この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 騒がしい日常

『あり…お父さんは?』


トンネルを出て辺りを見回すも、その姿は見当たらない。来てると思ったんだけどなぁ…親馬鹿だから。


「二代目は家でお二人のお帰りを待っておられますよ」

「いや、ここにいるぜ?」

『出たー。神出鬼没だからもう驚かないけどね。』

「なんでぃ、つまんねぇな。昔はしょっちゅう驚いていたのに。」

『慣れるに決まってるじゃん。もう何時いるのかいないのか分からないからさ、守護霊というか背後霊というか…まぁそんな感じでいつ見えてもおかしくないものと思うことにしたんだよ。』

「勝手に人を霊にするな。」


パアン!とハリセンで叩かれる私の頭…地味に痛い!てゆうか鯉さんやい。それどっから出した?


「これか? これはお前さんをいつでも叩けるように常に常備してるぜ。」


いや、それ本当は叩きたいだけだろ!


『ドメスティックヴァイオレンスぅうう!!』

「無駄に発音いいな、おい。」


痛い。またハリセンで叩かれた。人をなんだと思ってるんだ。タンバリンか? お前はタンバリン演奏者なのか!?


『全く…おこだよ、おこ。激おこ。』

「? なんだいそりゃ。」


やーい。イケメンで見た目若者だけど、時代に遅れてやんのー。やーいやーい。って痛ぁ! また叩かれた!


「お前今なにか失礼なこと考えただろう。」


何なのこの人。以心伝心ですか。サトリか? 本当はぬらりひょんじゃなくてサトリなのか?


「! おぃ、太もも怪我してるじゃねぇか。」

『今更? まぁ、ただのかすり傷だから全然大丈夫って、あー…うん…ありがとうございます。』


本当に大したことないのに、わざわざ治してくれたお父さんは相変わらず親馬鹿だ。


「可愛い娘に傷が残ったら勿体無ぇだろ?」


…父よ、その気持ちはありがたいけど…その色気は要らないかな。娘に色気まくなよ。てかウィンクがこれ程似合う人ってそう居ないよね。


「にしても、リクオも大きくなったなぁ。ついに三代目か。」

『喜ぶにはまだ早いんじゃない?』

「…どういう意味だい?」

『三代目を継ぐって言ったのはあくまでも夜のリクオだよ。昼のリクオにも三代目を継ぐ気があるのかはまだ分からないでしょ。』


確かになぁと顎に手を当て渋るお父さん。
このあと…
私の言った通り(というかむしろ原作通り)、三代目を継がないと言うリクオに対して、家の妖怪達の嘆き騒ぐ声が屋敷中に響き渡ることとなる。





ーーーーーーーーー




それから数年後、私は中3、リクオは中1となった。


「今年も…またダメか…?」

「だめですねぇ。では、早朝まで及びましたが、今回の会議でも…奴良リクオ様の三代目襲名は先送りということで…」


大広間の障子が開き、沢山の妖怪がゾロゾロと出てくる。あの様子からすると、今回もまた反対多数で駄目だったのだろう。


「お嬢!もっと下され!!」


その声に下を向けば、小妖怪がもっともっとと言わんばかりに私の着物の裾を引っ張る。


『はいはい、皆で仲良く食べるのよ〜』


そう言って地面にたくさんの金平糖をばら撒く。そしたら喜々として金平糖を拾い上げて食べる小妖怪。可愛いぜ。庭先で小妖怪に金平糖をばら撒く…これは私の朝の日課だ。この子達は体も小さいので食べる量もかなり少ないのである。


「じゃ…お母さん、行ってくるね!」

「あらリクオ早いのねぇ、お弁当用意してないわ」

「いいよ、購買で何か買うから。」


餌やりをしていれば、リクオとお母さんの声が聞こえてくる。


「あ 若!おはよーございまーす!!ご支度を…」

「いいよ 自分でやったから!!」


昔は妖怪に手伝ってもらっていたのに、今では自分で全て支度を終えているようだ。


「なんでアレ以来変化せんのかの〜」

「〈あの時〉は立派な妖怪になるものと思いましたが…」


近づいてくるリクオを見ながら話すおじいちゃんと木魚達磨。


「あ、おはよう姉ちゃん!」

『おはようさん。リクオは本当出るのが早いね。私まだ用意できてないから、先に学校行ってて?』

「うん!分かった!
あ、おじいちゃんまた会議?ダメだよ!悪巧みばかりしてちゃ!ご近所に迷惑かけないよーに!」

「う…うむ。」

「じゃ!行ってきます!」

「むしろ〈立派な人間〉になってる気がしますなぁ…」


と言う木魚達磨に肩を落とすおじいちゃん。


『…おじいちゃんも大変だねぇ。可哀相に。』

「ならお前が三代目にならんか!鯉菜!」

『そりゃ無理だ。頑張れお爺ちゃん。』

「リクオもお前もそんなんだから、ワシは総大将でおらないけんのじゃぞ!? 早う隠居して楽に暮らしたいんじゃがの〜。お前らのどちらかが三代目を継ぐのは…いつになるんじゃろうのう〜。」

「さぁて…どうなりますか…?」



そして、また本編が進み出す。



(「リクオは立派な人間になっていくし、鯉菜はどうして変化しないのじゃろうな〜」)
(『…さぁ?(…本当はしようと思えば変化できるけどね。でも、したら確実に三代目にされそうだからしない。)』)
(「ふぁあ〜。…あり?いつの間にか総会が終わってら…。」)




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