▽ 本家到着!!
ドゴオオオン
「ワキャッ!?」
「なんじゃー敵襲かぁー!?」
勢いよく急に開く本家の門に、驚く妖怪の声々。
あぁ、ようやく帰ってきたんだ…!
「ありゃ…リクオ様!?」
「む!? 鯉菜様もいるぞ!?」
「お二人が…帰ってきたあー!!」
帰ってきたと騒ぐ奴良組の妖怪に負けじと、こちらもワイワイと騒ぐ。
「へー、ここが奴良組かい」
「やっと着いたかよ」
「走るから汗かいてとける〜」
「とにかく奴良組到着だぜ!!」
マナーがなってないぞ、お前ら!
私やリクオよりも先に家に入りやがって!!
『…ま、清継とかゆらに比べたら可愛いもんか。』
「何の話だ」
何でもないですよ、リクオちゃん。
「おい奴良姉弟、てめーらが遅れ気味だから夜になっちまっただろ」
「しょうがないじゃない。昼になったら人間になるんだから。イタクもイタチになるでしょ?」
「お互い可愛いよねーケホケホ」
『またイタチになったら抱っこしてあげるね! イタク☆』
「頼むからやめてくれ。」
そんな会話をしていれば、後ろから大きな声で話し掛けてくる者が一人…
「リクオ様! 鯉菜様!! おかえりなさいませ!!
この者達は!? 奴良組以外の妖怪は原則本家に入れませんよ!!」
淡島に武器を構えてそう大声を出すのは…黒田坊。
「おい、坊さん。説教なら間に合ってるぜ。」
そう返す淡島に、黒田坊は目を鋭くして睨みつける。
「それともあれか?
茶碗出せば少しくらい恵んでやっても…」
「貴様!!
この奴良組特攻隊長を愚弄する気かー!?」
「ああ!? お前なんか知るか、俺はあまのじゃくの淡島! 女だと思ったら痛い目見んぞ!!」
「何!? …あ、本当だ。すまん、女か…」
胸倉を掴む黒の言葉に、淡島が「はなせスケベ」と容赦なく黒を殴り飛ばす。
確かに…明らかに今胸をみて「本当だ」って言ったもんね。
「ふん、これが関東の総元締か。
普段はどこで修行してんだ?」
一方、こちらは桜の木に登って奴良組本家を見渡すイタク、及び……
「あなた、何かくさい……ケホケホ」
「…………ハッキリ言うじゃねーか姉ちゃん。
地獄を味わせてやるーーー!!」
シュールな追いかけっこを始める納豆と紫。
『……? 誰か池に落ち……あぁ。』
ドボーンという音に池を見れば、雨造が池にダイブした所だった。
「ぺっぺっ、何だただの池かよ…む?
……オイラー沼河童の雨造。お前は?」
「ん? オイラ? オイラも河童!
名前は考えたことねーなぁ。」
なんてこった…この二人が一番まともじゃないか。つぅか河童、マイペースだな〜。そこが良いところなんだけどね!
「姉貴、オレぁじじいに挨拶してくるぜ」
『はーい、いってらー!』
リクオがおじいちゃんの所に行くのを見送り、私はある人物をキョロキョロと探す。
……どこにいるんだ?
「誰を探してんだい?」
『……! お父さんっ!!』
背後から声が聞こえ、振り返る。
何ヶ月も何年も会ってなかったわけではないのに、とても懐かしく感じる。
「息災かい? 鯉菜」
『……うんっ、元気だよ!』
「強くなれたか?」
『まだ問題はあるけど、行く前よりは強くなれたと思う。』
「そうかい」
ここら辺だけ静かになったような…奴良組や遠野メンバーの騒ぐ声が遠のいて聴こえる。
「鯉菜…」
出発前のことを思い出し、感情がたかぶる。
確かあの時は少し気まずかったんだ…。
でも今はー
「おかえり」
遠野は楽しかったけど、
ずっとこの優しい声が聴きたかった……
『……っ、ただいま!』
泣きそうになるのを堪え、お父さんに抱きつく。
勢いが良過ぎた為に、「ぐえっ」という声が上から一瞬聴こえるが…そんなもの無視だ。
今はこの温もりと、
ポンポンと一定間隔で背中を優しくたたく心地良いリズムを…感じていたい。
(「・・・んなっ!お嬢が2代目に抱きついてるぞー!?」)
(「そんなバカな・・・明日は雨だ!」)
(「雨で済むか!?嵐が来るのでは・・・っ」)
(『「・・・・・・・・・・・・。」』)
(「・・・一応聞くが、お前鯉菜だよな?」)
(『・・・くらえ、サバ折りっ!!』)
(「ぐあっ!!? ・・・確かに、鯉菜・・・だ、な」)
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