まで行くと寝坊したらしい
家の外からでもバタバタ足音が響いていた
「わりぃ！ジャッカル！」
焦った顔をして出てきたブン太はいつものようにガムを噛んでいた
朝飯すら食う時間がなくて気を紛らわしているのか
そうでなくてもいつも噛んでいる
そんな話をしていると俺らの前を歩く女子生徒がこちらを振り返る
そしてブン太にハイチ○ウを渡した
どうやら俺たちの会話を聞いていたらしい
ブン太は驚きながらも嬉しそうに礼を述べていた
その女子生徒はブン太と同じクラスになったらしく今も仲良く(ブン太が一方的に)しているらしい
初めて会った時から暗い印象だったがブン太の話を聞く限りそんな感じはしなかった
むしろブン太に親しい友達ができたことを嬉しく思う
よかったな、ブン太
桜宮まい
ブン太に気があると見た
初めて昼食を一緒にした時、
「ブン太のカッコイイところの１つや２つ見れるかもしれんぜよ」
『丸井くんのカッコイイところ...』
憧れの目でしか見てないようじゃが、俺から見たら恋する女の子の目に見えた
ブン太がみんなより多く走っているところを屋上から見ているのもバレバレ
それに桜宮と丸井が仲良さそうに話しているのを羨ましそうに盗み見ている奴がいることも分かっとる
俺に隠し事は効かんぜよ
まあブン太も桜宮のことを普通の女子とは別の目線で見ているし
2人とも、変な奴に惑わされずに頑張りんしゃい
桜宮まい
初めて会った時はモノくれてイイやつだなって思ってた
けど同じクラスになって話していくうちにどんどんその印象は変わっていった
たしかに暗いやつだけど話してみると意外と面白いし優しいし
それに俺が初めて桜宮を呼んだ時すげえ驚かれた
なんでも名前を覚えてもらったことが相当嬉しかったようだ
驚きながらも嬉しそうに微笑んだ桜宮の顔が忘れられなくて
こんな明るく笑うんだって思って....
アイツの笑顔を見てから俺は桜宮に積極的に話すようになった
またあの笑顔を見たい一心で
球技大会
俺の指導にしっかりついて来てくれる桜宮の姿を見てすげえ一生懸命な子だなって
俺たちの期待を裏切りたくないとか思ってるらしいけど桜宮がテニスを楽しいって思ってくれたらそれでいい
また一緒にテニスしたいしな
決勝も手に汗握る試合だった
しっかり見届けたぜ、お前の後ろ姿
『丸井くんは私の憧れだから』
そんな桜宮を見てると俺もまだまだ頑張んなきゃって思うんだ
それに何より一緒にいると俺も楽しいんだ
桜宮の笑顔を1番近くで見られるから
[ 15/38 ][＊prev] [next＃]
[しおりを挟む]