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プレゼント





クラウドの誕生日。

何よりも、印象深い誕生日に、してあげたいな…。


プレゼント


「こんなもんかな…。クラウド、喜んでくれるといいけど…。」


ポツ、と誰に言うわけではないけれど呟くセリア。

セリアが作っているのは、ケーキだ。

あまり甘いものが好きではないクラウドにも食べれるようにと思い、甘さは控えめ。

苦労はしたけど、他ならぬ…愛するクラウドの為に。

少し家庭科関係は苦手だったセリアだが、何とか完成させることが出来た。

…セリアの背後にある、失敗の残骸を見なければ完璧だろうが。


「…この失敗作どうしようかなぁ。うーん…折角甘いし…誰かに分けようかな。」

「なら、アタシに頂戴よそれ!」

「ゆ、ユフィ!?どこから…」

「ちゃんと玄関から!鍵、かかってなかったよ?」

「げっ…そ、そっか。」

「で!このケーキ、くれるの?くれないのー?」

「んー…まぁ、まずくはないと思うからあげるよ。ただ甘いかも。」

「平気平気!アタシ甘いの大好きだから♪んじゃもらってくよー!」

「はいはい。」


苦笑いしつつも、ユフィに失敗(甘い)ケーキを手渡す。

ケーキ等の甘いものが大好物なユフィは、満足そうな笑みを浮かべて部屋を出て行った。


「…さぁて、これからラッピングだね。気を引き締めてやらなくちゃ!」


ケーキは箱に入れてやればあまり問題はない。

だが、もうひとつのプレゼントはやはり手の凝ったものにしたい。

折角、恋人同士なのだから。


そんなことは露知らずなクラウドは現在頼まれたものを配達中。

相変わらず営業スマイルと言うものがない。


「…お届け物だ。バレット。」

「おぅ、ご苦労さん!悪かったな、使って。」

「別に。金は貰っているからな。」

「…本当にお前は報酬次第って感じだな。昔から変わらねぇ…」

「当たり前だ。金がなきゃ生活も出来ないだろう?」

「ま、事実だがな。…それよりも、早く帰ってやれよ?」

「セリアの事を言っているのか?」

「あぁ。…あいつは、今日は特に気合を入れて飯とか作るんじゃねぇか?」

「…何でだ?」

「…お前、気付いてないのかよ!?あーだったら俺もこれは渡さないでおくか。」

「…………は?」

「クラウド…お前気付いてないのかよ。今日誕生日だろ?」


言われて、クラウドにしては珍しく目を見開く。

今日が、誕生日…?

