▼ Let me stay here
「で? 結局お前何できるわけ。」
『何にもできないけど、きっと何でもできるよ。』
「ふざけてんのかぁ"!?」
『やだな、大真面目ですよ。
まだ何にもできないけれど、訓練すれば、料理洗濯掃除翻訳暗殺…きっと何でもできる。私はそう信じてる。』
「ししっ 才能ってのもあるんだぜ?」
彼らが私のことを調べあげた結果、"私"という存在はここにはいない。漢字を含めて同姓同名な人はいたけれど、それは私ではなかった。
つまり…この世界に私の居場所はない。
じゃあ、どうするかって?
図太く、賢く、厚かましく、いくしかないよね。
〜Let me stay here〜
『私、どうすればいいんでしょう。』
「ししっ オレが殺してやろーか?」
「お金を払ってくれたらボクが殺してあげるよ。」
「それが手っ取り早ぇ"… 存在しねぇ奴を消しても誰も文句言って来ねぇからなぁ!」
『普通王子ならここは救ってくれる筈なんだけどな。それに何で殺してもらうのにお金を払わなくちゃなんないの、つーかお金持ってないから。私ここに存在しない人。ちなみに私が死んで文句言う奴はいないかもだけど、私は地縛霊になってからも言うよ?』
流石は暗殺を稼業にしているだけある。
「どうする?」=「殺そうぜ」が当たり前になってるような軽い判決に私の目からは涙が出そうだよ。出ないけど。
しかし諦めるのはまだ早い。
私は粘る、簡単には諦めないぞ。
『私はね、ルッスお姉ちゃんと一緒に服とか化粧品とか買い物して、お洒落したいなぁ〜』
「んまぁ! 嬉しいこと言ってくれるわぁ〜
ウフッ!」
「う"お"ぉぉい! 何アッサリ買収されてんだぁ! しかもその買い物の費用はてめぇが出すことになるんだぞぉ!」
『あ、ルッスママはどう?』
「ママ…私がママ!? なんて素敵な響きなの!」
「ママじゃなくてカマだろ。」
「ムキーッ
ベルちゃんは可愛くない反抗期な息子ね!」
『ルッス姉とルッスママ、どっちがいい?』
「うーん…どっちも捨てがたいわねぇ…」
「本気でくだらねぇこと悩んでんじゃねぇ!!」
私を殺す派3人に対し、私を殺さない派2人。ちなみに前者は言うまでもなくスクアーロ、ベル、マーモンで、後者はルッスーリアと私だ。
後は2人くらい私の味方を増やせばいい…
そう単純に思っていたけれど、それは違った。
最早多数決なんて、ここでは意味成さなかったらしい。
「…るせぇ、何の騒ぎだ。」
「痛ぇっ!? テメー、いちいち物投げつけてんじゃねぇぞぉ!!」
「あらボス〜 お帰りなさい♪」
『(ボス…?)』
「あーあ…死へのカウントダウンが始まったぜ。うししっ」
急に現れた彼は、まずはスクアーロにドアのところにあった花瓶を投げ付けた。お花と花瓶が可哀想。でも、そんなことよりも気になるのは皆の反応。
花瓶を理不尽にも投げつけられた短気そうなスクアーロが、怒鳴りはしたが攻撃し返さないのだ。ベルも大人しくなった気がする…さっきまではビュンビュン誰彼構わずナイフを投げつけてたのに、彼には一回も投げない。
つまりは、この人は絶対的なボスなのだ。
「………」
「…ソイツに今日の任務を一部見られたんでなぁ、一応連れて帰って来たぜぇ。」
「ハッ 同情か、カス鮫が。さっさと消せ。」
「…そんなわけだぁ。分かったかぁ! テメーはここで死んでもらうぜぇ。」
『分かるわけねーだろ。鮫に喰われて鮫の糧となって鮫の腸を巡って最終的に鮫のウンコとして生き直せコンチクショーが。』
「なっ…んだとこのクソ女ぁ!!」
完璧なる八つ当たり、というか自暴自棄。
「そんなわけで殺します、分かりましたか?」「分かりましたよ」なんて会話が許されると思ってんのかよ。まさに、どうせ殺されるなら最期に暴言吐いてやろうという魂胆に過ぎない。
それがまさかー
「ぶはっ!」
「カス鮫のウンコ、サイコーじゃん。」
「ちょっと。ヒナタちゃんは女の子なんだから、ウンコなんて言っちゃいけないわよ!」
部屋に戻ろうとしてたボスが笑って、ベルもニヤニヤしてて、ルッスーリアも私を注意しながら笑いを我慢している。マーモンはフードでよく顔が見えない。ちなみにスクアーロは勿論お怒りで、今にも私を殺してしまいそうだ。
「てめぇ、卸してや…!」
「待て、クソ鮫。」
「今度は何だぁ!?」
「おい、女。名は何だ…」
『ぇ…ヒナタ…、吉村ヒナタです。』
「ボースー、コイツ、身分証明できるものがない"存在しない"人間らしいぜ♪」
「……ハッ 面白ぇ。
おいカス、そのカスを雲の幹部にしろ。」
「何言ってやがんだぁ!!」
『…雲の幹部…?』
「ししっ 命拾いできて良かったじゃん。」
殺せと言われたり、命拾いしたり…
何が何だか分からないけれども、1つだけ確実に言えることはある。
『…あのボスって人…何か最後、悪巧みしてるように笑ってなかった?』
「…災難だね、ヒナタ。」
『やめて。
まだ私の人生を災難レベルにしないで。』
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