おもいだした
※一瞬グロ表現あり
※苦手な方はご遠慮下さい
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さきほど思い出したことに、ちょっと思うところがあったので橋の下へ降りて、水辺にきてみた。静かな所で特に人影もなかったので試しにと巳から始まる印を結ぶ。
『…火遁 豪火球の術っ!』
術を唱えて、深く吸い込んだ息をんぐぐと一気に吐き出した。すると口から正面に伸びる炎。
『で、でたぁ…』
チャクラを練ることができると分かってしまった。まじか。
思い出したのは私がまだこの世界に生まれる前の前世の記憶。「俺はお前を…愛していた」と泣きそうな声で言うイタチに、私もあんたのこと好きだったよ、と告げると彼は一瞬目を閉じた。悲しみを含む震えた声で、すまない、と一言。その言葉を聞いた瞬間にはもう私の左胸からは血が吹き出していた。
わかっていた。…きっと一族は終わりを告げるだろうということは。でもイタチが全てを背負わねばならないというのは、昔から優しい心を持った彼にはとても残酷なことだ。
この世界に生を受けて今まで生きてきて、なんだか周りよりも運動神経が良いだとか瞬発力や記憶力は抜群だと言われてきた。というのも今では頷ける。そりゃ元忍者だったんだ。そのへんよくて当たり前か、と思い出した記憶にぼーっと浸っていた。
「わぁあ!お姉さんすごーいっ!」
「口から火が出たぞ!熱くねぇのかなぁ」
「きっと大道芸人さんですよ!」
橋の上から声が聞こえてきたのでハッとそちらを見ると、小学生くらいの可愛らしい子供達が目をキラキラさせてこちらを見ていた。私が見た瞬間に興奮したように手を振ってきたので、思わず振り返すと嬉しそうにきゃっきゃと笑っている。
人に見られてかなり焦ったがなんだかこの場は乗り切れそうだ。
「大道芸人の姉さーんっ!ほかにも何か見せてください!」
「歩美もみたーい!」
「口からうな重はでねぇのか?」
なんというか…完全に大道芸人確定なのね。はははと内心笑いながら、…まぁ喜んでくれてるようだし子供たちだし、もう一つくらいならいいかな、と再び印を結び唱える。
『水遁 水鮫弾の術っ』
おおお!!すごーいっ!と聞こえる声を後ろに、水面から飛び出すのは水で出来た鮫だ。本来なら敵に噛み付くように仕掛ける技だが今回はさながらイルカショーのようにただただ水面を飛ぶだけの鮫だ。うん、チャクラも久しぶりだけどちゃんと練れるな。
「へぇ、火の球が飛び出したかと思えば、次は水で出来た鮫とは…すごいですね」
先程の子供たちとは違う、大人の声が聞こえたので驚いて振り返ると、にこにこと笑うクリーム色の髪をした優しげな青年が子供たちの後ろからこちらを覗いていた。
「大道芸人…とは違うような。どうやって水を操っているのかタネも仕掛けも分からないので、マジシャンといったところでしょうか。」
わぁ安室さんだー!と子供たちが反応するその男からは、本当に一瞬だけ鋭い視線を感じたものの、すぐにその目は優しく笑んだ。…なんだか直感だけどこの人に絡むと面倒な気がする。思い出したばかりの元忍者としてのこの勘はほぼ外れないだろう。
はははと笑いさっさと退散しようと、上に続く道を早足で登っていると橋の方から駆け寄ってきた子供たち…と安室と呼ばれる男。
「お姉さんすごいです!マジシャンなんですね!」
「歩美、お姉さんともっと仲良くなりたい!」
「水の鮫って食えんのか?」
いやぁ、どうも、なんて軽く返答を返し、子供たちの頭を撫でてじゃあねと去ろうとすると男が余計な一言を言い放った。
「君たちよければお姉さんと一緒にポアロに来ないかい。僕もお姉さんに興味がわいたから是非お話ししたいな」
『え、いや、私は…』
「わぁーい!歩美お姉さんと友達になりたい!」
「僕もです!」「俺も姉ちゃんとなかよくなりてぇぞ!」
じゃあ今日は僕が奢りますね、なんていう青年の一言でさらに盛り上がる子供達。
押しに弱い私はなんだかんだと喫茶店に連れていかれて子供達とも男ともアドレスを交換させられて後日厄介ごとに巻き込まれるようになる。
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子供達が後日あのマジックは今まで見た中で最高だね!なんて話すのを聞いて闘志を燃やす怪盗キッド。
気になって近づいたは良いものの本気で好きになってしまいアピールの止まらない安室さん、前世はずっとイタチが好きだった夢主もちょっと心が揺らいでいったりなんていう妄想。