バカと雨

『はぁ…帰りたい。』

「アンタそれ今日で何回目よ、いい加減ウザいんだけど。」

『すんまへん。』


ただでさえ暑い夏。
そんな暑い時期に、ザーザー降りな雨。そしてそんな日に限って…準々決勝がこれから行われるのだ。

9月30日、聖蹟vs.北東。

最悪な天気に、ビチャビチャで最悪なグラウンド。
おかげで緊張が漂っている…
わけでもなくー、


『(…大柴先輩、何やってんだろう…)』

「…おいバカ、何してんだお前は!?」

「はぁ? 見て分かんねーのか?
こうやって頭の上で高速で手を動かすと…」

「『………』」

「雨に濡れない。ような気がする。」


馬鹿だ。こいつはやはり天才的馬鹿だ。
何処が濡れてないんだよ、手も顔も頭も全てずぶ濡れじゃねーか。
しかし、こんな馬鹿がいる聖蹟を侮ってはいけない。


「なるほど、新しい考えだな。」

「でしょう。」

「あんたもやんな!!」

『馬鹿は馬鹿を呼ぶ…』


何しろ、この馬鹿がいる聖蹟を引っ張っているキャプテンこそが天然馬鹿なのだ。
そう、本日一番のバカ大賞は彼なのだ!
というのも…


「なかなか点が入らないわね…」

『まぁ、キャプテンが今日はつるんつるん行ってるからね。』

「本ッッ当…こんだけどしゃ降りなのに、普通雨用のスパイク忘れる!?」

「水樹だから仕方がない。」

『そうやって監督が水樹キャプテンを甘やかすから駄目なんですよ。』

「だから奥さんに逃げられるのよ。」

「うぐっ…それとこれとは関係ないだろ!」


雨用のスパイクを忘れて、さっきから何度も踏ん張りが効かずにトゥルンと滑り転けている。おかげでユニフォームも泥だらけだ、洗うの大変そう。

更に悪いことに、敵の北東は全員で守りに入っている。攻撃しようにもできず、なかなか点を取ることができずにいる。


『前半でせめて1点は欲しかったけど…もうすぐ終わっちゃうね。』

「…いや、2人同時に動き出した!」

『…君下先輩…いや、大柴先輩か!
入った…聖蹟先制だ、やったね!』


それでも前半終了前、何とか大柴先輩は点を取った。水樹キャプテンは雨用のスパイクを忘れてるし、今日の試合はその2人が主役になるだろう。
そんなことをチカちゃんと話していた矢先に、
その事故は起きた。


ガツンッ

「…っ!!」

「キーパーと接触! 今のはわざとだろ!?」

「大柴!?」

「大丈夫か!?」


相手先のキーパーの肘が、大柴先輩の頭に直撃。
彼はその衝撃で倒れたが…
幸いなことに、直ぐに立ち上がった。


「あぁ、全然大丈夫ッス。」

「『………』」

「ん? あれ?
みんな赤い…」


前言撤回…幸いじゃない。
彼の頭からは、血が流れ出ていた。





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