▼ Loyalty
「…おい、ちゃんと体作りしてるのか?」
『…え? 子作り? してないけど。』
「ぶっ!? こ、子作りではなく、体…!」
「うっわー レヴィってばキメェ。朝から盛ってんじゃねーよ。」
「なぬっ! オレは運動してるのかと聞いただけだ。誰も子作りなど言っておらん! 聞き間違いだ。」
彼は顔が濃く、ボス命なレヴィさんだ。
本名はレヴィ・ア・タン…だったと思う。私が初めてここに来た時、彼は任務で不在だった。そのため後で遅れて自己紹介をしたのだが…
ハッキリ言おう。
私は少し、彼のことが苦手だ。
〜 Loyalty 〜
彼と初対面を交わす前、私は彼の名を事前にベルから聞いていた。
その名も…
「レヴィ・アンポン・タン」
『レビー・アンポ・タン…』
「違ぇよ。レヴィ・アンポン・タン。」
『レヴィ・アンポン・タン…
…アンポンタン?』
「そう。レヴィ・アンポンタン。」
『ふぅん…』
違和感を持たなかったと言えば嘘になる。
ただ、ここはイタリアだし、彼もイタリア人だという理由でスルーした。
そう…スルーしてしまったのだ、私は。
故に、
『あ! あの…私、吉村ヒナタと言います。本日からここでお世話になることになりました、よろしくお願いします。』
「む…お前がそうか。スクアーロから大体は聞いている。オレの名前は…」
『知ってます!
レヴィ・アンポン・タンですよね!』
「貴様…ッ、喧嘩売ってるのか!?」
『はっ!?』
初対面、さらに言えば、初対面から1分も立たないうちに殺される危機。彼が傘みたいなものを出して、電気がビリビリと飛び跳ねる元気な兎のように走るのを見て…気付いた。
「ししっ レヴィ・アンポン・タンだってよ。」
『ベル…アンタ私に嘘の名前教えたでしょ! すみません、レヴィさん! ベルから事前にそう名前を伺ってたものですから…』
「そ、そうだったのか…なら仕方がないな。オレの名はレヴィ・ア・タンだ。レヴィでいい。」
学んだことその1、彼を怒らせたらきっと電気で焦げさせられる。その2、ベルの情報は鵜呑みにすべからず。
だが、きっと彼は優しい人なのだと思う。
原因がベルだと分かると攻撃する意思を捨てたし、むしろ親切に色々と話しかけてくれた。
「そうか…じゃあ生活必需品は揃ったんだな。」
『うん。ルッスーリアも手伝ってくれて…凄く楽しかったよ!』
「それは良かったな。…その、も、もし…オレで力になれるようなことがあったら…、遠慮せずにオレに声をかけてくれ…!」
『本当? 嬉しいなぁ、ありがとう!』
照れ臭そうにそう言ってくれるのも好感度が高い。顔はまぁ怖いけど、でも性格は優しい人なのだと分かった。
しかし、それもある人の登場で一変。
彼は私の本当の正体を知り、私も彼の本当の姿を知ることになったのだ。
「う"おおぉぃ! 修業の時間だぁ、始めるぞぉ!」
『げっ…もう?』
「修業? ヒナタは普通の一般人をやっていたんだろう。修業など…」
「甘いこと言ってんじゃねぇ、クソが。そいつはもう雲の幹部なんだぁ…今まで一般人をやってたからって弱いままでいていい理由にはなんねぇぞぉ。」
「雲の…幹部、だと?」
『…レヴィ?』
私が雲の幹部になったことを知って、何故かわなわなとレヴィは震えだしたのだ。後からルッスーリアに聞いて分かったけど、彼はボスに認められようと頑張る努力家で、嫉妬深い人らしい。だからこそ、彼は私に怒りを覚えたのだと言う。
「何故だ…何故この小娘が雲の幹部などに!?」
「うるせぇぞぉ! ボスの決めたことに文句があるから、直接クソボスに文句言いやがれぇ!」
