「やあ名前ちゃん。ちょっとお願いが」
「お引き取り下さい」

話を全部聞かずにインターホンと繋がっている受話器を元に戻す。すると数秒のうちにまたピンポーン、とインターホンが鳴った。

「…はい」
「名前ちゃーん?頼みがあるんだけどー!」
「私にはない」
「俺があるの。とりあえず開けてよ。ピンポンピンポン鳴り続けるの迷惑でしょ?ご近所さん達も怪しむだろうし」
「……」
「なんならここ一週間の君の下着の種類でも発表しようか」
「すんな馬鹿やろう!」

馬鹿やろうの発言に負けた私は玄関の扉を開けた。するとピンポンピンポン鳴らし続けていた馬鹿やろうが「……冗談だよ」なんて笑顔で返してきた。こいつの場合冗談と言っても本当に知っているんじゃないかとヒヤヒヤする。ありえる気がするのが悲しい。
訪ねてきたのは裏の人間には有名な情報屋、折原臨也。
飄々と私の家に上がりソファーに座りくつろぎ始める。美形の部類で彼の信者がいるらしい。ちなみに私はこの男が嫌いだ。

「君に頼みごとがあるんだよ」
「それが人にモノを頼む態度か」
「そうだね。『人』に頼む態度はきちんとしないといけない。でも俺は名前ちゃんのこと少し『人』として捉えてないとこがあるんだよねぇ。もちろん『人間』だって思ってるよ。けど君は考え方が大多数と違っているから」
「相変わらずウザい」
「そういうところは大多数と同じだね」

私のげんなりした顔を見て楽しそうに笑う。折原臨也は私を大多数と違う――「変わっている」と言い私に干渉してくる。別に私は変わってるつもりも大多数と同じのつもりもない。自分の考えた通りに行動してるだけだ。それを変わっていることにはならないと思う。なのにこいつは変わってるなんて言う。だから私はこいつが嫌いだ。

「で、本題。池袋でちょっと一方的な乱闘があってさ。標識とかひしゃげてるから処理してほしいんだ」
「あんたまた行ったの?」
「大事な用事があってね」
「…頼みごとって、仕事の依頼ってこと?」
「うん。見合った金額を払えば処理してくれる『始末屋』の君に頼みたいんだ」

大変ムカつくことに折原臨也と長い付き合いなせいでそういう人間になってしまった。喧嘩の処理なら両成敗。殺しはしないから敵が増える。いわゆる私も裏の人間なのだ。場合によっちゃ凄く儲かるから良いんだけど。

そう、仕事。仕事なら仕方ない。こいつの頼みも聞く。

「報酬は振り込んでおいてね」

もう家に来るなという意味を込めて。伝わってるはずなのに折原臨也は笑って「手渡しでまた来るよ」と言った。やっぱり嫌いだ。

俺の行動を知っても離れていったり咎めたりもせずただ後始末をしてくれる名前ちゃん。いつからこんな関係だったかか忘れちゃったけど俺から離れて欲しくないなぁ。そう思っていた頃君が始末屋なんて始めるから心配でこっちの方が名前から離れられなくなっちゃった。
まあそれでも悪くないな―、なんて。
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