都市伝説あらわる


絡んできた不良達をしばらく動けないようにしてから早数時間。

ぼーっと道路を歩いている時に、それは現れた。

急いでいるのだろうか。それともなにかから逃げているのだろうか。音もなく走る漆黒のバイクは、まっすぐにこちらに向かってくる。

…………向かってくる!?

気づいた時には遅かった。



――ドンッ



『あっ…』

【!?】


あたしはそのバイクに撥ねられた。



***



彼女――セルティ・ストゥルルソンは焦っていた。

人を轢いてしまった。


――ど、どどどどどうしよう!?


首がない彼女は、しゃべることができない。それに、都市伝説と言われている自分が一般人に話しかけてしまったら怖がらせてしまうのではないか。
そう考えているセルティは、同居人のことをすっかり忘れあわあわしていた。

そんな時だった。知り合いである金髪バーテン服の男を見つけたのは。


【しっ、静雄!!】

「ん?セルティか。どうした?」

【どどどどどうしよう!私はどうすればいいんだ!?警察か!?警察にいくしかないのか!?】

「は?何言ってんだ?とりあえず落ち着けって」

【ひっ人を…人を轢いてしまった】


もう警察に行こう…自首しよう…。セルティはそう思った。


「あ?新羅んとこ行けばいいじゃねぇか」

【……あ】


そこでセルティはようやく同居人である岸谷新羅の存在を思い出した。
そうだ、新羅に相談すればいい話じゃないか。


「ってあれ、この女…どっかで見たこと…」

【? 静雄、この子のこと知っているのか?】

「あー…ダメだ、思い出せねぇ。いやでも見たことあるような…ないような…」

【そうか。…って静雄お前、ケガしてるじゃないか!】

「ノミ蟲にやられた」


忌々しそうに静雄は言う。


【ならお前も新羅のところに行けばいい。もし万が一途中でこの子の目が覚めてしまったら驚かせてしまうだろうから】

「わかった。仕事も終わったし行くわ」


バイクの後部座席に静雄が乗り、影で造った荷台に風香を乗せバイクを発車させた。