※牡丹視点、語り口調です
「おーいシャワーの時間だぞ」
除き窓から看守さんが私たち二人の様子を確認しにきました。
「しゃわー…」
キレネンコさんが教えてくれたおかげで、大体発音の仕方がわかるようになりました。言葉にできずもどかしい思いをすることはまだまだありますが、少しでも話せるようになるのは嬉しいです。
そして、看守さんが言ったシャワーという単語に私は一抹の不安を感じました。
…シャワーってどこにあるんだろう。
「ああ、心配すんな。牡丹は別室だ」
私の不安を感じてか、看守さんはそう言ってくれました。私の後ろに寝転んでいるキレネンコさんは、私の頭を撫でながら先に入ってこい、と言ってくれました。
がしゃん、がしゃん、とドアがスライドして、簡易シャワー室になりました。…ちょっと汚いけれど我慢します。
ドアを閉めて、服を脱いで蛇口をひねると、久しぶりの温かいお湯が出てきて、少しホッとしました。このところずっとゆっくりする暇なんてなく、キレネンコさんが撫でてくれるときなんか気になって仕方ありませんでした。
「ふー…」
体を泡で擦れば、汚れが落ちる落ちる…。こんな体でキレネンコさんと一緒にいたかと思うとぞっとします。
キレネンコさんは、街中ですれ違えば思わず振り返ってしまうくらい綺麗な顔立ちをしていて、間近で見ると少し気が引けてしまうくらいです。外見だけでなく、突然現れて相部屋になった私にとても親切にしてくれます。発音や言葉も教えてくれるキレネンコさんは、外見も中身も兼ね備えた本当にすごい人だと思います。
看守さんとよく喧嘩していますが、看守さんがぼこぼこにされているところしか見たことがありません。キレネンコさんはとても強いです。そんなにがっしりした方ではなく、あんな細身の体でどこから力が出てくるのか分かりませんが、壁なんかをパンチ一発で簡単に瓦礫にしてしまいます。もう少しちゃんと話せるようになったら力の出し方を聞いてみたいです。
あとキレネンコさんはスニーカーという靴が大好きだそうです。スニーカーを大事そうに磨いている姿はよく見かけます。いつも読んでいるのは靴の雑誌です。
「……」
キレネンコさん語りをしている間に全身洗い終わり、さっぱりしました。
…そこに、視界の端に黒く光る、大きな動くものが。
―ご、ご、
「いーーーやあーーーーっ!!」
ゴキブリぃーーっ!!!
20140527
――――
アトガキ
すみません、テストやらなんやらで思ったより時間かかりました。
8割方牡丹のキレネンコ語りですね
もう少し続きます
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