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守るったら守る!

「いくぞ苗字」
『はい』

今日はいよいよ勝負が決まる日。

数ヶ月に渡った合同捜査も今回で終わる。末端の組織を捕まえたことにより芋づる式に情報を引きずりだすことができた。

赤井さん率いるFBIの方々も今回の件が終われば日本を出るつもりでいるらしい。気合を入れねばと両手で顔をパチンと叩いた。よし、頑張るぞ。

「前線には出てくるなよ苗字。ここは俺と赤井で突入する」
『心配性すぎますよ降谷さん。私だってちゃんと会議の内容聞いてましたから。
お2人のあとに続いて風見さん含め諸先輩方が突入すると。…不測の自体がない限り外で伝達係に徹しますよ。』

「それでも心配なんだ。じゃじゃ馬が飛び出してこないか。」
『ちょっと!…白乃と間違えてません?』

「ふっそうかもな。ただ白乃の動きは予測が付くが、苗字は予測不能だからこうでも言っておかないと。ーー頼んだぞ。」
『…なんか腑に落ちませんけど、承知いたしました』


今回に関しては読んでた頃の情報は少ない。内容が思い出い出せないというわけではなく、この期間について原作では触れられていないから。

主人公である白乃が事故で病院に運ばれ、彼女が目覚める頃にはこの組織の件は全て終わっていたんだーー降谷さんの右手と差し替えに。

「じゃあ俺は一旦離れる。指示出し頼んだぞ。」
「はい。ーーご武運を。」
「…あぁ」

背を向け去っていく降谷さんを見送る。


…思い出すのは最終回。

目を覚ましてしばらく、記憶を取り戻した白乃に「…日本のために尽くした結果だ。組織を壊滅させることが出来たんだから本望だよ。ーーそれに、お前が無事でよかった」と目を細めて微笑む降谷さん。その姿に心を奪われた視聴者は多い。

かくいう私もそこでときめいた一人だったけれど…

原作はそこで終わりだとしてこれからは?この先の現実を生きて行く彼が利き手を失うことは組織壊滅の代償にしては大きすぎる。

その間に何があったのか全く分かっていない状況ではあるが、大事な利き手を失うほどの危険があったということだ。まだ若い彼がこれからさらに昇進してくためにも、それを失うことほど大きいものはない。きっと現場には出られなくなるし第一線から退くことになるだろう。

降谷さんは私たち公安にとって、いや、この日本にとってかけがえのない大きな存在。彼を守るのが公安モブの使命じゃないだろうか。

なんて、かなりおこがましいかもしれないけれど、出来ることなら…降谷さんを守りたい。


ーーー

「こちら苗字。予定通り奴らの姿を確認できました。…全員中に入ったようです」

"了解。降谷くん、こちらは準備出来ている。合図を頼む。"
"こちら降谷。了解しました。ーー突入します。"

バァンッと扉や窓を割る音が聞こえる。組織の連中がここに集まることは、先日捕まえた末端の奴らに吐き出させたので事前に中の配置図は入手している。

あとは大きな被害なく無事に全員検挙できることを祈ることしかできない。

ふと視界の隅に何がが映ったので、目を向けるとコンテナの影で倉庫を見つめて妖しく嗤う男が目に入った。あの男は何をしている…?

そしてはっとした。奴は…組織の幹部ではなかっただろうか。

ここからすこし離れていて定かではないが手に持っているのは何かのスイッチにも見える。ひょっとして、爆弾か…!

あまり憶測で動くのはよくないと頭ではわかっているが第六感が告げているのだ。あいつは倉庫にいる仲間ごと爆発する気であると。

『ーーこちら、苗字。外に幹部No2の男を確認。スイッチらしきなにかを所持してる模様。…爆弾の、可能性があります。確保完了エリアから早急に退避をお願いします』

"E班了解"
"C班了解です"
"BとD班合流した。両チーム共に抜ける。名前、無茶はするなよ"

"…っくそ!いないと思えば外か!A班も了解だ。終わり次第すぐ向かう!…名前、気を抜くなよ"

『はい』

幸い奴は私の存在に気づいていない。これはチャンスだ。確実に奴を落とすには背後に回るしかない。

音を立てずにその場から離れようとした瞬間、目に止まったのはここに居るはずのない、課内で待機を命じていた白乃。

ターゲットである奴の1つ前のコンテナ側にいる姿が見えた。っあんの馬鹿!!なんでここにっ!!

緊張した面持ちで奴を睨んでいることから、ここで何が行われているか知らずに来たわけではなさそうだ。

私だって企画課のみんなの役に立ちたい、と、そういった所か。……確かに降谷さんが言う通り白乃の動きは予測がつきやすいかもしれない。

気持ちは焦るがこの焦りはミスに繋がってしまう可能性がある。…慎重に、落ち着いていけ、私。

脳内でどう動くことが最善か考えながら、後ろに下がり奴の視界から消えた瞬間、音を立てずにコンテナ近くに向かった。



ーーーーーー
守るったら守る!

(私だって、みんなの役に立ちたいっ…!)
(…ちっ…誰かいるな)
(頼むから何もするなよ、白乃…)
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