少し間をおいて、あぁそうかとクラウドは納得した。

だから、早く帰ってやれとバレットが言ったのだと。


「…ま、何にしてもだ。ほらよ。お前が前に言ってた壊れた部品のとこのやつが入ってるぜ。」

「…ありがとう、バレット。」

「礼はいいから、早く帰ってやれって。多分やかましい奴もいるだろうが、セリアはずっと待ってるんじゃねぇか?」

「…あぁ、そうだな。そうするよ。」


それじゃ、と言ってクラウドは足早にフェンリルに跨り、疾走する。

バレットは一人、「…アホだなあいつ。」と呟いた。





「…出来たっ!」


やっとの思いで作り上げたラッピング。

少しよれてはいるが、それを気にしなければいい仕上がりになった。

あとは、主役であるクラウドがくれば完璧だ。


「…早く、帰ってこないかな。クラウド。」

「セリア、クラウドは?」

「あ、ティファ。まだみたいだよ。」

「…あ、それ、クラウドに?」

「うん。…邪魔にならないものにしたから、大丈夫だと思うけど…。付けてくれるかな?」

「大丈夫よ!クラウドならセリアからのプレゼントなら何でも喜ぶと思うよ。」

「そ…かな。うん、まぁとりあえずあげてみるね!」


嬉々と話すセリアにティファは多少苦笑いを見せる。

過去、好きだったクラウドを取られたといえば聞こえが悪いが実際そんなようなもの。

だけど今は、心からセリアの幸せを願っているからいえるようなものだ。

最も、今はティファも幸せの真っ只中なのだが。


「そういえば、ティファってルードに何あげたの?」

「ん?手料理を作ってあげたよ。意外と喜んでたから…」

「へぇ〜、ルードってば幸せ物だねぇ。ティファも幸せ?」

「…うん。」


照れくさそうに答えるティファ。

それを見てか、セリアはそれ以上の詮索はやめた。

彼女は、極端に恥ずかしがり屋だから。

以前、冗談半分でユフィがティファをルード関係で詮索したら右ストレートが見事に入った。

本人はそのつもりではなかったと言っているのできっと照れ隠しだったのだろう。

その後のユフィは…まぁ、想像にお任せするが。

とにかく、あのカダージュの事件以来ティファとルードは清い?お付き合いをしているのだ。


そんな話をしていると、奥からドアの開く音がする。

きっと、クラウドだ。


「あ、誰かが帰ってきたのかな?」

「クラウドだよ、きっと!」

「じゃあセリアはクラッカーの用意、よろしくね。」

「はーい!」


セリアはティファに言われ、クラッカーの用意をする。

どうせ祝うならこれくらいしないと、とはティファの意見だった。

その言葉にセリアは苦笑いしながらも、楽しそうだと思って了承した。

楽しそう、ただそれだけの理由で。


「クラウド、お帰り。」

「あぁ、ただいま。…セリアは?」

「相変わらずの溺愛っぷりねぇ、クラウド?」

「いや、それは……。」

「ふふ、まぁいいわ。じゃあ早速奥に来て!」

「あぁ、分かった。」


言われて、クラウドはティファの後に続く。

そしてリビングに着いて、ティファが「ちょっと待ってて」と言ってリビングの中に入っていった。

何で待たなきゃならないんだ?とクラウドは疑問に思いつつも、待つ。

リビングの中は暗いから、何が置いてあるのかが全く分からない。

正直誕生日なんてどうでもいいと思っていたが、こうまでして祝ってくれるのかと思うとあってもいいとクラウドは思った。


「(…だけど、セリアはどこに行ったんだ?リビングの中か?)」


一番気がかり、というと御幣かもしれないが、セリアの事が気になるクラウド。

まぁ姿を見ていないので不安になるのは仕方のないことだ。

今朝も、朝早くの出立だった為に顔すら見ていない。


「お待たせ!入っていいよークラウド!」

「あぁ。」


ティファの声に促され、リビングに入るクラウド。

開けた瞬間、パパパンッ!と音が鳴りクラッカーの中にある物が一斉にクラウドに向かって発射される。

一瞬ビックリしたが、その前に見えるのはセリア。

正しくは向かって正面にいるのがセリアになる。


「お誕生日おめでとう、クラウド!」

「今年は俺様も祝ってやんぜぇ!」

「もう、シドってばまだお酒飲まないでって言ったのに!」

「いーじゃねぇか!なぁ、クラウド!」

「………。クラウド、シドは気にするな。とりあえず席につけ。」


この狭いリビングに、クラウド以外にはセリア、ティファ、シド、ヴィンセント、マリン、デンゼルの計7人が勢揃い。

窮屈だが、クラウドにとってはセリアがいれば何でもいいらしい。

席も計ったのか、セリアの隣になっている。

その気遣いに、(多分ティファがそうしたと思うので)ティファに感謝した。

それにしても、お祭りごとのようなものには参加するユフィがいないのは意外だとクラウドは思った。

…ユフィは、単にティファの鉄拳がまだ怖いだけで来ないのだが。


「クラウド、席に着いて!」

「あぁ。」

「それじゃあ、改めまして!」

「「「誕生日、おめでとうクラウド!!」」」

「……ありがとう。」


正直、クラウドにとってはあまりこういう歓迎の仕方は慣れてない。

