脚の下を通ったコードを病院のコンセントに差し込む。
「……あ。これ、病院でやると怒られちゃうかな」
「え?」
 まぁ、大丈夫か。たしかこの時間に鉢合わせになる他の面会者はいなかったはずだ。その時間を選んだのは、自分だけど。看護師さん方は別として。
 刺さったことを確認すると、私は「なのは、」と声をかけた。なのははふっと目線を私にあわせた。
「これね、まだ、私が試験の前に探して買ったものなんだ」
「ふぇ?」
「こんなことしか、私にはなのはに出来ないって、思ったから」

 そして、パチン、と。部屋の電気を消して。
 カチン、とその球体のスイッチを。

「……え……」

 次の瞬間。
 天井に広がるのは、一面の光屑――人工の星屑。

「……これ、って」
「…………うん」
 ――ホームプラネタリウム。
 そう、私は告げ。次に言葉となって零れたのは、自分の思いだった。
「私、なのはが怪我したって聞いて。そのとき、私、もう一緒に飛べなくなっちゃうんじゃないか、ってこわくなった。なのはの夢は、空にあるのに」
 ベットの上で体を起こしたなのはの隣に、私は座った。
「私を助けてくれた、なのはに私も何か出来ないかって、思った。だから、何がなのはにとっていいのかわからないけど、探し回った」
「そ、そんなこと、考えなくてもいいよ、」
「いいんだ、これが自己満足でも」
 なのはが一瞬息を詰め、私は苦笑する。そして、言葉を続けた。
「何か、私だけにしか出来ないこと……今思い出せば、試験のこともあって切羽詰まってたからかもしれないけど……急に思い出したんだ。私がなのはに出会った、あの夜のこと」
 ――暗闇の中、おりる二つの影。街の明かりがあるのにその夜は、よく星が見えた気がする。
「あの夜がなかったらきっと、私はなのはと出会ってなかった。ユーノやはやて、アリサやすずか達とも会ってなかっただろうし、ハラオウンの名前も持たなかった。今、こうして話してもいなかったと思う」
 星屑が囲む中、交じえた記憶。
 その夜は、二人にとって、今の自分に繋がる大切な場所。
「だから……星空を、私はなのはにあげたかった」
 もちろん、今見ているものは星も夜空も、偽物。本当の無限にある星や無限に広がる夜空に比べてしまったら、ちっぽけなもの。
 でも。
「――私も、好きだよ。空は、青空も、夜空も、……星空も」
 その声に私は視線を偽りの星から外した。なのはは私の動きを知って知らずなのか、そのまま天井を見つめていた。
 その顔は、すごく優しい、笑顔で。
「だから、ね。フェイトちゃん」
 ――絶対、また一緒に飛ぼうよ。星空。
「――――うん」
 自然に頷いた私も、いつの間にか笑っていた。


 私は思っている。私は信頼している。
 私達は、思っている。私達は……信頼しあっている。
 だから、お互い、頑張れる。お互い、自分の夢に立ち向かえる。
 ――また、あの無限の空を一緒に、飛べる。

 だから、電球の天頂の星空でも。彼女は、私は――私達は、笑えていた。



I think, I trust…





〜あとがき〜
 本当に遅くなってしまいましたっ!ごめんなさい!ごめんなさいぃっ!(ジャンピング土下座←)
 今回は下駄さんからのリクエストでした(以下リクエスト内容です)
「どうも、あえてギリギリで投稿してみやす。
1,下駄(げた)
2,なのは、フェイト
3,A'sとStSの境で大怪我を負ったなのはを、フェイトが自分に何かしてあげられることはないかと右往左往して、精神的に励ますお話(百合ではなく純粋な友情で)
こんな感じで宜しいのでしょうか?」
 大丈夫です、ありがとうございます!
 実はこの事件モノ、一回書いて見たかったんですよね。“なのは”にとって鍵となる事件ですから。ただ、多くの他サイトさんでも書かれていましたので、どれだけ私らしさを出せたかが問題です……。
 本当はプレゼントを選ぶ描写も入れたかったのですが、『“HIDAMARI”Aroma』でもそんな内容を書いてしまったため(=計画性のなさ実証されました←)、フェイトさんも執務官の試験で落ちて気持ちが斜め下、の降りにしてみました。そのせいでなんか主人公なフェイトさんがカッコよくなくなった感が……。リクエストに少しそれなくなってしまいましたが、ご了承いただけるとうれしいです。
 タイトルはあえて「思う、信じる」にしてみました。
 謝らなければならないところ満天ですが、リクエストありがとうございました!!





(Back Text)





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