まだ未練があるのか?
「…まだ、あいつのこと…好きなのか?」
「…。うん。」
仕方ないじゃない。
初恋だったんだもの。
引きずるなんて当たり前じゃないの。
中学3年、冬。
私は、一つの恋に終止符を打ちつけられた。
元希は、ただ一言「好きな人が、出来た」とだけ、言った。
そして、私も大概素直じゃなくて。
「そっか、それじゃ…別れた方が、いいん、だよ、ね。」
と言って、元希とさよならをした。
今思えば、何故くいついていかなかったのだろう。
嫌われるのが、怖かった?
うざがられるのが、怖かった?
…多分、両方だ。
「もう、忘れろよ。あいつだって今頃」
「分かってる、んだけど…でも、忘れられないの。吹っ切れないの。」
そういうと、阿部君は黙ってしまった。
中学卒業後、私は元希と同じ学校が嫌で西浦高校に逃げた。
最初は、元希と同じ学校に行って、野球部のマネージャーをやる!と意気込んでいたけど。
想えば想うほど辛くなって、冬にも関わらず受けようと思った武蔵野第一高校を取りやめ、西浦を受験した。
その事に、元希は何一つ、触れることはなかった。
…卒業式でも、会うことはなかった。
それから、西浦に入って、阿部君が偶然同じ高校の7組で言葉を交わした。
久しぶりに会えたことは嬉しかった。
けど、やっぱり、どうしても、元希を思い出してしまう。
バッテリーを組んでいたから、尚更…元希と、関連が強くて。
しばらく黙ったままでいると、痺れを切らしたのか阿部君の方から再び話しかけてきた。
「そうかもしんねーけど、何かで吹っ切らねぇと木ノ瀬が辛いだけだぞ。」
「…、う、ん…。」
阿部君の言葉が、痛い。
確かにその通りだから、言い返せるわけもない。
吹っ切らなければ、始まりもしないのは…わかって、いる。
「…。俺じゃ、ダメなのか?」
「…え?」
「俺は、…木ノ瀬の事、好きだから。俺じゃ、ダメかって聞いてるんだよ。」
「…っ!!」
その言葉に、私は目を見開く。
じゃあ、じゃあ…今まで、どんな風に、私の悩みとか、色々聞いてくれたの?
だって、それじゃあ…私…
「確かに、どうして俺じゃないんだってイラついた時もある。」
「!?」
「…けど、どうしようもなかった。木ノ瀬が幸せなら、それでもいいって思ったから。」
「……」
「でも、もう容赦もしねぇことにした。…アイツが、お前を手放したから。」
「あ…阿部、君…」
いいのかな。
私、吹っ切っても、…いい、のかな。
「別に、アイツを忘れろってわけじゃない。今まで付き合ってたんだからむしろ忘れられなくて当然だろ。
―――それもひっくるめて、俺は木ノ瀬が、好きだから。」
「…それ、って…!?」
「…返事はまた明日、放課後にでもくれよ。…待ってる。」
「…あ…、うん。…分か、った。」
「んじゃ、帰るぞ。…後ろ乗れよ。送ってやる。」
「…え、あ、いや、」
「木ノ瀬を一人で帰したくない、俺のわがまま。…ほら、乗れ。」
「う…はい、じゃあ失礼します。」
言われて、私は阿部君の自転車に乗って帰路についた。
“忘れなくてもいい。”
“ひっくるめて、好きだから”
「(…ありがとう、阿部君…)」
こんなにも、暖かい気持ち。
…本当に、ありがとう…阿部君。
End
あとがき
初阿部が何か本気でニセモノに…。
榛名が絡んでるからまだそれっぽくは見えるけど…。
うぅーん、まぁ阿部に言わせたかった言葉を言わせられたからいっか。
しかしこの阿部は阿部阿部しくない。苦笑。
つか、阿部じゃないorz
PCサイトより移行。
え、これ阿部?wと読み返して思わず思ってしまった…。
お題はtrash様よりお借りしました。
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