▼ 男にはカエルに触れて一人前みたいな訳のわからないルールがある
そんなこんなで始まったカエルの護衛。なんでカエルなんか護衛しなきゃならないの。クソかったるい。いっそのこと死ねばいいのに。そうすれば仕事減るのに。
『だる…』
嫌だよカエルの護衛なんて。吐き気がする。こんな状況でもアイマスクつけて寝れる総悟がうらやましいよ。…いや、軽くうぜぇな。どうせなら土方さんにチクってやろ。
『土方さーん、総悟が寝てまーす』
案の定こちらに向かってきた土方さん。総悟のアイマスクを貶すような発言をし、警備中に惰眠をむさぼるとは…と刀をつきつける。
「なんだよ母ちゃん、今日は日曜だぜィ。ったくおっちょこちょいなんだから〜」
『は?総悟何言ってんの?今日は土曜だし』
「今日は火曜だ!!」
あり?そーだっけ?
「てめーこうしてる間にテロリストが乗り込んできたらどーすんだ?仕事なめんなよ、コラ」
「俺がいつ仕事なめたってんです?」
土方さんは総悟のスカーフを掴む。
「俺がなめてんのは土方さんだけでさァ」
「よーし!!勝負だ剣を抜けェェェェ!!」
騒いでる二人に鉄拳がふってきた。殴ったのはどうやら近藤さんだったよう。
「仕事中に何遊んでんだァァァ!!お前らは何か!?修学旅行気分か!?枕投げかコノヤロー!!」
そう叫ぶ近藤さんを殴るのは今回の護衛相手――カエルの天人の
「お前が一番うるさいわァァァ!!ただでさえ気が立っているというのに」
「あ、スンマセン」
「まったく役立たずの猿めが!」
キレてどこかへ行く禽夜。チッ、クソうぜぇ。
「なんだィありゃ。こっちは命がけで身辺警護してやってるってのに」
アンタは寝てたでしょ。
『幕府の高官だかなんだか知らないけど、なんであんなカエル護んなきゃなんないの?』
「同感でさァ」
「風香ちゃん 総悟、俺達は幕府に拾われた身だぞ。幕府がなければ今の俺達はない。恩に報い忠義を尽くすは武士の本懐。真選組の剣は幕府を護るためにある」
あたしは幕府に忠誠やら忠義やらは誓った覚えはないんだが。
「だって海賊とつるんでたかもしれん奴ですぜ。どうものれねーや。ねェ土方さん?」
「俺はいつもノリノリだよ」
嘘つけ。
…いや確かに人の事殴る時はノリノリかもしれない。
『アレ見てよ、みんなやる気なくしちゃってさ。ザキなんかミントンやってるよ、ミントン』
「山崎ィィィ。てめっ 何やってんだコノヤロォォ!!」
はい、土方さんとザキのリアル鬼ごっこスタート。
「風香ちゃん 総悟よォ、あんまりゴチャゴチャ考えるのは止めとけ。目の前で命狙われてる奴がいたら、いい奴だろーが悪い奴だろーが手ェ差し伸べる。それが人間のあるべき姿ってもんだよ」
言い終わると、禽夜があたし達と真逆の方歩いてるのが見えた。近藤さんはすぐに追いかけた。
「はぁ〜。底無しのお人好しだ、あの人ァ」
『確かに。でもそれが近藤さんのいいとこだよね』
「ま、そうですけど」
刹那。
ドォォォォン
銃声が、響いた。
狙われた禽夜をかばい近藤さんが撃たれたのだ。
『ザキ!!』
「承知っ!」
敵はまだ遠くへは行ってないはず。ザキの名前を呼ぶと直ぐ様駆け出した。
「フン、猿でも盾代わりにはなったようだな」
その言葉を聞き、総悟が刀に手をかけるが土方さんに止められる。殺気でてんぞー。
『……ええ、そうですね。猿でも盾代わりにはなりました』
「風香、テメェ!!」
『でも、その猿のおかげでアンタの命は護られたんだ。……少し、自分の立場を考えたら?あたし達の命は軽くない。物みたいに扱うんじゃねェよ』
少し殺気を含むと禽夜は面白いくらいに顔を青くした。
笑いそうになったが、自分が作ったシリアスな雰囲気を壊すワケにはいかないので頑張って耐えた。偉いぞあたし。
prev / next