銀色ジャスティス | ナノ


▼ 刀じゃ斬れないものがある

煉獄関では、道信を殺した鬼獅子が暴れ回っていた。


「ククク こいつァいい。あの化け物の立ち合い見た後じゃ侍同士の斬り合いなんざガキの喧嘩に見えますな」

「しかし『荼吉尼』の戦いをこの目で見れるたァ…奴らは『夜兎』と同じく大戦でほぼ全滅したときいてましたがねェ」

「我を誰だと思っておる。手駒なら幾らでも揃っておるわ」


荼吉尼は夜兎、辰羅などに並ぶ武を誇る傭兵部族。それにかかれば侍など赤子も同然。


「しかしこれじゃあ強すぎて商売になりやせんな。なんせあの鬼道丸さえ容易にしとめた化け物だ…もそっと浪人を増やさねーと」

「…鬼道丸も哀れな男よ、おとなしく我に飼われておればよかったものを。処刑されるところを救ってやった恩を忘れ逃亡しようなどど。侍などもはや前時代の異物…奴等が生き残る術は我らに飼われる他ないというのに。最後までバカな男であった」


その時、会場が歓声をあげた。何事だと目を向けるとそこにいたのは…


「きっ…鬼道丸!?」


そう、鬼道丸だった。いや、鬼道丸の面をかぶった銀時の方が正しいだろうか。


「バ…バカな。奴は確かに…誰だ!どっから忍びこんで…」

「ククク 面白いではないか。鬼道丸め、我らに恨みを晴らすため地獄より蘇ったか」


銀時は鬼獅子の前に立つ。


「…貴様、何故ここにいる?貴様は確かにわしが殺したはず…」

「てめーか?俺を殺したのは。てめーか?風香の目の前で俺を殺したのは。イライラして眠れなくて起きてきちゃったじゃねーか、どーしてくれんだコノヤロー」

「ここはもう貴様の居場所じゃない、わしの舞台じゃ。消え去れ」

「消えねーさ。まっすぐに生きたバカの魂はな、たとえその身が滅ぼうと消えやしねー」

「ほう。ならばその魂…今ここでかき消してくれる!!」


鬼獅子は金棒を、銀時は木刀を互いに向ける。銀時の鬼の面は角が片方とれ、鬼獅子の額からは血が舞う。鬼獅子は腰に差していた刀を銀時に向かって振りおろす。だが刺したのは鬼の面だけだった。銀時はニタッと笑うと木刀を鬼獅子の腕にめり込ませる。
だが、それがきかなかった鬼獅子は銀時の横腹に向かって金棒を勢いよく振りおろす。


「ククク オイデカブツ」


銀時は静かに笑う。
そう…寸でのところで木刀で防いでいたのだ。


「こんなもんじゃ俺の魂は折れねーよ」


鬼獅子をまっすぐ見るその目…あれは本物の侍の目だ。
銀時は駆け出し、鬼獅子を倒した。

一瞬シーンとなった会場だが、すぐに歓声が起こった。


「てめー、なんてことしてくれやがる。俺達のショウを台無しにしてくれやがって。ここがどこだかわかってるのか?」


鬼獅子を倒した銀時の前に現れたのは片目にアイパッチをつけた男だった。周りには天導衆の連中もいる。


「一体どういうつもりだ。てめーは何者だ?」


刹那、連中の足元が攻撃された。攻撃した奴らは客席の方にいる。銀時はそちらに顔を向けた。


「ひとーつ、人の世の生き血をすすめ」

「ふたーつ!!不埒な悪行三昧」

「「みぃーっつ!!」」


そう――新八と神楽だった。二人とも鬼の面を持っている。そして二人は銀時を指す。


「えー みーっつ、み…みみ…みだらな人妻を…」

「「違うわァァァァ!!」」

「銀ちゃん、みーっつはミルキーはパパの味アルヨ」

「ママの味だァァ!!違う違う!みーっつ醜い浮き世の鬼を!!」


ふざけた解答をした銀時に二人が飛び蹴りを入れる。



「「「退治てくれよう、万事屋銀ちゃん見参!!」」」



だがそのやり取りが気に触ったのか、アイパッチ男はやっちまえと命令した。


「死んでもしらねーぜ!こんな所までついてきやがって」

「まだ今月の給料ももらってないのに死なせませんよ!!」

「今月だけじゃないネ、先月もアル」

「先月はお前 仕事なかっただろーが!」

「じゃあ今回はもらえるネ」


次々と倒していく万事屋。残りはわずかになっていた。


「…な、なんだコイツら」


それに気圧されるアイパッチ男。チャカ、と首筋に何かが当たった。刀だった。




第二十四訓
刀じゃ斬れないものがある





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