というか、コレが初めてだ。

多分それも踏まえてなのか…どうなのか。

はしゃぐ奴が大勢だった。

あの、ヴィンセントまでが楽しそうにシドと一緒に酒を飲んでいる。

あの、ヴィンセントが。

端から見れば、本当に合わない。というか、想像も出来ない。

それに苦笑いしつつも、クラウドは辺りを見回す。


「(…?セリアが、いない?)」

「あ、クラウド!」

「ティファ。セリアは?」

「今言おうと思ってたの。セリア、部屋で待ってるって!」

「そうか。」


一言だけ礼をいい、クラウドはセリアの部屋へと向かう。

愛しのセリア。狂おしいほどに愛しているセリア。

別に数ヶ月も会っていないわけではないが、やはり恋人同士。

することは済ませている間柄なので、無性に会いたくなるなんていうのはざらではない。


「セリア?」

「あ、クラウド。入ってきていいよ!」


了承を得て、中に入る。

相変わらず質素な部屋で、女の子らしいものはあまりない。

だが、これがセリアらしいよな、と頭の中で思うクラウド。


「…どうしたんだ?」

「えっとね、コレを渡したくて。」

「これは…」

「うん。まずは箱の方ね。これは中身はケーキなんだけど…甘さ、控えてみた。あんまり甘いの…好きじゃないんだよね?」

「まぁ、甘すぎるっていうのは好きじゃないが。…俺の為に、作ってくれたのか。」

「えへへ、まぁ失敗ばっかりして大変だったけどね。」


感動。

クラウドの脳内はその一言だ。

今まで料理を作るところなんて見たことがないクラウドにとっては、この上ない感動だ。


「あ、あとね。これ…」

「これは…?開けてもいいか?」

「うん!」


少しよれたラッピングを見てすぐにセリアがやったのだと感じる。

手先が不器用だからといつも言っていたセリアが、自分の為にここまでしてくれる。

それだけで、クラウドの心は満たされた。

なるべく丁寧に、包装を開けていく。


「…ネックレス?」

「そう。なるべくシンプルなもので、クラウドが乗ってるフェンリルみたいなカッコいいのがいいかなぁ、って思って。

 あんまり邪魔になるのだと戦闘がし辛いし…どうかな?」

「あぁ、邪魔になんてならない。むしろいい感じだ。」

「良かった!」


満面の笑みでクラウドに微笑むセリア。

それに対してもクラウドは嬉しくなり、折角だからとそのネックレスを首につける。

普段はあまり見えないが、少し襟の部分を開ければ見える位。

あまり見せびらかしたりというのもあれだと思ったクラウドは、少しだけチャックを閉める。


「…セリア、ありがとう。」

「どういたしまして!本当に良かった…クラウドが喜んでくれて。」

「セリアがくれるものなら、俺は嬉しいよ。」


あ、と少しセリアは驚く。

ティファが言った事と、全く一緒だ。

『セリアからのプレゼントなら何でも喜ぶ』と言っていたのを思い出して、少し笑うセリア。

クラウドには当然分かるはずもなく、少し怪訝そうな顔でセリアを見た。


「セリア?何笑って…」

「あ、ごめんごめん何でもないよ。あ、あとはね…これは、まぁおまけなんだけど。」

「おまけ?」


少し眉を寄せるクラウドに、「目を瞑ってて!」とセリアは言った。

ワケが分からないが、愛するセリアが言うのだからクラウドは大人しく目を瞑る。

何があるのだろう、と少し待つと、唇に柔らかな感触。

思わず目を開けば、目の前にはセリアの顔があった。

それほど長くしようとは思っていなかったのか、セリアはすぐにクラウドの方から離れる。

それを許さず、セリアの後頭部を掴み、クラウドはもう一度セリアを引き寄せてキスをした。

長く、深い、愛しさを込めたキスを。


「んっ…んぅ…」


キスは止まらない。

息苦しいと言うかのように腕を叩かれるが、止めない。

ここまでしてくれた感動から、離したくはないという感情に駆られる。

貪る様にキスをし続けた後、本当に苦しそうなのでクラウドは一旦唇を離した。


「はっ…も、長いよ…」

「でも、嫌じゃないだろ?」

「う…そりゃまぁそうだけど…。」

「…セリア。」

「ん?」


――――本当に、ありがとう。

そう呟いて、ふんわりと笑うセリアを見てクラウドはもう一度、深く深く唇を重ねた。


Happy Birthday,Cloud…


End.

あとがき


クラウド誕生日おめでとうー!
というわけで今日気付いて急いで書いたのであぁもう長い長い。
というか糖度甘いのかこれ。うーん…。
ちなみに設定はカダージュ事件(というかセフィロス事件ってーかジェノバ事件?)よりもさらに2年くらい後の話になります。
だからティファにはルードとくっついてもらいました。(俺クラティ派だけどな!)
ヒロインは昔から戦ってきた仲間でカダージュ事件後にクラに告白され付き合っているっていう感じです。
…。まぁ、本当におめでとうクラウドー!!

PCサイトより移行。当時はこんなに誕生日祝ってたんだなぁ。

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