この手に掴んだ幸せを(ぬら孫) | ナノ

▽ 三代目襲名

京都から帰還し、リクオの三代目襲名の日が来る。


「待たせたな…
奴良組はこれから地獄からよみがえる鵺たちとの前面抗争に入る。畏の奪い合い…ひるんでる暇はねぇ。
その指揮はこいつがとる。
これはここにいる奴良組幹部の総意である。
よいな。」


そう言ったのはおじいちゃん。
広間に集まる数々の妖怪…
いつもの総会とは違い、三代目襲名ということで皆正装で並んでいる。
おじいちゃんの後を継ぎ、本日を以て、リクオが正式な三代目になるのだ。


「三代目を継ぐにあたって言っておく。
まずオレは人に仇なすす奴は許さん…
仁義に外れるような奴はなお許さん。
たとえ他の妖怪に敗れそうになってもだー
それは〈畏〉を失わぬ…
そういう妖であれということだ。
オレはこの組を…そういう組の集団にする。
それがオレの百鬼夜行だ!
…いいな!」


その言葉に、黒田坊や青田坊、氷麗、猩影などが力強く頷く。牛鬼など…一部幹部が引退し、リクオの側近だった者が新しく幹部になったのだ。


「それと…もう一つ。」


その言葉に、一同リクオを見る…


「三代目補佐に、オレの姉、奴良鯉菜を襲名させる!」

『は?』


つい洩れてしまった声に、慌てて口を押さえるも後の祭り。リクオとおじいちゃんからは呆れた目で見られ、お父さんは肩を震わせてなんとか笑いを堪えている。
…腹立つわ〜。


「は?…じゃねーよ。
オレの補佐してくれるって言ってたよな?」

「…ほら、挨拶しろよ…ククッ」


真面目に言うリクオに対して、お父さんはニヤニヤしながら挨拶をするように促してくる。
後でしばいたろーか。


『……奴良組三代目補佐に任命されました、
奴良鯉菜です………どうぞよろしく?』

「ぶはっ!!」

「…姉貴…」


まるで我慢の限界とでも言うように、笑いだすお父さん…え、何で笑うの。こっちは真面目なんですけど。ハートブロークンだよ。
リクオもなんで頭押さえてんの。姉ちゃん泣いてもいい? 急にそんな挨拶しろなんて無茶ぶりされて…そんなかっこよく決められるわけねーだろ!


「意気込みでも言えよ」


さらなる無茶ぶりを強制してくるお父さんは後で池落としの刑だ…!


『………』


にしても意気込みって何を言えばいいんだ?
お父さんを助けることが出来たし、
狒々様や犬神、針女も助けることが出来た…
お父さんも無事に京都編を終える事が出来た。
私はこれから…何をすればいいんだ?


「?
おい…どうした、姉貴 」


リクオは…これから山ン本五郎左衛門を倒して、
そして晴明を葬る……。
じゃあ…私は…


『……リクオの…
…リクオの邪魔するヤツを…斬る……。』


そうだ。
リクオはこれから何度も大怪我する羽目になる。
でもそれはあくまでも原作…。
ここは……、
私の隣には…親バカな鯉伴がいる。
リクオを庇って鯉伴が命を落とすかもしれない。
もしくは…鯉伴に怨みをもつ山ン本らが直接、
鯉伴を襲うかもしれない。
そういえば、お母さんも襲われるんだった。


『私は…
リクオが安心して戦えるように、
お父さんやお母さんを…家族を、護るよ。』

「姉貴……」


驚いてこちらを見るリクオに、ニッと口角を上げて言う…


『もちろん、リクオのことも護るし、リクオの手伝いもするけどね!
でも…私が居なくとも、ここにいる皆がリクオを護ってくれるだろうから……』


リクオと盃を交わした者を見れば、力強く頷く面々。


『だから私は…
リクオを傷付けるものを、
リクオを苦しめるものを、
全部……消してあげる。』


にっこりと、心の底からの笑みで応える。
でも…この先何が起こるか分からない…
原作は知っていても、私とお父さんという異端分子がいる以上、どこでどんな歪みが生じるか分からないからだ。

だからもし、万が一にも、
私がリクオを…家族を…奴良組を…
傷つけるような事があれば、
その手で『私』を消して欲しい…。




『(ーお願いね? 夜の私…)』



ー・・・分かった。ー




(「(! …姉…貴…、だよな…?)」)
(「(……今、違う奴の気配が…気のせいか?)」)




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