迷路
目の前にいるのに。2人きりなのに。
言い出せない。言えない。
迷う心を、どうすればいいかな?
「おっセリアちゃーん!」
「ちゃん付けで呼ばないでよ。」
「んぉ?何、怒ってんだよ。」
「…別に…。」
「何か今日のお前、クラウドっぽいなー。どうしたんだ?イラついてるみたいだし。」
「…何にも。いつも通りよ、私は。」
イライラ、する。
それは、認める。
だけど、原因が分かっている以上、こいつ…ザックスに教えるわけにはいかない。
原因は、他でもない、彼なのだから。
だけど、そんな日に限ってザックスと2人きりで野外訓練。
…クラウドがいれば、まだ何とかなったと思う。
ザックスは、クラウドが好きみたいだし。…もちろん、友達として、よ?
「そうかぁ?何か、イラついてる、よなぁセリア。」
「…強いて言うなら、何で今日が野外訓練だったのかと恨んでるわね。」
「あぁなるほど。確かに2日…いや3日?連続だもんなー。そりゃイラつくわな。」
「…そう、ね。ザックスはイラつかないの?」
「俺?べっつにー?相手はモンスターだし、セリアと2人きりだし!」
「…。」
ザックスは、無類の女好き、らしい。
あくまで噂話だけど、あちこちに流れているから嘘とは言えない。
今も、彼女がいるのかどうか。
真相は、ザックス以外、いやザックスと見知らぬ彼女?以外、分からないけれど。
「んー…なぁ、セリア。」
「何。」
「おぉ怖っ。…じゃなくて、お前さ、好きな奴とかっていねーの?」
ドクンッ。
一瞬だけ、私と同じ染められた蒼の瞳で、見透かされたと、思った。
「…。別に…。」
「うーそ、だな。すぐ、黙る。で、別にって言う。お前が嘘をつく時は、いつもそうなる。
…で、すぐに俯く。それ、癖だな。セリアの。」
「……。」
何だと、言うんだ。
そうだ、私はザックスが好きだ。
…言えるわけ、ないじゃない
…嘘だと見透かせるなら、私の心の内も、読めたのかと柄にもなく焦ってしまった。
「ん?つーことは、いるって事!?」
「…知らない。…ザックス。」
「何だ?」
「油断大敵よ。前後左右、常に警戒しときなさいよ。」
私の武器は細身の剣と支給された銃。
さすがに、男のようにバスターソードは持てないから。
「…悪ぃ;」
「そう思うなら…」
ザンッと私の後ろにいたモンスターを斬る。
既に、周りはモンスターだらけだ。
「これらを、一人で一掃してくれない?」
「…いくらなんでも一人は無理だって;」
「それでも1stなの?」
「や、セリアだって…」
「…さっきの借りは?」
「…少しくらい手伝ってくれよ。」
「仕方ないわねぇ…いいわよ。少しだけね。」
「サンキュ!」
…あぁ、やっぱりザックスが、好きだ。
この、眩しい笑顔が…好き。
「セリア!!」
「…え?」
はっとして前を向けば、目の前には3体のモンスター。
…まずい。
「チッ」
一振りして2体のモンスターが倒れる。
1体は…私に飛び掛ってきた。
「セリアっしゃがめ!」
「っ!!」
ザックスが叫び、私は素直にしゃがんだ。
すると、ザックスの持つバスターソードが私の頭を掠めた。
…そして、目の前にいたモンスターは真っ二つに、なった。
「あと、俺の後ろは任せたぜ、セリア!」
「了解。」
思わず、思考に浸ってしまった。
…次は、何も考えない。
私とザックスは、その後一言も喋らずにモンスターをなぎ倒した。
「うへーっ疲れた!」
「…そうね。これだけいるとは思わなかったわ…。」
周りを見れば、夥しい程のモンスターの死骸。
何十匹、倒したんだろう…。
「さて、一息ついたところで。」
「…何。」
「さっきの、話の続き。…いるんだろ?」
「だから、知らない。」
「自分の気持ちが分からねぇわけねぇだろ。もう16だろ?」
「…17。」
「あぁ悪い。…でも、分からねぇんじゃねーだろ?」
「(…話、そらせられるかなぁ…。)」
はっきり言って、この場で告白なんてしたくもない。
…一応、私も乙女であるわけで。
こんなに血みどろな場所で、告白できたら凄い、と思う。
「…話、そらそうとすんなよ?俺、真面目に聞いてんだぜ?」
(…抜け目ない。)…そうね、いるよ。これでいい?」
「誰?」
「そこまで言わせる権利、あるの?」
「ない。けど、俺は知りたい。…俺、セリアの事、好きだから。」
「…は…?」
「だから、俺は、セリアの事、好きだから。」
「いや、繰り返さなくていいから。」
「なら、セリアの返事は?」
ドクン。と心臓が跳ね上がる。
目がそらせない。
気がつけば顔の左右には、ザックスの腕。
逃げられない。体と体の距離は腕が曲げられているから近い。
身長差は大体、20cm。いや25cmくらい。
力の差も歴然。男の方が…ザックスの方が、強いに決まってる。(いくら私もソルジャー1stでも女、だからね)
…蒼の瞳が、行動の全てを支配しているようにも感じた。
「わ、私は…」
「…あー…悪い!」
「えっ?」
「こんなやり方、卑怯だよな。返事は、いつでもいい。心に決めたら、返事、してくれ。」
心は、決まってるのに。
声が、出せない。
ザックスが離れようとしたからなのか、腕が反射的にザックスの服を掴む。
私の行動に驚いたのか、ザックスの目は丸くなった。
「…セリア?」
「…好き。」
「え?」
「…だから、ザックスのこと、その…好き。」
今更、場所なんて関係ない。
今、伝えなければ、一生、言えない気がして。
「…マジ、だよな?」
「うん。…マジじゃなかったら、言わない。」
「…セリア!!」
「きゃっ!?」
腕を掴まれ、ぐいっと引っ張られる。
その反動で前のめりになり、目の前にはザックスの胸。
逃げられないようになのか、ギュッと強く抱きしめられている。
…。血生臭い…。
「悪ぃな、こんな所で。」
「…本当にね。」
「だけどさ、2人きりになる事少ねぇしさ…。」
「あぁ…なるほど。」
「…な、セリア。」
「ん?」
愛してる。
そう、ザックスが耳元で囁いた。
それだけで、私は頬の筋肉が緩んだ。
もう、迷うこともなくなった。
迷路から、抜け出せた。
そう、君がいるからもう大丈夫。
END
あとがき
初ザックス。
え、なにこれ。どうしたんでしょう。
ザックス?いやこれ偽者ですよね。
何だか書きやすいようで書きにくいな…(汗)
くっ次こそはっ…!!
PCサイトより移行。やっぱり初書きは暗いなw
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