「どうにもキナくせぇな…あの美術教師。」

「そうか?俺にはおもろい先生に見えたけどよ。それに聞き込みしてもみんな言ってたろォ?いい先生だって。」


「あのなあ億泰。そこが気持ち悪ィーんだよ。事件と夏休みで人が減ってるとはいえ、あんだけの人数に聞いて、全員が全員口揃えていい先生とか言うかァ?」


呑気に自販機で買ったアイスキャンディを舐める億泰に、仗助は呆れた顔でため息をつく。


「うさんくせーぜ。よっぽど善人の皮を被るのが上手いらしい。」


「……お前って時たますげー根暗なこと言うよな。」

「うるせッッッ!!……それに、あの生徒の証言も気になるな。」

「あの証言?……ああ、あの世にも奇妙な物語みたいな話かよォ。」


そう、米澤教授については皆が口々に面白い先生だ。授業がわかりやすい。優しくてイケメン。親身になって相談に乗ってくれる。などなど褒め称える中、ある一人の生徒が少し変わった話を始めたのだ。



「私、先生は超能力者じゃないかと思ってる!」



「………ハ???」


ある女子生徒のグループに話を聞いていたところ、そのうちの一人が目をキラキラさせながら訴えてきた。どうやら不思議ちゃんタイプらしい。ミキタカのお陰で扱いには慣れているが、ここまで純粋に先生は超能力者!なんて言う人間には初めて出会った。

超能力者がそうそういてたまるか、と思ったが、そういえば昨日出会ったばかりであることを思い出して口をつぐんだ。


「……ええと、どうしてそう思ったんすか?」


「先生ね、物の距離や長さや重さを、目で見ただけで計れるの!ずいぶん前には美術部の女の子の体重が急に減ったようだから、って。一度病院に行ってみたらー?って先生に言われて、行ったらなんと腎臓が片方なくなってたの!」



「………え?ハ??……何スて??」



「だから、腎臓が片方なくなってたみたいなの〜〜」



笑顔でお花を飛ばしながら衝撃的な発言をするものだから、仗助と億泰は顔を見合わせた。その女子生徒の周りの友達は「ああ〜〜、あの話ね、あれは昔腎臓が悪い妹に移植したんでしょ、体重が減ったのも、彼氏にフラれたストレスだって」などと都市伝説扱いされていたが、仗助にはその話が妙に引っかかった。



「……吉良吉影がよォ〜〜。測ってたんだよ、距離を、手を使って、正確に。更には体重の増減までわかるときた。そんな人間がよォ〜〜。そう何人もいるもんなのか?」



そう眉間にシワを寄せる仗助の隣で、億泰はアイスキャンディを食べ終わっていた。暫く考え込む二人のもとに、ふわりと二つの影が落ちてきた。


「!おう!康一のエコーズとエクボ!!ナイスタイミングだなあ!」


呑気に言う億泰に、息を切らした様子のエクボが喋る。


「んな呑気なこと言ってる場合じゃねえ!露伴と調べたところ、3日ほど前近隣の小学生が数人、急に爪がなくなったらしい。」


「は、爪ェ!?腎臓の次は、爪かよ。」


「人差し指の爪、薬指、小指。どれもバラバラで一枚ずつ。だが共通点がひとつだけあった。全員、ある夏休みのワークショップに参加してたんだ。そしてその担当講師はーーこの大学の教授、米澤だ。」



「僕たちの方もわかったことがある!行方不明者の共通点は、それぞれ体のパーツに特徴があった!長く綺麗な脚、美しい形の手……きっと犯人は選んでるんだ、吉良吉影の時のように、自分の好みのパーツを……!!」


その言葉を聞いて仗助は走り出した。その後に億泰、エクボも続く。モブは今どこにいる。米澤教授は。そして、ナマエさんは。



「……クソッ、間に合えよ……」





prev | index | next

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -