▼ 疲れた時は酸っぱいものを
銀時に言われた公園に着いた。そこにいたのは…
「定春ぅ〜!!こっち来るアルよ〜!!」
ウフフフフフ!!と笑いながらバカデカイ犬と(きっと命をかけた)鬼ごっこをしている神楽と、全身包帯ぐるぐる巻きの銀時と新八だった。
『銀時、何コレ』
「アレか?定春ってんだ」
『いや犬の名前じゃなくて』
「え?俺の好物?甘いモンだけど」
『知ってるよ……ってそうじゃなくて』
何なのこの状況、と聞けば銀時は話し出す。
「実はな…ダンボールに入ってた
『包帯は?』
「「定春に噛まれた」」
痛そうだね。
『てゆーか何アレ。神楽はおいかけっこしてんの?鬼ごっこしてんの?どっちにしてもあの犬は神楽の
「……いや〜、スッカリなついちゃって。ほほえましい限りだね、新八君」
「そーっスね。女の子にはやっぱり大きな犬が似合いますよ、銀さん」
ほほえましいか、アレ。
「僕らにはなんでなつかないんだろうか、新八君」
「なんとか捨てようとしているのが野生のカンでわかるんですよ、銀さん」
そりゃなつかないワケだ。
「なんでアイツにはなつくんだろう、新八君」
「なついてはいませんよ、銀さん。襲われてるけど神楽ちゃんがものともしてないんですよ、銀さん」
「なるほどそーなのか新八君」
あ、ホントだ。今にも噛みつきそうな定春だが神楽に腕一本で抑えられてる。何なのあの娘。腕一本であの大きさの犬止めるとか神だと思う。
考えていたら汗をかいた神楽がタタタとベンチに戻ってきた。
『楽しそうだね、神楽』
「あ、風香!!ウン、私動物好きネ。女の子はみんなカワイイもの好きヨ。そこに理由イラナイ。ねー、風香」
『ん。あたしもカワイイの好き』
「…アレカワイイか?」
「カワイイヨ!こんなに動物になつかれたの初めて」
「神楽ちゃんいい加減気づいたら?」
定春がベンチに突っ込んできた。あたし達は避けたが、神楽はそのままふっ飛ばされた。大丈夫なのか、アレ。
「私、昔ペット飼ってたことアル。定春一号」
大丈夫なようだ。頑丈だな、オイ。神楽は定春のあごを蹴る。
「ごっさ可愛かった定春一号。私もごっさ可愛がったネ」
定春一号はウサギらしい。
「定春一号外で飼ってたんだけど、ある日私がどーしても一緒に寝たくて親に内緒で抱いて眠ったネ。そしたら思いの他寝苦しくて悪夢見たヨ。散々うなされて起きたら定春…カッチコッチになってたアル」
『「「(泣けばいいのか笑えばいいのかわかんないんだけど…)」」』
ぐすっと涙を流す神楽。何、どーすればいいの。
「あれから私、動物に触れるの自ら禁じたネ。力のコントロール下手な私じゃみんな不幸にしてしまう。でもこの定春なら私とでもつり合いがとれるかもしれない…。コレ神様のプレゼントアル、きっと…」
定春の頭をなでる神楽。たしかに、自分の好きなものを禁じるって辛いよね。
「あ、酢昆布きれてるの忘れてたネ。ちょっと買ってくるヨ。定春のことヨロシクアル」
「オイ、ちょっと まっ…」
銀時の言葉を無視して去っていく神楽。
『あたし日比野風香。よろしくね、定は…』
ガブッ
『アレ、真っ暗。何これ新しい愛情表げ……いだだだだ!!ちぎれる!大切な何かがちぎれる!!』
公園にはあたし達の悲鳴が響いた。
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