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これが運命

お昼前ということもありお客さんは少なく、落ち着いた雰囲気の中にやってきた女性。入って視線を彷徨わせたかと思えばカウンターの内側にいる梓の元へやってきた。

『あず、忘れ物だよ』

声をかけられた梓は一瞬固まったがすぐに女性の手元にある本をみてはっとする。

「あっ!忘れてた!ありがとうお姉ちゃん。朝持って行くつもりでテーブルに置いてたのに…」
『ふふ、だろうね。だからバックに入れときなっていったのに』
「ごめんごめん!ほんとにありがとう。お礼に一杯飲んで行って!」
『…ありがとう。じゃあ頂こうかな』

コーヒーでいいよね、という問いかけに、女性は軽く返事をして少し周りを見回した。一瞬目があった安室に軽く微笑み、お辞儀をして、そのままカウンター前のイスに座り手元にあるメニュー表をみていた。


ーーー

お店に女性が入ってきてからしばらく動けなかった。瞬きさえしていなかったかもしれない。今までにない感覚だった。彼女に見惚れて目が離せないなんて。一瞬の微笑みにこちらもなんとかお辞儀を返せたものの…そうか、これが…

梓の元へ近づき話しかける。

「…彼女は?」

「えっと、私の姉です!このあと友達に本を返すつもりだったのに家に忘れちゃってて、届けに来てくれたんです」

コーヒーを入れている梓にそっと問いかけるとちょっと恥ずかしそうに、でも自慢の姉なのだというのが雰囲気から伝わってくる。

「綺麗な方ですね」
「うふふ、はい。自慢の姉なんです」

「僕、一目惚れしちゃいました」

『…へ?』

目線を姉へ戻した安室が、目を細めてとろけるような笑みを浮かべていることに梓は驚いた。彼を目的で訪ねて来るお客は少なくない。その彼女たちに安室はいつも笑顔で対応しているが今まで見たどの笑顔とも違う。

こんなに甘い笑みは見たことがない。

このコーヒー持って行きますね。と梓が淹れたコーヒーとショーケースから出したマフィンを合わせて安室はあっという間に姉の元へ。

笑顔で自己紹介を始める彼と、一瞬きょとんとした表情を浮かべた後すぐに優しい笑顔で対応する姉。2人を交互に見て、なになに?どういう事?とびっくりしたが、なんだか2人の姿はとてもお似合いだと思った。

もしかするともしかするかもしれない!
にやにやしそうな口元に両手をあててその場から2人を見守った。




ーーーーーー
梓ちゃんのお姉ちゃん。プロローグかな。
この機を境にいたるところで2人は遭遇するのです。ひたすら安室さんが姉に甘い甘いストーリーになる気がする。
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