銀色桜 | ナノ

自己紹介とは危険なものである、たぶん


何やかんやでここにいる事が許されたあたし。お世話になるんだから自己紹介しなきゃいけないよね、うん。


『自己紹介始めるよー。ドンドンパフパフ〜♪』



シーン。



沈黙はツラいぜ。


『真選組零番隊隊長 日比野風香です。よろしくどーぞ』

「「「……………」」」


殺気が強くなった。え、何で?ただ自己紹介しただけなのに。


「君、ふざけてるの?」

『は?』


意味わかんないんだけど。


「新選組は僕らだよ。馬鹿にするのもいい加減にしてよね」

『は?真選組はあたしだけど。つーか新入隊士が入るなんてきいてない』

「新入隊士?僕らはずっと新選組やってるよ」


…………どーゆーこと?


『一つ質問。ここどこ?』

「今更何言ってんの?京にある新選組屯所だよ」


京?江戸じゃなくて?


『いやいやいやいやないないないない』


なんでだろう冷や汗が止まらない。


『黒髪さんお名前は?』

「俺か?新選組副長 土方歳三だ」

『オーマイガ!!』


自己紹介前にこんな壁にブチ当たるとは思ってなかったぜ。


『土方さん、そして皆さん、よーくきいていてください』

「「「?」」」

『あたし、トリップしちゃったんです』


また彼らの頭にクエスチョンマーク。


「とりっぷってのはなんだ?」

『要するに、別世界から別世界に行くという事です。ふざけてないから刀を向けないで殺気を向けないで』

「信じられる訳ないでしょ」

『これを見ても?』


そう言って取り出したのはカバンに入っていた携帯電話。


「……何、これ」

『携帯電話といって、遠くにいる相手にメッセージ……文みたいなのを送れたりするもの。ここにはこんなのないでしょ?』


この部屋を見た限りでも、クーラーなどはない。加えて横文字も使えないときた。どう考えてもあたし達とは違う世界の人間だ。


『だから真選組だけど別世界の真選組だからそう深く考えんなってことだ!』

さ、自己紹介の続き!とあたしは言った。



ちなみに、しんせんぐみは『真選組』ではなく『新選組』と書くらしい。

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