最早恒例となった勉強会。夏合宿の前に行ったナマエを中心としたテスト対策は思いの外効果的で、それ以降定期テストがあればなんとはなしに集まる形となった稲荷崎バレー部二年組。
春高を目前とした二学期の期末考査期間。例によって集まった宮兄弟、角名、銀島、そしてナマエは心地いいざわめきに満たされた某ハンバーガーチェーン店にてそれぞれの課題に取り組んでいた。

 普段の彼らの問題児ぶりは今ばかりはなりを潜め、というのもまさかこのテストで赤点を取ればせっかく出場の決まった春高へ影響してしまうので。しかしそれより何より、追試の報告を我らが主将にすることがおっかなかった。過去に何度かやらかした侑は想像して肝を冷やす。


「なあ、ここわからんのやけど…問2」

「ん?ちょっと待ってな……」


 そう、目の前に座るマネージャーへ声をかけた自分の片割れの言葉に、侑はぷつりと集中が途切れるのを感じた。途端に周囲の喧騒が耳に流れ込んできて、くっ、と一度大きく伸びをして肩を鳴らしてみる。
 ファストフード店のボックス席はどうにも体のでかい男四人が座るには窮屈だった。侑は一旦休憩、とすっかり水っぽくなってしまったジンジャエールを一口啜った。眼前では自分の片割れである治が隣のナマエに問題の解説を受けている。なんとなくその様子をぼんやり見遣る。


「………」


 いや、距離近ない?単純にそんな疑問が頭をもたげる。
 一度気になってしまえばその考えが頭から離れず、しかし当の二人はわりと真剣に問題へと向き合っているものだからそんな見当違いの文句をつける気にもなれなかった。とはいえ、ナマエは仮にも自分の彼女である。いい気がしないのも確かだった。



「だからここはこの構文を使って……、」

「あーー、なるほど……ほしたらこれもおんなしってことやんなあ」


「……」

「?ミョウジさん?」

「あ、う、うん……そういうこと……」


 なるほどなあ、ありがとお、治がぼんやりした口調でお礼を言う。それに曖昧に笑うナマエの意識は、先ほどまで治や目の前の問題に向いていたのだが、現在はしれっとした顔で二人を傍観する向かいに座る男へと向いているだろう。
 そんな彼女の関心をようやく取り戻した侑は少しいい気になってしまう。というのも狭いテーブルの下では侑の脚がやわく開かれたナマエのスカートの間へと差し込まれ、意地悪にもふくらはぎや膝頭を刺激しているのだ。ナマエは突然のことに動揺したが、普段ならば文句のひとつもつけるところ、制服越しに感じる侑のぬるい肌の感触に何も言えなくなってしまった。それをいいことに侑は悪戯を止めない。


「………」

「……どしたん、怖い顔して」

「べつに……」


「……?」


 ナマエも応戦して侑の脚を軽く蹴ってみるが、仕返しと言わんばかりにさらに脚を割り開かれて思わず目の前の男を睨む。こんな時ばかり長い脚を存分に生かすものだからずるい。そんなナマエにようやく構ってもらえた侑は満足そうな顔をして、同時にいじらしく脚を閉じようと反撃するナマエをいなして無理やり割り開くテーブルの下の攻防に少し邪な気持ちが生まれる。
 そんな二人のやり取りに侑の隣で疑問符を浮かべるのは銀島。そして一人テーブル角のお誕生日席でいや、バレバレなんだよ家でやれよ。と死んだ目を向ける角名はいつ二人の攻防に割って入ってやろうかとテーブルの下でコンコン、と二回スニーカーの踵を鳴らした。


06012022


お題:あの二人、皆に内緒で付き合っているな。テーブルの下で何度か足同士が触れていた。一回じゃないんだ。わざとだ。あれで隠せているつもりなのか。努力だけは認めてやる。(あの二人、絶対付き合ってるな)



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