「別にいいじゃないか。どうせ雲の幹部の席は空いてたんだ。」
「何を言っているマーモン! 幹部はボスを命懸けで守る強い奴等じゃなければならん! この小娘がボスのために命を賭けて戦うと思うか!?」
ボスへの忠誠心が高い彼だからこそ…ぽっと出の私に彼は不満があるのだ。そりゃそうだ。いきなり現れた女は"存在しない"女で、戦い方も裏の世界も知らない。そんな奴にボスの手足と言っても過言ではない幹部が何故務まろうか。
ボスも一体何を考えてるのやら。
「さぁ。 ボクはヒナタじゃないから分からないし、そもそもボスは守られるほど弱くはないからね。ヒナタ1人が戦えなくても何も変わらないと思うよ。」
『確かに。』
「ししっ むしろボスを守るどころか足手まといになるんじゃね?」
『それな。』
「てめぇは同調してんじゃねぇ! さっさと修業してミジンコくれぇには役に立ちやがれぇ!」
『ミジンコ? え、何それ。私よりもミジンコの方が役に立つって? 私ミジンコには流石に負けないと思うんだけど…ミジンコ潰してこようか。何処にミジンコいるの?』
「ミジンコミジンコうっせぇ!!」
『出たぁー、SSさんの理不尽でうるさい怒鳴り声!』
「喧嘩売ってんのかてめぇは! カッ捌くぞぉ!」
「少なくとも、命知らずで喧嘩を売る勇気はあるよね。」
「ただの命知らずなバカじゃね?」
「ぬぅ…オレは、オレは認めんぞ!」
認めない。
でも、ボスの命令にも逆らえない。
そんな板挟みで悩む彼が出した結論とは、雲の幹部にふさわしい強さに育て上げること。簡単に言えば、修業と勉強の先生が増えたってことだ。
別にそれはいい。何ら問題ない。
ただ一つ…私が彼に苦手意識を持っている理由は、異常なほどのボスへの忠誠心。勉強や修業中、誰しも話がそれる経験はあると思うけれど…
『レヴィは雷で、ルッスーリアは晴れで…スクアーロは雨、ベルは嵐、マーモンは霧の幹部。』
「そうだ、それでそれぞれの役目はさっき言った通りだ。それぞれの属性に合ったリングをはめれば、各属性の炎が出る。」
『ふぅーん…そういえばさ、大空の調和ってどんな効果があるの?』
「大体は石化だな…しかもボスの場合は憤怒の炎も混ざっている。だから石化した後は分解されるのだ。あの時もボスは椅子から立たずに強敵を倒し…」
『あーハイハイ、もうボス自慢はいいから。』
話がそれて行く先は、必ずボスの話。ボスは素晴らしい、カッコいい、強い…その話を何度も何度も永遠に話してくるのだ。最初は『へー』って純粋に耳を傾けていたけれど、今はもう勘弁してくれって感じ。耳にたこができる。あとボスが関すると狂信的で怖い。
だから彼のことは少し苦手。
でもそれは別に彼のことが嫌いというわけではない。
「では、次はボンゴレの同盟関係について話しておくか。」
『分かりやすくお願いしまーす。』
「分かってる。図と表を用意した。」
『…それ自作? すっごぉ…』
レヴィは優しくて、努力家で、ただただボス一筋で他人にも自分にも厳しい奴なだけなんだと思う。
(『これ貰ってもいい?』)
(「端からやるつもりだ。」)
(『はぁー…分かりやすいわー…』)
(「…いいか? ここまでオレがやってるんだ。勉強して修業して、さっさとボスのお役に立てるようになれ。ボスは誰にも負けないくらい強い。だからその隣に立つのに相応しいようにヒナタも…」)
(『強くなれって? もう何度も聞いた。』)
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