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曖昧エンドロール

開発室のデスクの、上から2番目の引き出し。唯一鍵のかかるそこに、エンジニアに転向してからもずっと、射手時代に使っていたトリガーを仕舞っている。

「なに、また出水に模擬戦しようって誘われたの?」

寺島の問いにううん、と答えて、解体したパーツを組み立てていく。滅多に使わないトリガーだから、いつもメンテナンスをしてから使うようにしている。

「ああ、じゃあ諏訪?顔が酷いって昨日散々笑われてたし」
「もちろん諏訪ともやる。あいつ絶対許さない」

たしかに昨日の私は酷い顔をしていたが、人の顔を指差して腹を抱えて笑うとは一体どういう了見なのか。しかも酷い顔ならまだしも、顔が酷いって。元からこんな顔だわ。

「諏訪はオマケ?じゃあ本命は?」

最後のネジを締め終えて立ち上がった私を、椅子に座ったままの寺島が見上げる。

「二宮」

どういう心境の変化だと言いたげな寺島に手を振って、トリガーをパーカーのポケットに仕舞った。

二宮が昨日、別れ際に、また私と模擬戦がしたいと言った。二宮からは今まで何度も誘われていたけれど、私が頑なに断り続けていたから、東さんに言われて10本勝負をしたあの日が、二宮と私の最初で最後の模擬戦だった。二宮が満足するのであれば、と酔っていた私は頷いた。二宮が私の謝罪を聞いてもちっとも責める気配がなかったから、罪滅ぼしでもしたかったのかもしれない。

「朔さん、もう10本しませんか」
「やだ。おまえとはもう二度としない」
「…?何故」
「おまえが手加減しないからだよ…!ブランクあるの分かってる!?」

エンジニアに転向したあとも何度か、人数合わせで模擬戦に参加したことはあった。そのあと流れで個人戦をしたこともある。それでもやっぱり三年のブランクは大きかった。相手が射手1位というのもあるだろうけど、一本も取れなかったなんて、悔しくて仕方がない。

「手加減されたのに負けてしまったら、朔さんのプライドが許さないかと思って」
「私が負ける前提で言わないでよ!腹立つな!!」

全くこいつの言う通りだ。お見通しなのが尚のことムカつく。
どす、二宮の肩を思い切りどついたけど、二宮はふらつくどころか微動だにしない。それどころか嬉しそうに表情を緩めて私を見つめてくるのだから、私もつられて笑ってしまった。

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