この話と同じ夢主



「へ、平和島静雄!?」

帝人の声が響く。隣には正臣と杏里。目の前には平和島静雄。そのそばには折原臨也。そして、平和島静雄を囲むゴロツキたち。
帝人の声に「こいつが平和島静雄!?」「まじかよ…!」とびびっているのが見て分かる。だがそのうちの一人が血迷ったのか走り出し木刀を静雄の頭に振るった。

「ひゅー!やるねぇ。シズちゃんに殴りかかるなんて」
「いってぇ…おい、頭狙うとか打ち所悪かったら死ンでたぞ。ってことは殺そうとしたってことだよなぁ?ああ?」
「ひっ、」

殴った男も目が覚めたのか静雄の怒気にガクガクと足が震えている。だが帝人たちも他のゴロツキたちも見てるだけしか出来ない。どうにかできそうな臨也も「シズちゃん殴るとかやるー!」と楽しそうにしてるだけだ。
見てることに気付いたのか目が合う。するとにこりと臨也は笑みを向けた。なにか呟いたみたいだが小さくて聞こえなかった。

「大丈夫、呼んであげたから。君たちのために」

キレた静雄は男を持ち上げ投げた。このままじゃみんなやられる、とゴロツキたちは焦るが同様に足がすくんで動けない。段々と静雄が歩いてくるのを待つしかない。
臨也の呟きは誰も聞くことなく流れたが臨也は構わなかった。寧ろ知らないままの方が驚くだろ?

そして、現れたのは臨也と同世代くらいの女の人だった。臨也と、帝人たち、静雄たちを見てどういう集まり?と臨也に尋ねた。

「…あ、名字さん?」
「ああそうか。紀田くんとは知り合いか」
「……顔見知り程度ですけど」
「彼女は始末屋の名前ちゃんだよー」
「…どうも。えーっと、なに。同窓会しようってんなら私帰るよ」
「まさかぁ、それならシズちゃんなんか呼ばずに俺と君だけでやるよ」
「それこそ直帰だわ。んで、静雄また絡まれたの?あ、男ぶん投げた」
「そうそう、依頼はこの子達が怖がってるからシズちゃんの暴走止めてあげて」

そう言えば名前は幽霊を見たような顔をする。え、臨也にそんな人を思いやる心が!?と驚愕した。肩に手をまわす臨也とジト目でそれを払い話す名前の掛け合いにぽかーんとする帝人たち。平和島静雄ではなく名前たちに気を取られてるんだからある意味依頼終了してると言える。
正臣が驚いてるのは掛け合いではなく臨也にだった。今まで臨也さんのあんな姿を見たことない。「…事態を収集させるってこと?」
「よろしく」
「……ふーん」

じっと臨也を疑わし気な目で見るが了承すると静雄目掛けて走り出した。それを見て満足そうに臨也はさっきと同じ笑みを浮かべる。

「大丈夫、すぐ終わるよ」
「あの、始末屋…って?」
「本当は壊れたガードレールとかポストとかの始末かわ仕事なんだけどね。この場合だとゴロツキもシズちゃんも殴られる」
「えっ」
「喧嘩両成敗ってやつ。シズちゃんも名前とは昔からの付き合いだから名前に殴られても反撃しないし頭も冷えるだろうからね」
「…俺たちのためとかいってただ平和島静雄の殴られる姿が見たいだけなんじゃないですか?」
「さあ?」

正臣の声をかわす。正解だけど。名前も臨也の本心に気付いてるだろう。長年の付き合いとはそういうものだ。寧ろ彼女は問題を起こす臨也と静雄がいたせいで始末屋なんてやりだしたんだけど。

「うぉら!」

男に向かって殴りかかる静雄にギリギリ追いつく名前。そのまま声をかけて殴るかなーと見ていた臨也だったが予想外に名前はそのまま男と静雄の間に入った。
そこで初めて、静雄は名前に気付いた。なんでここに、と目を見開く。だが既に始めてしまった殴るモーションは止められず静雄の拳は名前に直撃する。

「名前!!」

臨也の焦りを含んだ声が響く。起きた光景に周りは呆然としていた。故意じゃないが女の人が思いっきり殴られるところなんて見たことはない。静雄も、拳を解くこともせず数メートル飛んだ名前をじっと見るだけ。
思いの外名前はすぐに起き上がった。ゆっくりとだが立ち上がる。普通なら気絶してたことだろう。静雄には叶わないが名前の戦闘力も並ではない。

「……っく、」
「…名前…」

口の周りを血で濡らし、ぺっ、と吐き出す。乱暴に腕で拭うと静雄に向き直った。

「……ごめんね。静雄を傷つけたかった訳じゃないんだけど…」
「なに言ってんだよ。傷つけたのは俺の」
「ばーか。今すごい情けない顔してるよ?…頭冷めた?」
「あ、ああ…。わりぃ」
「んーん。…あんたたちも静雄にちょっかいかけんじゃないわよ。静雄は平和に生きたいの。もしまたやったら私が殴るから」
「も、もうしません!!!」

一斉に逃げて行くゴロツキたち。とりあえず依頼成功か、と安堵すると足の力が抜けがくっとバランスを崩す。傍へ駆け寄った臨也が名前の肩を持ち支える。今の状況では目の前に臨也がいても静雄も手を出さなかった。
名前も臨也だと確認すると思いっきり体重をかける。

「名前!」
「…あんたもこれに腹立てて静雄に嫌がらせするんじゃないわよ」
「…こういうとき喧嘩両成敗じゃなかったの?」
「警察じゃないから毎回決まった罰じゃなくて私の思ったようにやるの。あの集団既にびびってたし静雄もあいつら殴るよりは反省したし。…んで、けしかけたあんたにも反省してもらおうかと」

ゴロツキたちより旧友の名前を一発殴る方が被害も少なく静雄も頭を冷やす。だが、元々優しい性格な静雄だからこれからしばらくはこれをトラウマにしかねない。恐らく街でばったり会っても会わす顔がない、と逃げるだろう。流石に可哀想だからすぐに謝った。
静雄のことを考えればこの後処理は嫌だったがストーカーにならない程度に自分から静雄に会いに行けば段々それも回復するだろうと思ったのも一つ。
あとは、懐かれているもう一人。自分が怪我すれば臨也にダメージを与えられるのは知っていた。なにかとちょっかいを出されるくらいには。だからこそ私が殴られて終わる、という事態収集を選んだのが大きい。
それらを名前は、少しの間に考え行動に移した。

「………ほんっと、面白いよね。名前は。予想付かないし屁理屈ばっかだし。そういうところ大嫌い」
「嫌いで結構。依頼料振り込んどいてね」
「高校生三人をびびらせちゃったからダメー。名前の依頼は失敗だよ」
「え、」
「そりゃあ、助っ人として呼んだのにそいつが殴られたら唖然とするよね」
「……ひしゃげた標識とか自動販売機を処理して新しいの用意するより私の治療だけで済むなら!」
「一番嫌なリスクだよ」

さ、病院行こうね。と臨也は名前を抱き上げいつ呼んだのかバイクでやってきたセルティの後ろに彼女を乗せ自分共々姿を消した。

「……」
「……」
「……」
「……臨也さんのキャラ変わってね?誰あれ!別人!?ていうかナチュラルに登場したけど今の首なしライダー!?」

正臣が喋るまでしばらく、誰も口を開かなかったという。
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