▼ 困った時は笑っとけ笑っとけ
その時、救援の船がやってきた。どうやら辰馬が呼んだらしい。
「アッハッハッハッ すまんの〜、陸奥!こんな所までむかえにきてもらって」
「こんなこたァ今回限りにしてもらおう。わしらの船は救援隊じゃない、商いするためのもんじゃきー。頭のあんたがこんなこっちゃ困るぜよ。それからわしらに黙ってフラフラすんのも今回限りじゃ」
「アッハッハッ すまんの〜。やっぱり女は地球の女しかうけつけんき」
「女遊びも程々にせんとまた病気うつされるろー」
「アッハッハッ ぶっとばすぞクソ女」
辰馬の前に立っている女性は陸奥。辰馬は『快援隊』という
あたし達は船に乗らせてもらい、辰馬に案内をしてもらっていた。
「わしも昔は風香や銀時やヅラ達と天人相手に暴れ回っちょったが、どーにもわしゃ戦ちゅーのが好かん」
人を動かすのは武力でも思想でもなく、利益だと辰馬は言う。
「商売を通じて天人 地球人双方に利潤をもたらし関係の調和ばはかる。わしゃわしのやり方で国を護ろうと思ってのー。風香は幕府に恩があるとかで真選組に入ったらしいし、ヅラはヅラで社会制度ごと変えよーと気張っちょるよーだし、高杉の奴は幕府倒すため色々画策しちょるときーとる。みんなそれぞれのやり方でやればいいんじゃ!」
「ヘェー、みんなスゴイんですね。ウチの大将は何考えてんだか。プラプラしてますけどね」
「アッハッハッハッ わし以上に掴みどころのない男じゃきにの〜」
辰馬の言葉に耳を傾けながら水を一口飲む。生き返る…。
「じゃが人が集まってくる男ちゅーのは何かもってるモンぜよ。わしやヅラが志に惹かれて人が集まっとるよーに、おんしもあのチャイナさんも奴の中の何かに惹かれて慕っとるんじゃなかか?」
「…んー、何だかよくわかんないですけど…でも、!」
新八の言葉を遮ったのは触手だった。
「あれ?何?ウソ?何?あれ?」
「アッハッハッ いよいよ暑さにやられたか。何か妙なものが見えるろー」
『辰馬、アンタに何か巻きついてるけど』
「ほっとけほっとけ、幻覚じゃ。アッハッハッ」
『まさかこれアンタの妄想?こーゆーの望んでんの?やだ、しばらくあたしに近づかないで』
「妄想じゃないですよ風香さん!!」
「ほっとけほっとけ、幻覚じゃ。アッハッハッハッハッー」
辰馬も触手に連れ去られた。
『辰馬の妄想じゃないのか…じゃああれは一体…』
「あれは砂蟲。この星の生態系で頂点に立つ生物。普段は静かだが砂漠でガチャガチャ騒いじょったきに目を覚ましたか…」
「ちょっとアンタ自分の上司がエライことなってんのに何でそんなにおちついてんの!?」
「勝手な事ばかりしちょるからこんな事になるんじゃ。砂蟲よォォ そのモジャモジャやっちゃって〜!特に股間を重点的に」
「何?何の恨みがあんの」
辰馬は懐から銃を取りだし捕まっていた人達を助ける。のとほぼ同時に本体が出てくる。どうやら砂蟲は船ごと地中にひきずりこむつもりらしい。
「大砲じゃあああ!!わしばかまわんで大砲ばお見舞いしてやれェェェ!!」
「でも坂本さん!!」
「大砲うてェェェ!!」
「ちょっ…あんた坂本さん殺すつもりですか!?」
「奴一人のために乗客全てを危機にさらせん。今やるべきことは乗客の命救うことじゃ。大義を失うなとは奴の口癖…撃てェェェ!!」
辰馬は攘夷戦争の時、地上で戦うあたし達をほっぽいて宇宙へむかった。なんでそんなことができたのか?大義のためだ。目先の争いよりももっとずっと先を見すえて、将来の国のためにできることを考えて苦渋の決断をしたんだ。
「そんな奴に惹かれてわしら集まったんじゃ。だから奴の生き方に反するようなマネ、わしらにはできん。それに奴はこんなことで死ぬ男ではないきに」
「いやいやいや!死んじゃうってアレ!どう考えても死ぬよアレ!地中にひきずりこまれてる!!」
快援隊の連中は土の中に逃げ込む前にしとめるとまた大砲の用意をした。まあその気持ちはわからなくもないけど…。
『バカか、バカなのかアンタらは。こんなモンぶちこむからビビって潜っちゃうんでしょ。やっこさんが寝てたのを起こしたのはあたし達だよ』
「大義を通す前にマナーを通せ、マナーを」
銀時は木刀で大砲を破壊する。
『辰馬ァ アンタ星を救うとかデカい事吐いてたくせにこれで終わり!?』
「昔からテメーは口だけだ…俺らを見ろ、俺らを」
『「
***
「………そーか。お前らがおりゃあ面白か漁になると思っちょったんだがの〜」
「ワリーな、こう見えても
『宇宙でもどこでもいって暴れ回ってきな。アンタにゃちまい漁なんざ似合わない。デカい網宇宙にブン投げて星でも何でも釣りあげりゃいい』
「…おんしゃら、これからどーするがか?」
「そーさな…俺達ゃのんびり
『地べた落っこっちゃった流れ星でも釣りあげて、もっぺん宙にリリースよ』
***
「(…フフ そーいやそんな事ゆーちょった。まったく何を考えちょるんだかわからん二人よ。じゃがお前らがいたからわしゃ宙へいけた。お前らが地上に残ってくれたからわしゃ後ろを振り返らず走ってこれたんじゃ)」
あたしと銀時は辰馬に手を伸ばす。
「(銀時…風香…。わしが地に落ちる時がきてもお前らがまた釣りあげてくれるちゅーなら、)」
――わしゃ何度でも飛ぶぞ、あの宙にの…
辰馬はあたし達の手を握り返した。
「…無茶な事を。自分も飲まれかねんところじゃったぞ。何を考えとるんじゃ、あの二人…」
「…ホントッスね、何考えてんでしょあの人達」
「何を考えてるっていうか何も考えてないネ」
「でも、なんかあの人らしか見えないもんがあるのかな…」
完
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