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常連になりました

「名前さん名前さん」
『はい、なんですか?』
「美容室行かれたんですね。髪がツヤツヤで天使の輪が見えます。いつも素敵ですが、今日は一段と輝いて見えます』
『ふふっどうもありがとうございます』


「あっ名前さん」
『はい?』
「ネイルに行かれたんですね。前にいらっしゃった時は夏らしく青色で、僕の瞳と同じ色だったのがとても嬉しかったんですが、今回は落ち着いたクリーム色で僕の髪色とお揃いですね」
『そう…ですね』


「名前さん」
『どうされました?』
「リップの色変えましたね。あなたの素敵な唇に、薄ピンク色がとても似合ってます。つい、キスしたくなるような可愛らしい唇だ」

にこにこと笑う安室さんは、ポアロに来るたびに必ず私の変化に気づいてくれる。すごいなこの人、これを来る人来る人に言ってるのであればそりゃあファンも増えるだろう。そこらのおじさんがいうと最近流行りのハラスメントのどれかに該当するのではないかとも思う。可哀想だがイケメンだとなんでかすんなり受け入れられるよね。うん、女性の性だ。

前々からお昼時にはお客さんが多かったのだがここ最近は女性客でより溢れかえっている、と、珍しく彼がいなかった時に、あずが言っていた。

今日もお昼時が過ぎて落ち着いた15時過ぎごろに、甘いものと美味しい珈琲を求めてポアロにきた。

「いらっしゃいませ。あっ名前さん!今日もいらしてくれたんですね。嬉しいです」

カウンターにどうぞ、と誘導される。そういえば彼が誘導してくれる時には必ずカウンターだ。かっこいい彼を間近で見れる特等席だろうからお昼時は争奪戦になりそうな場所だ。

と考えているうちに、どうぞ、といつもの珈琲とアップルパイが出てきたので一口シャクシャクと食べて珈琲を飲む。

新聞を広げているおじ様や、膝掛けをして読書をしているおばあちゃんがテーブル席にポツリポツリと座っているのを見て、何とは無しに聞いてみた。

『安室さん。いつもテーブル席ではなくカウンターに案内してくださるのは、注文が取りやすいからとかだったりします?』

「… え?」

あっ、珍しい表情だ。安室さんは目を丸くしていた。この反応は違うみたいだ。安室さんはゆるゆるとした笑みに変わり、カウンターに手をついてこちらを見ている。

「それは違いますよ。…理由、聞きたいですか?」
『はい、是非。なんとなく気になっちゃって』

「もしかしたら気づいてるかもしれないと思ってましたが…あなたはこういう方面に疎いらしい」

身を乗り出してきた安室さんと顔が近づく。その距離感に戸惑っていると、彼は私の頬に手を添えて、優しく、甘い笑みを浮かべ囁いた。

「好きです。名前さん。…眺めるだけでは物足りない。少しでも長くあなたの側にいたい」

その言葉と行動に顔が真っ赤になるのは許してほしい。1人あわあわしていると、カランカランとお店の扉が開く音がして、彼は名残惜しそうに離れていった。
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