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「ライラー!遊びにきたよー!」
「あ、クダリさんいらっしゃいませ。ノボリさんも、トウヤ君もどうぞ!」
ワタクシたちは促され、ライラ様のご自宅に入ります。
ここが、ライラ様のお部屋…と感動している場合ではございません。
一度は見ていますのでそこまでではないですが、初めてであるクダリははしゃぎっぱなしです。
…もう少し慎みを持てといつも言っているはずですが…まぁ、今は良いでしょう。
しかし、この間も思いましたが…ライラ様の部屋は少し殺風景な気が致します。
トウヤ様もそれは思われたようで、「…さっぱりした部屋だな」と仰られました。
「何もないんで、本当にお話するくらいしかないんですが…あ、これ良かったら。」
「あ、クッキーだ!」
「味は保証できないですが…おいしくできてるとは思います。」
「いっただっきまーす!」
「クダリ、まず席に着いてからお食べなさい!」
「こういうところは想像通りだよ、クダリさん。」
肩をすくめて、トウヤ様は席にお着きになられます。
ワタクシも同じく、勧められた席へと着きました。
ライラ様は…おや、ヒトモシ型のポットをお持ちですね。可愛らしゅうございます。
「お手伝いいたしますか?」
「大丈夫ですよ!お客様なんですから、どうぞ座っててください。」
「ライラ、これおいしい!自分で作ったの?」
「そうですよー、お菓子はまぁポケモン達に良く作るので…そこから作るようになりましたよ。」
「へぇ、ちょっと意外かも。」
「トウヤ君、それはどういう意味かな?」
大変可愛らしいライラ様にトウヤ様は何を仰るのか…。
しかし、今回ライラ様のお家にただ遊びにきたわけではございません。
先日起こってしまった過喚起症候群の原因、それをワタクシ達は聞こうとライラ様のご自宅に窺ったのですから。
クダリは相変わらずクッキーを食べて出された紅茶を飲んでいますが…まさか目的を忘れているのではないでしょうね。
目配せをし、トウヤ様が口を開きます。
「ねぇ、ライラ。」
「うん?何かな、トウヤ君。」
「まぁ何も俺達がこうしてただおしゃべりしにきた…とは思ってないでしょ?」
「…んー、まぁ。」
「勿論、聞きたいことは一つ。…水タイプが苦手なの?」
その言葉を聞いた瞬間、ライラ様のお体が硬直したように見えました。
触れられたくない部分もありましょう。少し口を噤んでいるようにも見えます。
しかし、この先ここライモンシティ、及びカナワタウンから出ないこともないのですから、誰かしら事情を知っておくのが良いのではないでしょうか…。
その旨を伝えれば、ライラ様は目を伏せ、少し考える姿勢をとられました。
クダリもいつの間にか真剣に話を聞いているようですね…。流石にライラ様のこととなれば真剣にもなりますね。
少し間を置いて、ライラ様はゆっくりと首を縦に振りました。
「やはり、そうでございましたか。」
「え?」
「俺達だって心配してたんだよ。何でだろうって思って話してたんだ。」
「そして、いつおかしくなったか…そこまで話は辿り着きまして、」
「トウヤがダイケンキになみのりを言ってからだね、っていう結論になったんだよ。」
「ですから、もしかしたらライラ様は水が苦手で…水タイプのポケモンが苦手なのではないか、と。」
「俺の隣で、カイリューに絞ったような声でまもる、出してたでしょ。それでもしかしたらって思ったんだよ。」
「…そっかぁ。」
そうおっしゃって、ライラ様は自嘲めいたお顔で、眉をお寄せになります。
…そのような顔をされるということは、やはり…
「ワタクシ達では…支えになる事ですら叶わないかもしれません。しかし、もしライラ様がお許しになるのであれば、お話いただけませんか?」
「そーだよ!ボクもライラの力になりたい!」
「関わったからには、きちんと知っておきたいんだよね。」
「…皆…」
ライラ様は今にも泣き出しそうなお顔でワタクシたちを見ました。
その表情は、とても痛々しくありました…。ワタクシも同調して苦しくなってまいります。
「…お話、致しますね。皆さんにはご心配、かけましたし。」
どうぞ、座ってください。そういわれ、改めてワタクシ達は座り直しました。
ライラ様の過去は、どのような形だったのでしょう。
そして、何故このイッシュ地方にいらしたのでしょう。
聞きたいことは尽きませんが、ひとまずワタクシたちはライラ様の語るお話に耳を傾けました。
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ノボリさん視点で。
この人は本当に何かこう、書きやすい。説明が。
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