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思い出は褪せない





「あ、來羅っちー!」

「お疲れ様、黄瀬君。」


休憩中なので、選手の皆にドリンクを渡す。

勿論、それは黄瀬君も例外ではない。…非難の声がこようとも。


「…なんか、ゴメン。」

「いーよ、もう慣れたし。別に特別扱いしてないんだけどねー。」

「うーん、でもやっぱり、ゴメン。」

「いやそんなに謝られても。さて次は…」

「おう、いつもご苦労だな來羅。」

「あ、笠松先輩。すいません取りに来させちゃって。」

「いや大丈夫だ。大体取りに行かせんのが普通だしな。お前も待ってたっていいんだぜ?」

「うーん、それはさすがに。」


マネージャーが動かない部活動ってどうなんですか先輩。

と、そこまで喋っていると今度は黄瀬君が頭にもたれかかる。

…重い。


「ちょっとー俺抜きで話してないでくださいッスよー」

「いや入ってこれなかっただけでしょうに。さて後3分ー。」

「來羅っち〜もっと癒されたいッスー!」

「癒しよりもカッコいい姿を見せてくださいな。」

「っ!!」


その言葉を聞いて、黄瀬君は走っていった。…休憩、あと2分なんだけど。

と思っていたら、笠松先輩がため息をついた。


「…乗せてくれるのはありがたいけどよ。」

「ごめんなさい、言葉を間違えましたかね。」

「いやいい。やる気でんならいいんだけど…な。まぁいい、そろそろ休憩終了か?」

「あ、はい。丁度終わりです。休憩終了です!!」


私の号令に皆が返事をして、今度は笠松先輩の指示が飛ぶ。

…あれ、黄瀬君がいない?


「來羅っち!」

「う、わ!?」


あろうことか私の後ろから目隠しをしてきた黄瀬君。

休憩終了だよ、と伝えれば、「んじゃ今から1分間、俺だけを見てて下さいッス!」と言って、リングに駆けていく。

…後でしばかれるんだろうなぁ、黄瀬君。

案の定、笠松先輩が怒号を飛ばしてるよ。


「あー、來羅っち!俺だけを見ててくださいってばー!!」

「あ、ごめん黄瀬君。」

「バカ野郎!黄瀬もさっさと戻れ!!」

「んじゃ、1分っスよ!1分っスからね!!」

「わかってるって。」

「來羅も煽んじゃねぇよ!」

「あ、すいませんつい。」


その言葉を区切りに、体育館は静かになる。

なぜか。それは、黄瀬君の動きだった。


「…、何、これ。」


それはもはやバスケではなく、1つの流麗なダンスのようだった。

華麗なドリブル、切り返し、小技、そして、ダンクシュート。

まるで時が止まったかのように、体育館は静まり返っていた。


「…す、ごい。」

「來羅っち、どうだったッスか?」

「…うん、なんていうか…その、うまく言葉に表せれないけど…、すご、かった。うん。かっこよかったよ。」

「っし!よかったーかっこよかったって言われて!先輩すんませんっしたー!」

「本当だよこのバカ野郎!!しばくぞ!!」

「ってー!もうしばいてるっス先輩!!」

















「…なんて、光景を思い出すなぁ。今でも忘れられないよ、あの姿。」

「あー…そんなこともあったッスね…。」

「あ、照れてる。」

「Σそりゃそっスよ!あの時はまだ付き合えてなかったし…一生懸命カッコいい姿見せて好きになってもらおうって思ってた…あ。」

「あぁ、そうだったんだ?」

「うわぁぁ恥ずかしいっス忘れてくださいっス…!!」

「無理。…でも、あの時の涼太、かっこよかったよ。今でも、こうして思い出すくらいに。」


だから、ムダじゃなかったんじゃない?

そういえば、涼太は顔を真っ赤にしながら、私をぎゅうっと抱きしめる。


「あの日から浮かぶのはいつも決まって

 涼太が、かっこよくバスケしてる姿、なんだよね。」

「…來羅っち…」

「ほら、もう來羅っち、なんて呼ばないでよ。…呼び捨て、してくれないと。」

「…そう、っスね。…來羅。」

「ん。んじゃ、明日の式にはしっかりした格好で、ね?」

「勿論!」


にかっと笑って、涼太は私にキスを送ってくれた。

昔は考えられなかったけれど、今なら、スッといえるよ。

大好き。…愛してるよ、涼太!


End


初黒バスで初黄瀬で結婚式前とか。

相当頭がやられているに違いない←

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