銀色ジャスティス | ナノ


▼ オカマは男のバカさも女のズルさも全部知ってる

『……………』


何がどうしてこうなった?





第二十一訓
オカマは男のバカさも女のズルさも全部知ってる





そもそもの始まりはなんだった?そう、確か見廻りをしていたんだ。そしたらオカマとぶつかっちゃって…それからどうしたっけ?あれ、なんか頭グワングワンするぞ?あっ オカマに殴られたんだ。気を失う前に聞いたオカマの言葉…確か「いい逸材が手に入った」だったような。


「みんな〜、今日から入ってもらうことになった風香よ」

『…………あれ?』


視線を感じ目を覚ます。そこにはゴツいオカマがたくさんいました。何これどーいう状況?


『あ』

「「あ」」


その中にいた天パの奴と黒髪ストレートの奴を発見。言わずもかな銀時とヅラだ。そしてここはかまっ娘倶楽部。


『銀時 ヅラ、アンタらにそんな趣味が……ううん、大丈夫、二人のそんなとこを知ってもあたし達幼馴染みだから』

「銀時じゃない、パー子よ」

「ヅラじゃない、ヅラ子だ」

『…………』


話をきくと、あたしをここに連れてきた人…西郷さんを銀時は妖怪呼ばわりしてしまい、ヅラは化け物呼ばわりしてしまったのだという。


「で?お前はどーした?」

『知りゃしないよ。ちょっとぶつかったらいい逸材が手に入ったとか何とか言って殴ってここに連れてこられた』


あたしは女であってこんなところとは無縁のはずなのに。


「以来なんとか抜け出す機会をうかがっているんだが、オイそこもっと腰振れェェ!!」

『ヅラ、アンタはここの空気を吸いすぎたね。もうシャバに戻るのは無理だ、諦めな』

「ふざけるな。俺には国を救うという大仕事があるんだ。こんな所でこんな事をしてる暇はない」

「こんな所でノリノリで踊ってる奴に国も救われたくねーだろうよ」


そう、あたし達は今踊っている。いや踊りたくないんだけどね、実際。


『つーかあたし男じゃないんだけど。女なんだけど。なんでここ連れてこられたの。ここかまっ娘倶楽部だよ?』

「そりゃお前、アレだろ」

『アレ?』

「「雰囲気が男っぽい」」

『お前ら後で覚えとけ』


ぶち殺してやるから。


「ちょっとォ〜 ヅラ子もパー子も風香もノリが悪いわよォ。そんなんじゃお客様気分悪くしちゃうでしょ」


あたし達にそう注意するのはアゴが特徴的な人。


「何言ってんのよアゴ美。この気だるさが私の売りなのよ」

「誰がアゴ美だコルァァ!!」

『パー子失礼でしょ。確か…そう、この人はアゴ次郎さんだよ』

「アゴ次郎!?女らしさの欠片もねーよ!!」

「パー子 風香、さっき紹介しただろう。この人はアゴ代だ」

「違うわァ!!あずみだボケェェ!!」


そこに酔ったオヤジが乱入してくる。


「オイオイ何やってんだよ!グダグダじゃねーかよ!こっちはオメー てめーらみてーなゲテモノわざわざ笑いに来てやってんだからよォ もっとバカなことやってみろよ、化け物どもよォ」

『ああん?ハゲ散らかったジジイのくせに調子こいてんじゃねーよボケカスコラ。その残り少ない髪の毛という名の希望を全て引き抜いてやろうかコノヤロー』

「止せ、風香」

『だってヅラ子、』


コイツあたしまで化け物呼ばわりしやがった!銀時やヅラはともかくあたしまでかよ!ホントムカつくこのジジイ!


「お客様、舞台上の踊り子に触れたり汚いヤジを飛ばすのは禁止と言いましたよね?」


西郷さんはガッとジジイの頭を掴むと、


「オカマなめんじゃねェェェ!!」


投げ飛ばした。



***



「女より気高く、男より逞しく。それがママの口癖」


あたし、パー子、ヅラ子、アゴ美の四人は買い出しをしていた。ああ…こんなことが土方さんにバレたら終るな、人生が。


「私達みたいな中途半端な存在はそれぐらいの気位がないと世の中わたっていけない。オカマは誰よりも何よりも強くなきゃいけないの」

「それじゃあアゴ美も強いの?アゴ美のアゴは何でもくだけるの?」

『なんでアゴ限定の強さなんだよ』

「それにしても西郷殿の強さは常軌を逸しているな。アレはただ者ではあるまい」

「ええ、昔はスゴかったらしいわよ。なんだっけな えーと、白フンの西郷だとか呼ばれててなんかよくわかんないけど白い褌一丁で暴れまわった豪傑らしいわ」


いやそれだけの情報じゃただの変態。


「…白フンの西郷……どこかできいたような」


話ながら歩いていると、通り道の下から声が聞こえた。キショイやらなんやら。ああいじめか。
パー子は食べていたアイスを、ヅラ子は飲んでいたコーヒーをいじめっ子にかけた。お前らおとなげなっ!
そして、いじめられていた子は西郷さんの息子のてる彦くんだった。

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