眠い時は、運んでください。
無防備なお前は、本当に可愛いな。
「眠い…。」
「…大丈夫か?」
「んー…眠い。」
「熱は…ないな。どうしたんだ?」
「わかんない…でも、眠い…。」
「うーん…でも、もう放課後だし…寮に帰ったほうがいいんじゃないか?」
そういっても、彼女、暦は話を聞いてくれそうにない。
だけど、結局彼女の手を握りながらも、眠たそうな顔が可愛くて、連れて行けそうにない。
…俺、こいつには特別、甘いのかな。なんて思ってみる。
「なら、錫也が運んでって…うー、ねむい。」
「運んでってって…はぁ。知らないぞ?」
そんなこと言われたら…。
俺の若干、邪な考えをよそに、彼女はついに寝息を立てて寝てしまう。
…ったく、しょうがない奴。
幼馴染であると共に、恋人である、ということを暦は忘れてるんじゃないかと疑いたくなる。
まぁ、運べって言われたから、素直に運ぶことにする。
勿論、普段は嫌がるお姫様抱っこで。
「…ん…」
「…よく寝てるな…。」
そっと頭を一撫でして、起こさないようにゆっくりと暦を持ち上げる。
相変わらず、すやすやと眠っている。
…たまに、普段もこうして、無防備に寝てるんじゃないかと心配になるんだよな。
そんな風に無防備だと…キスを、したくなる。
眠る暦に、触れるだけのキスをしてみる。
と、唇から離れた瞬間。
「見せ付けてくれるじゃねーか。」
「哉太。いたのか。」
「いたっつーの!…無防備に寝てやがんなぁ、こいつ。」
「触るなよ?」
「はいはい、分かってるっつの。相変わらずの独占病だよなぁ。」
俺はそんなにこいつを独占したがってるのだろうか。
聞いてみれば、それが独占欲じゃなかったらなんだってんだ、とややぶっきらぼうに返ってきた。
そして、哉太は先に帰る、と言ってドアを閉めた。(…開けといてくれてもいいのにな。)
「…まぁ、いっか。」
こいつを独占…というか、一人占めしたいのは本当だし。
暦を抱えなおし、お姫様抱っこをしながら、なるべくゆっくり寮へと帰った。
その後、クラスの皆にはやしたてられる俺達を見て笑う3人を(月子を除き)こらしめたのは、また別の話。
「錫也…なんなんだよこの仕打ちは。」
「錫也ひどいよ…」
「まぁ、元は哉太だから羊はまだ軽いだろ。…哉太はもう少し反省しなさい。」
「何でオレだけ!」
「いいふらしたの、どうせ哉太だろ?昨日のを見てたのは哉太だけだからな。」
「だからって何でずっと正座なんだよ!…もう、ギブ…」
「させないぞ?…あぁ、羊はもういいよ。」
「…Oui…」
「オレは!?」
「哉太はお昼休み中ずっと。ご飯はそのまま食べること。」
「…ひでぇ…」
「自業自得だよ、哉太。」
end.
あとがき
まぁこの会話をハラハラと見守る主人公と月子さんということで。
拍手用にしようとおもったけどめんどいのでこのままSSにしてみたり。
PCサイトより移行。
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