「いーーーやぁーーーっ!!!」
勢いよく牡丹が飛び込んできた。
…一糸纏わぬ状態で。
「きれねんこー!!」
牡丹の背後には、スリッパ大の大きさのゴキブリが飛んできていた。
牡丹を受け止めて、ゴキブリを手で掴んで握り潰しそうになったが、そこは思い留まる。
「……」
「いやっ、きゃあ!」
手の中で暴れるゴキブリを見ていると、牡丹が腕の中から逃げてしまった。
必死に手で体を隠し、涙を浮かべる牡丹は官能的で色々とそそられるものがあるが、とりあえず今はゴキブリをなんとかする。
いらない本に、ゴキブリを中身が出ない絶妙な力加減で挟み込み、格子から外へ投げた。
適当に手を洗い、濡れたまま出てきてしまった牡丹にバスタオルを広げて渡す。
「あ、う…」
「…気にするな」
落ち着いた牡丹はベッドを濡らしてしまったことを気にしているようで、居心地悪そうにバスタオルでベッドを拭こうとしたのを止める。毛布代わりの薄い布切れで牡丹をくるみ、バスタオルを取り上げて髪の毛を拭いた。
「うー…」
裸を見られたからか、牡丹はなかなか顔を上げようとはしない。
「……」
「…きれねんこ…?」
風呂上がりの独特の匂いに誘われて、何を思ったかその細い首筋に顔をうずめた。
そのまま、白い柔肌に噛みつこうとして、
「No.04!! シャワーすんぞ!」
「あ、かんしゅ…」
「いってぇ!!!」
…邪魔が入った。手近にあった物を適当に投げつけ、うるさく喚く看守を睨めつけながらゆっくりと立ち上がる。牡丹の頭ごとバスタオルでくるみ、シャワーできる程度に服を脱いだ。何か察した牡丹は、バスタオルを被ったままおとなしくしていた。
勢いの良いホースの水が向けられ、洗面器を水の上に置いて座る。
「…ホースの水を止めてみろ、殺してやる」
「なんの事…―――あ!?」
「……」
…やばいやばいやばい。
ぽた、ぽた、とホースから水滴の垂れる音だけが響く。No.04の顔は俯いてしまって見えないが、青筋だけはいやによく見える。
止めたのではなく、止まった…。でもそんなことはNo.04からすると特にどうでもいいことで。
「…くそが」
水が止まったせいでトイレにはまってしまったNo.04は、ゆらりと立ち上がってこっちに向かってくる。
…ああ、死ぬ、俺は死ぬ。
「ま、待て! 話せばわかる!!」
「……」
「まっ…」
視界の端に、バスタオルを少しどけて状況を見ようとした牡丹が見えた。
「…わあ」
No.04のジャーマンスープレックスを食らった俺は、そのまま気を失った。
俺が目を覚まし、他の看守たちの手によってドアが板で固く閉ざされていることに絶望するのは、数時間後の話だ。
20140624
――――
アトガキ
遅くなってしまってすいませんでした…
なんかやること多すぎて全然手が回せない
ホースの水が止まってからは看守視点です、読み辛かったらすいません
「わあ…」は牡丹のセリフです
この後キレネンコがシャワーを浴びれたかはちょっと私にもわからないです
あとコマネチ登場させるの忘れてました
コマネチとの出会いはまた番外編にでもします
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