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繋がった気持ち





それは、雲一つない晴れ渡った日のこと。

1つの事件が起こる。


「…いや、あの。何を言ってるの?」

「だから、木ノ瀬さんのことが好き、っス。」

「…、」


二の句は告げられなかった。

あのイケメンと呼ばれ、モデルという仕事をこなしバスケのセンスもピカイチな黄瀬君に。

…告白、を。

私にとっては事件も事件、大事件だ。

平々凡々と過ごしてきた私だ、目立つことはしていない。

ありがちなことだが、バスケ部のマネージャーとかも、やってない。

曲がり角でたまたまぶつかって知り合った、なんてこともない。

…なら、何故私はこの誰もいない中庭で、顔を真っ赤に染めた黄瀬君に、こ、告白をされているの?

いや、そりゃ私だって、遠巻きから見てたけど…バスケもかっこいい、モデル姿もかっこいい。

…何より、熱いハートを持ってて…負けた時の涙も、それは綺麗な涙だった、と心を打たれた覚えがある。

…同時に、傍にいて、励ましたり、慰めたり…とにかく、傍にいて何かしたくなったのも覚えている。

これが恋心かどうかなんて、一目瞭然だった。

…ここまでの、思考。多分1秒から3秒くらい。


「…あ、の。えっと…」

「あ、その、返事はここじゃなくてもいいっス。…1週間後、また、ここに…同じ時間に、来てほしい。」

「、あ、う、ん。…じゃ、あ。」

「…気を使っての返事はいらないっスから。…じゃあ、また。」

「へ、」


待って待って、何か誤解してるっぽい!

それはダメだ、私の気持ちも、ちゃんと知ってもらいたい!

私は思わず、黄瀬君の手をひっぱった。


「っ!…木ノ瀬…さん?」

「…、あの、ね。名前で、いい。」

「…!ほんと、っスか?」

「う、うん。だから、その…え、と。黄瀬君の事、ちゃんと、す、好き!…です。」


私は言えた、やっと言えたという思いでいっぱいだった。

顔が見れない。私の顔は今、多分凄く真っ赤だ。


「…、えと。來羅っち。來羅っち、でもいい?」

「う、ん。」

「…へへっ、嬉しいもんスねー!気持ちが伝わって叶うのって!」

「わた、しも…なんか、夢みたい。」

「夢じゃないっス!夢になんかしたくないっス!」


あまりに必死に言うものだから、私は思わず吹いてしまった。

それを見た黄瀬君は、頬を少しだけ膨らませて。


「…でも、良かった。多分面識、ほとんどないから…正直、ひやひやしてたんスよ。」

「…やっぱり?でも、何で?」

「それは…秘密っス!」

「えー!?」

「まぁ、後で話すっス!…今は…ひとまず、帰ろ?」


黄瀬君は、私に右手を差し出す。

大事な、右手。


「…、うん。」


そうして絡まった手をぎゅっと握って、私たちは帰路についた。


…ある晴れ渡った日。

私に、事件が起きた。

そう、両想いになれたという、大事件。


End


…いや、たまにはこういう純粋なものを、だね。

というわけで書いてる私がこっぱずかしいくらい。

本当はそのまま連載にしようかなとか考えましたが…ドロっとしそうなのでやめました←

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