▼ 音楽なんて聴きながら受験勉強なんてできると思ってんのかお前は!もう切りなさい!
「誰だ?」
橋の上で法師の格好をした男が派手な着物を着た男に問う。
「…ククク ヅラぁ、相変わらず幕吏から逃げまわってるよーだな」
「ヅラじゃない桂だ」
名を桂小太郎。かつて攘夷戦争で狂乱の貴公子≠ニいう名を轟かせた男だ。
「なんで貴様がここにいる?幕府の追跡を逃れて京に身をひそめているときいたが」
「祭りがあるってきいてよォ、いてもたってもいられなくなって来ちまったよ」
男はキセルをくわえると、白い息を吐いた。
「祭り好きも大概にするがいい。貴様は俺以上に幕府から嫌われているんだ。死ぬぞ」
「よもや天下の将軍様が参られる祭りに参加しないわけにはいくまい」
「お前何故それを?まさか…」
「クク てめーの考えているようなだいそれたことをするつもりはねーよ。だがしかし面白ェだろうな。祭りの最中 将軍の首が飛ぶようなことがあったら幕府も世の中もひっくり返るぜ」
男は愉快そうにクツクツと笑う。
「それに、真選組に入ったっつー黒龍≠一度見てみたくてねェ」
「、貴様!」
「黒龍…お前にふさわしい名だよ。なァ 風香」
男は笠をあげる。
男の正体は、高杉晋助だった。
――漆黒の髪を尾のように宙になびかせ、獲物を狩る姿はまさに黒き龍。
第十八訓
音楽なんて聴きながら受験勉強なんてできると思ってんのかお前は!もう切りなさい!
prev / next