……が。落ちるのは、沈黙。……あれ。反応が、ない?
 私は慌てて、といってもまだ心拍数が激しくてゆっくりと目線を贈り主に向けた。
 贈り主は、目を丸くして箱の中身を見ていて――顔を真っ赤に、していた。
 いつも見る顔とは全く違っていて……なんか、少し。かわいい。
「ティア、ナ?」
 その林檎みたいな顔から出てきた声も、なんとなくトーンがいつもと違くて。
「これ――マグカップ、だよな?……しかも、ペアの、」
「っ!!」
 けど、言われてみると恥ずかしいものだった。私の顔も急速に熱を帯びる。
 そう。私の贈った中身というのは――ペアマグカップ。一つは緑色、もう一つはオレンジ色の。お揃い、という類の。
「でも、なんで急に?」
 彼の視線が私に向かう。その目は好奇の光があって、私は思いきり心臓が跳ね上がった気がした。
 でも、答えるしかないだろう。……私は、何でか知らないけど、小さく口を開いた。
「……前、ヴァイスさんの家に来たとき、部屋が少しさみしいな、って思って」
 私や彼みたいな仕事だと、よく出張が多く、中々家に帰ってこない。別に固定化された趣味もない彼の部屋は生活必需品を置いただけの、ある意味殺風景な空間だった。……今もあまり変わってないけど。
「それで、何か利用しやすくて色がはえるような家具とかないかなって、思って」
 だけど、本人の承諾無しのプレゼントだから、大きなものは贈れない。
 だから――、
「けど、さ」
 そこで遮る声。
「だったら、俺の分だけでいいだろ……」
 俯きがちの、赤い顔でこっちを見てくる。
 そんな目で言われて、私は言わないでいいと思っていたことを、ぽろりと零してしまった。
「――それに、」

 貴方とお揃いのものを作りたかったから――……。


* * *



 コポコポ……と、液体が沸騰しながら注がれる音が静かな室内に響く。
「……はいよ」
「……ありがとう、ございます」
 目の前に出された、自分が選んだカップに揺れる香ばしいかおり。
 私は、まだ傷のないオレンジ色に手を伸ばし、
 ――その瞬間。逆に手を取られ、ぐいとひかれて体制が崩れ、
「ぇ――」
 一瞬彼の顔が私の顔と零距離になって……その時。
「――っ!」
 感じたのは、唇への熱と、煎った豆の風味。
 呆然として止まっていると、離れた彼が背中を向けながら。
「……今度、行くか。家具屋。……んで、増やすか。緑とオレンジの、家具」
 緑のカップに口を付けながら、そんなあたたかなものが零された。

 ――その後。
 殺風景だった部屋には少しずつ、色味が添えられた。
 その色は、愛しき想いと想いの色達。



Caps Couple





〜あとがき〜
 今回は琉利さんからのリクエストでした。小説遅れて申し訳ないですっ。
「どうも、琉利です。
リクエスト内容の書き忘れすいませんでした。
内容ですが、恋人関係で 休日にヴァイスの部屋で二人でのんびりと過ごして、イチャイチャしてる…
みたいな感じでお願いします。」
 こちらこそもう一度リクエストを聞いてしまってすみませんっ。
 ヴァイティアで甘々はあまり書かないので(ユーなのばっかりなので)楽しかったです。でも逆に甘くなったかわからないです……。
 タイトルは語呂をよくしようとした結果。“s”をつけるかつけないかかなり悩んだ……←
 リクエストありがとうございました!遅くなってしまいすみません。これからもよろしくお願いします!





(Back Text)





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