泣きたければ、泣けば?
泣きたかったら、泣けばいいじゃない。
今更、何を迷う?
…たまには、表情、崩してよ…クラウド。
「…エアリス…。」
事が起こったのは、さっき。
エアリスは、メテオを止められるのは自分だけ、と言って1人でどこかへいってしまった。
…そう、忘らるる都へ。
眠った森をルナ・ハープで起こし、その都へ行けば。
クラウドが感じるといった方向へ行けば。
そこに、エアリスはいて。
パーティーを組んでいた私、クラウド、ティファはひどく安心した。
あぁ、ここにいたんだ、と。
クラウドも笑顔を見せたと思った。
だけど、違った。
クラウドの瞳は―――無を、映していた。
まるで、人形のような瞳で、エアリスを見ていた。
そして…殺そうと、した。
あわてて止めて、クラウドは何とか自我を取り戻して。
そこまでは、良かった。
セフィロスが、現れるまでは。
目の前で起こった現実。
一瞬、時が止まったとさえ思った。
そこだけ、時が…止まったと、思った。
セフィロスの刀が、エアリスの胸に、刺さって、いた。
虚無。絶望。憎悪。憤怒。
感情は留まるところを知らない。
後から駆けつけてきた仲間達も、皆悲しい顔をしていた。
エアリスは、もういない。
その事実が、受け入れられなかった。
「なんで…どうして…。」
涙は一度出てしまえば止まらない。
悲しみは簡単には消えない。
私はとめどなく流れる涙をとめられなかった。
それは、ティファも、ユフィも…皆、同じ。
ただ、クラウドだけは…涙を、流さなかった。
最後の別れを惜しんで、皆は頬を撫でたり、目の前で立ったり…。
でも、涙だけは、流れていた。
クラウドは…一番目の前で、死を、見たはずなのに。
ただ眉を寄せて、苦しそうにしている。
「…クラウド。」
「何だ。」
「…泣きたければ、泣けばいいじゃない。」
「…無理だ。」
「そんなに苦しい顔してるなら、泣けばいいんだよ。我慢せずに。」
「…流せないんだ。やっぱり、俺は…」
「人形?じゃあ今までどうしてそんなに苦しい顔をしてたのよ。」
「それは…」
「悲しいからでしょ?セフィロスに殺されたのが、悔しい…いや、憎悪。憤怒。そんな感情があったからでしょ?」
「…。」
「…ねぇ、クラウド。泣いても、いいんだよ?」
顔を覗き込めば、クラウドは相変わらず眉を寄せたままで。
でも、その蒼い瞳からはうっすらと涙が、零れそうになっていた。
「…クラウド?」
いつの間にか、顔の横には腕。
反対にも、腕。
気がつけば、クラウドの抱きしめられていた。
「俺はっ…目の前にいたのにっ…!!助け、られなかった…!!」
「…うん。悔しい、よね。」
「俺は…俺はっ…!!」
「…クラウド、自分を責めないで。…一人で全て、背負わないで。」
「っ…く…ぅ…セリアっ…」
「クラウド…」
何かが事切れたように、クラウドは泣き出した。
大きい、だけど小さい子供のように。
「…セリア。」
「ティファ…うん、ごめん。役、取っちゃって。」
「それはいいのよ。クラウド…一番、辛かったしね。誰よりも、セリアが傍にいた方がいいと思う。」
「…?ティファ、それは…」
「クラウドは…ううん。それは本人から聞いた方がいいと思う。」
「…分かった。」
ティファも、辛そうな顔をしながらクラウドを見た。
今まで、ここまで泣くような人ではなかったから。
今、ここで誰かにしがみついて泣いているから。
ティファも、驚き半分…嫉妬、半分、だと思う。
でも、さっきのはどういう意味…?
「クラウドに、もう少ししたら出発した方がいいって伝えておいてくれる?」
「分かった。ティファも…無理、しないで。」
「うん…セリアもね。」
「私はさっき、大声とまではいかなくても泣いたから…。」
「…そっか。じゃあ、クラウドを、よろしく。」
「うん。」
ティファはそれだけ言って、皆がいる方へ向かった。
クラウドは、未だにしがみついたまま。
「セリア…」
「…?どうしたの、クラウド?」
「悪い…リーダーの、俺が…」
「そこでリーダー気取らなくてもいいのに。…でも、大丈夫。皆、辛かったから。」
「…あぁ。セリア。」
「ん?」
しがみついていた手は、私の頬へ。
包まれた頬は、妙に暖かくて。
近づく顔に、私は思わず目を瞑った。
「…こんな所で、不謹慎、だな…俺は、何を考えてるんだ。」
「…クラウド?」
「ごめん。…もう、大丈夫だ。行こう、セリア。」
「…大丈夫って顔、してないけど。」
「いや、もう…」
「強がらなくても、いいよ。多分ユフィ辺りがまだ泣いてるし。今夜はここで寝泊りだと思うよ。」
「…。」
「ね、クラウド。さっきもいったよね?泣きたい時に、泣けばいいんだよ。」
「…でも、大丈夫だ。セリアが、いるから。」
「私?」
「…あぁ。セリアが、いれば…俺は、頑張れる気がするんだ。」
言葉を、失った。
ティファの、さっき言っていた事は、この事か。
クラウドは…ティファじゃなくて…
「…そっか。じゃあいつでも傍にいてあげなきゃね。」
「そうしてくれると、嬉しい。」
「…はは、ありがと。」
「…行こう。皆が心配、してるかもしれない。」
「そうだね。行こうか。」
フ、と笑った顔は涙でぐちゃぐちゃで。
でも、決意は固い。
セフィロスを倒す。
それだけを、胸に。
そんな顔を、している。
「…セリア。」
「何?」
「…き、だから…。」
「え?聞こえないよ…クラウド?」
「…好き、だから…セリアは、守るから…。エアリスを守れなかったけど…セリアだけは…絶対、守るから…」
「クラウド…」
「…こんな俺でも、傍に、いて…くれるか?情けない、俺でも…」
「大丈夫だよ。クラウド、私は傍にいる。生きてる。ね?」
「…あぁ。」
その顔はまだ苦しそうだけど。
だけど、変に笑う顔が、とても愛しいと思ってしまう自分がいて。
私も、多分変に、笑ってる。
でも、手から伝わる温もりは本物だから。
今はそれだけで、満足だから。
「行こう?もう皆待ってるかもしれない。」
「あぁ、行こう。セリア。」
どうか、この体温が奪われないように。
真実が、クラウドを押し潰さないように。
せめて、心だけでも暖かくいれるように。
ギュッと、その手を握った。
END…?
あとがき。
初クラウドがこんなんってありですか。(…)
エアリスの死んでしまったところのシーン…本当に悲しかった…。
つい最近やってましたけど、これまた泣きそうで。
何度やっても泣きますねあのシーン。
っていうか、何だか微妙な仕上がりですんませ…orz
とりあえず、悲しさが伝わればな…と。
…伝わったかな…(汗)
PCより移行。相変わらず初めて書くのは暗いのが多いw
お題はtrash様よりお借りいたしました。
戻る 夢見へ