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降谷さんとわんこ

ガチャン、と鍵を開ける音がする。帰ってきた!お出迎えするために玄関に走って、後ろ手に扉を閉めてる彼に飛びついた。

「おっと!ただいま名前…いい子にしてたか?」
「わんっ!」

飛びついた私をぎゅっと抱きしめてくれる零さんはとっても優しいご主人様。ふふっ顔を寄せて私の毛に顔を埋めるからくすぐったいけれど、このままずっとくっついて私のにおいが零さんに移ってしまえば良いんだ!顔を埋めてすぅっと息を吸って幸せそうにしていた零さんが顔を上げたのでぺろっとほっぺを舐めた。

「さぁ、待たせたね名前。夜ご飯にしようか」
「わんっ!」

零さんと食べるご飯は世界一美味しいんだ!

ーーーーーー

ご飯を食べて満腹になった私は最近零さんが買い替えたふっかふかのソファを陣取り、眠気とたたかっていた。しばらくするとお零さんがお風呂から戻ってきたみたいで背中を優しく撫でてくれる。ふふっ気持ちいいなぁ。

「名前、このソファ気に入ったみたいだね」
「…ワン」

零さんは私がどこを撫でられるのが好きなのか全部分かってるから、撫でられるたびにとろけてしまいそうに幸せだ。うー、このまま寝てしまおう。

「おや、もう眠たくなっちゃったかな?…よいしょっ」
「ワンッワン!」

もう少しで夢のなかに旅立つってところで抱き起こされた!気持ちよく寝れそうだったのに零さんのいじわる!

「ふふっごめんごめん、眠いのは分かってるけど一緒にいたいんだ。たくさん撫でてあげるから俺の膝にいておくれ」
「くぅん」

お膝に乗せてもらってからも沢山撫でてくれる。仕方ないからいてあげるんだ。だからもっともっと撫でてね。

「名前にはいつも寂しい思いをさせたな。…ひとつ大きな仕事が落ち着いたんだ。しばらくはいつもより少し早く帰ってこれるぞ。…嬉しいか?」
「ワンッ!」
「そうか、俺も嬉しい」

家に帰ってきて表情が抜け落ち抜け殻のように無表情の時期があったりもした。朝早くに出かけて夜遅くに帰ってくるから一緒にいられる時間は少なかったんだけど、帰ってきてくれた時は全力で甘えにいったんだ。

泣きそうに見える日も、疲れた様子で倒れてしまうんじゃないかと思う日もあったけど帰ってきた時にはいつもそばにいたんだ。
少しずつゆっくりだけどいつもの調子を取り戻していき、今ではこうやって幸せそうに笑うようになった。

私は零さんが大好きだからずっと、ずーっと側にいるんだ!

「もし、名前が人間になったらどんな姿をしてるんだろうね」
「くぅん」
「ふふっこの毛の色は僕とお揃いだからきっと髪の色はクリーム色だね」
「わん!」

人間かぁ…人間になったら私はどんな姿になるんだろう。出してくれる美味しいご飯を私は残したことがないからもしぽっちゃりしてたら零さんは驚くかなぁ。

その後も撫でられ続け忘れてた眠気が戻ってきたので零さんの暖かい体温を感じながら眠りについた。

ーーーーーー

翌朝ゆるゆると意識が浮上して目を開けると、目の前にはぱっちりと目を開けて固まる零さんがいた。えっ、零さん起きてるよね?まさかこのまま目を開けて寝てるわけじゃないよね?とりあえず、おはようの挨拶がわりにぺろりと零さんのほっぺたを舐めた。

「名前…?」
「う?」

……あれ、なんだろういつもと声が違う。視界が違う?なんだか手足の触感も違う気がする??…というかあれ??…私、人間になって…る?えええええっ?

ーーーーーー

やってしまった…目が覚めて一番に思ったことは、ソファで寝落ちってしまったことへの後悔だった。この歳になると布団でしっかり眠らないとどこか疲れが残ってしまうと分かってるのに、名前が気持ちよさそうに寝てる姿につられたな…いや、これは言い訳か。

首も少し痛いなと思いつつ起き上がるため、膝から移動したんだろうお腹の上に感じていた愛犬に目を向けた。…いや向けようとしたら、クリーム色をしたふわふわの髪の毛が目に映った。…え。

…なんだ誰だ。俺は何をやらかした?いややらかしてなどいないだろ俺!!昨日は仕事が終わりまっすぐ帰ってきたし名前と沢山触れ合った。はっ!そうだ名前は!?周りを見渡すが姿が見えない。そして目の前の子に視線を戻した。起き上がってこの子を起こして話し合うのがベストなんだろうが、なんでかその気にならない。いつもの俺なら無理矢理にでも引き剥がして理由を聞いたら追い出すぐらいはしそうなものの…なぜだろうか。
…顔はよく見えないが髪の色は名前の毛色と一緒なんだよなぁ…そんな共通点程度で声をかけれず起こすこともできないなんて俺はとんでもなく名前に甘いことが分かるな。…さて起こしたらまずなんだ。どうすればいい。…どうか穏便に済ませたいが。

思考を飛ばしていたところ、ふっと顔を上げて俺を見上げる姿にかたまった。

少しタレ目のきょとんとした顔でこちらを見つめている。…名前が人間にでもなったらこんな姿になるんじないかと思うくらい何故か表情が重なった。女の子はふわりと笑いそのまま俺の顔に近付きぺろりと頬を舐めた。嘘だろこの頬舐める癖は…まさか本当に

「名前…?」
「う?」

不思議そうにこちらを見つめる女の子が正真正銘名前だということが分かり、2人の幸せに溢れる生活が幕を開けた。

ーーーーーー
オマケ
「お久しぶりです安室さん!」
「おや、蘭さんお久しぶりですね」
「はい!…あれ?安室さん、お隣にいらっしゃるのはひょっとして…彼女さんですか?」
「あぁこの子は…僕の家族です」
「えっ!家族って妹さんですか?…いやでも妹さんと手は繋がないですよね…もしかして!奥さんってことですか!?」
「え?…ふふふっ」
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