入試当日

「戸締りは…大丈夫だな」

もう一度窓を閉めたか、火は消したか、スイッチを切ったか確認する。
一つ深呼吸して、家を出た。

「………」

鍵を閉め、歩き出す。しばらく歩くと、目の前に見知った姿が。

「…焦凍…?」
「…今日だろ、入試」
「あ、ああ…」
「…手ぇ出せ」
「…?」

恐る恐る手を出すと、温められたカイロと小さなウサギのキーホルダー。ウサギの腹には、「合格祈願」と書いてある。

「あ…ありがとう! 焦凍は意外とまめなんだな…」
「…俺の時に貰ったからな」
「友達同士とはそういうことをするものだろう」
「…まあ気休めにはなるだろ」
「…ありがとう、嬉しいよ」
「!」

カイロを焦凍の頬に当て、顔を綻ばせる牡丹。無自覚にそういうことをやってのける牡丹に焦凍は面食らった。

「じゃあ、行ってくるよ」
「…ああ」

「体を温める!」と走っていく牡丹。銀髪を跳ねさせて走る後ろ姿を見ながら、焦凍は細く息を吐いた。

―――

入試会場。それぞれの場所へと分かれた受験生たちは仮想敵を倒しポイントを稼ぐべく息巻いていた。

「(0p敵は…まだ出てすらいないのか)」

道路と瓦礫の山を走り抜け、仮想敵を氷塊で潰しポイントを稼ぐ牡丹。敵自体はそんなに強くないので倒すのは簡単だ。

試験も後数分というところで、大きな音ともに巨大な機械が現れた。

「あれが0p敵か…」

真っ向から挑もうという受験生はいない。当然だ、ポイントにもならないこんな敵は相手にしない方が得策。

…だが。

「うぅ…」
「!!」

0p敵が現れた時に、転んで逃げ遅れた女子が一人。更には、今にも敵に腕を振り下ろされようとしている。

「(氷…だけではダメだ…!)」

走り出した牡丹は、咄嗟に女子を抱きしめ、背後に氷の壁を築いた。

ガリィ!! という音ともに氷の壁は粉砕された。その破片はそのまま牡丹の背中へぶち当たる。

「くっ…早く逃げるんだ」
「えっ、あの…」
「私は大丈夫だから」

有無を言わさず女子を走らせ、自らはすぐに立ち上がり氷の足場でビルの屋上へ。

「0pにしては割りが合わないな…これを倒すのは」

牡丹は楽しそうに呟いた。

両腕を上に突き上げ、作るのは巨大な氷の杭。敵がビルを破壊するすんでのところで、その氷の杭を振り下ろした。

轟音とともに敵は氷に貫かれ、地に伏せる。

「何だ、意外にあっけない」

パチンと指を鳴らし、氷を蒸発させる―――と同時に、終了の放送が鳴り響いた。


20150117















―――
アトガキ

強い女の子大好きなんです。
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