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狂おしいほどに





「え?何、もう一回言ってくれる、黄瀬?」

「だ、だから…今日は、どうしても外せない、仕事があるん、ス…」

「うんそれはいいよ仕事だもん。なんでその後も空いてないの?」

「…それは…」

「…いえないならそれでいいわよ。…もういいわ、じゃ、また学校で。」

「來羅っち!!」


私は黄瀬の話を聞かず、マジバを出る。そして走る。

…別に、明日は普通に会うし、それでも良いと思ってる。

けど、ちょっとあげたかったものがあった。というか、夜は会う約束もしてた。

でもこれが黄瀬涼太。仕事と部活と一生懸命な彼が好きだから。

…我慢できない、私が悪い。


「…潮時、かなー。」


散々我儘も言ってしまった。

普通なら縁切ってもおかしくない。

…私、こんなに我儘いう奴だったっけなー。

あんなテンプレ、言うつもりなかったのに。


「…でも、嫌われておしまいってのもなぁ。学校できまずいったら…。」


まぁそもそも、同じ学校の学生同士ってのはその覚悟がないとダメだけど。

…そんな覚悟は微塵も持ってないから、明日からどうしようかなぁ。


「…こういう噂は回るの早いんだよねー…」

「そうは、させないッスけどね。」

「…、黄瀬…?」

「もう、いきなり出てった上に走るからびっくりしたッスよ…。意外と足速いんスね。」


なんで、走ってきたんだろう…。

黄瀬、もういいじゃないの。私はめんどくさい女なんだし、捨てちゃえばいいんだよ。


「…もう、いいじゃん…私めんどくさいでしょ。」

「まぁ、確かにめんどくさいかもしれないッスね。」

「でしょ?言うとは思わなかったけど、私と仕事、どっちが大事って言ってるようなものだし。

 …ね、黄瀬。」

「でも、俺は來羅っちを手放さないよ?」

「…、」


何故、そこまでして。

いや私も黄瀬と別れたいわけじゃないん、だけど。


「來羅っちがひどいっていうなら、俺の方がひどいことしてるッスよ。」

「…なんで?だって、」

「わがまま言ってくれて、俺は嬉しいんス。…でも、いつも聞いてあげられない。

 …そんな來羅を縛ってるのは、俺なんだよなって、ちょっと…嬉しかったり、する。」

「…?」

「逆に、俺が謝んなきゃならないッス。…俺は來羅が思っている以上に、良い人間じゃないッスよ。」

「良いも悪いも…」

「だって、來羅は俺から離れらんないでしょ?」


にこっと笑って、黄瀬は私の方をじっと見る。

その顔は、思ったよりも…すっきりした顔、というか…。

…離れたくは、ないけれど。


「…き、せ…?」

「ね。俺のこと、好き?」

「…、うん。好き。」

「良かった。俺も來羅のこと大好きッス!…これからも、俺のそばにいてくれる?」

「ん。…何か色々わかんないけど…黄瀬のことは、好き。そばにいたいよ。」


そう言うと、黄瀬はぎゅうっと私を抱きしめる。

…やっぱり、私はこの人が好き。…さっきの黄瀬は、よくわかんないけど。
















「俺はずるいんスよ、來羅。

 來羅は俺が別れを告げなきゃ、俺のことを一生好きでいるって分かってるんだから。

 …でもちゃんと、大好きッスよ?大好きだからこそ、やっぱり色々したいんス。」

End


暗め。

黄瀬は好きというより愛してて、何でも言うことを聞いてあげたくなるんですが。

それよりも、こういうことしたら離れるのもわかってるけどやっぱり手元に戻ってくることは分かってるんです。

ちょっとした黄瀬のいじわる心。

これを掘り返すと、主人公の周りに常に嫉妬してるんですこの黄瀬君。

怖いですねー(棒)

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