▼ べちゃべちゃした団子なんてなぁ団子じゃねぇバカヤロー
翌日。
見廻りと称してお見舞いにきた。仕事しろ?嫌です。
『チャオ!新八だいじょーぶ?ハイこれお見舞い品……ん?』
あたしが見た光景。それは……
「コ…コレ。コイツの持ち主を探してくれんか?」
おじいさんが万事屋に詰め寄っているというところだった。
『………あ、お邪魔しましたー』
ヤバいぞコレは。厄介事の匂いがプンプンする。コイツは早めに立ち去った方がよろしいようだ。
『新八お大事にー……おっとぉ!?』
「まあ待てって」
『嫌だ』
銀時に捕まった。やめて面倒事は嫌なんだよ。
「オイじーさん、コイツ警察なんだ。こーゆーのもいた方がいいよな?」
『はっ!?』
「警察は困ってる人を助けんだろ?それが仕事だろ?だったらかんざしの持ち主探しくらい手伝おうぜ?」
『ヤダ』
「ちなみに風香に拒否権はない」
『ないの!?』
なんやかんやでかんざしの持ち主探しをすることになってしまった。サボってんのバレたらどーしよ。
「団子屋『かんざし』?そんなもん知らねーな」
あたしと銀時はとある団子屋に聞き込みをしている。ん、この団子うまい。
「もぐもぐ…昔この辺にあったってきいたよ」
「ダメだ俺ァ三日以上前のことは思い出せねぇ。それよりよォ、銀時お前たまったツケ払ってけよ」
ツケてんのかよ。
「その『かんざし』で奉公してた綾乃って娘を捜してんだ。娘っつっても五十年も前の話だから今はバーサンだろーけどな」
「ダメだ俺ァ四十以上の女には興味ねーから。それよりよォ、銀時お前たまったツケ払ってけよ」
どんだけツケてんだ。
綾乃さんはおじーさんの初恋の人だった。いつもかんざしを挿していてちゃきちゃき働く巷でも評判の娘だった。
綾乃さん目当てで団子屋に来る人も少なくなく、通いつめる男共は太っていった。おじーさんもそうしたかったらしいが、お金もなくウブだったおじーさんは物陰からこっそり見ていたらしい。
ある日。いつものように見ていたら、くるっと綾乃さんが振り向いた。どうやらバレていたようだ。
憧れの人が隣にいる。そう思ったおじーさんは団子を喉につまらせてしまった。己の生死より醜態を見られたくないという思いが強く、気力をふりしぼって逃げた。苦しまぎれに引き抜いてしまった彼女のかんざしを握って。
おじーさんがその後きいた話によると、綾乃さんは店をやめさせられてしまったらしい。彼女は優しかったので貧しい子供達に内緒で団子を食べさせていた。おじーさんの一件でそれがバレてしまいやめさせられてしまったのだ。
それが、あたしが新八からきいた話だ。
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