帰ってきた守護神
翌日。部活に行くと守護神≠ェ来ていた。
『ノヤ!』
「おっ 風香じゃねぇか!久しぶりだな!」
『あれ、その頬の手の跡どうしたの?』
「潔子さんに平手打ちされた!」
『…嬉しそうだね』
日向にレシーブを教えていたらしく、ノヤはボールを持っていた。
でもノヤは本能で動く系の奴だからなー…。きっと「サッと行ってスッとやってポンだよ」とか言って教えてんだろうなー…。
ノヤが戻って来てくれると、本当頼もしい。
あの小さい身体で存在感がすごく大きくて。ノヤが居ると安心感が違う、みたいな。
「あの…西谷さん。旭さん≠ト誰ですか?」
『!』
「不用意にその名を出すなっ」
「…烏野のエースだ。一応な」
「…おれ、エースになりたいんです…!」
「あ?」
「何年か前春高≠ナ烏野のエースの小さな巨人 ′ゥてから、絶対ああいう風になるって思って烏野来ました!」
「その身長でエース?」
「…………」
「いいなお前!だよな!カッコイイからやりてえんだよな!いいぞいいぞ。なれなれ、エースなれ!」
今のエースより断然頼もしいじゃねーか!とノヤは笑う。
「けどやっぱ憧れ≠ニ言えばエースかあ」
「ハイ!エースカッコイイデス!」
「エース≠チて響きがもうカッコイイもんな、ちくしょう。『エーススパイカー』っていう花形に比べたら、セッターとかリベロはパッと見地味だもんな」
ノヤはけどよ、と続ける。
「試合中、会場が一番ワッと盛上がるのは、どんなすげえスパイクよりもスーパーレシーブが出た時だぜ」
高さ勝負のバレーボールで、リベロは小さい選手が生き残る唯一のポジションなのかもしれない。けれどノヤは
159cmだからリベロをやってるワケじゃない。たとえ身長が2mあったってノヤはリベロをやると。以前にそう言っていた。
「スパイクが打てなくてもブロックができなくても、ボールが床に落ちさえしなければバレーボールは負けない。そんでそれが一番できるのは、リベロだ」
ノヤは日向に特技をきく。それに日向は自信無さげに囮、と呟く。どうやらエースやら守護神やら司令塔やらと比べてパッとしなくて嫌らしい。
「お前の囮のおかげで誰かのスパイクが決まるなら、お前のポジションだって重要さは変わんねえよ。『エース』とも『守護神』とも『司令塔』ともな」
「…ハイ」
「まあ俺お前の出てる試合見てねえしその囮≠ェショボかったら意味無えけどな!」
わはは!!と笑い日向の頭をバシバシ叩く。
そうだよね。
今の烏野には最強の囮≠ェ居て。今まで決まらなかったスパイクでも日向・飛雄のコンビが居ればきっと決まる様になって。
武ちゃんの言ってた化学変化≠ナ、烏野はもっと変われるような気がする。